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2013.01.28

【芝居】「飛龍伝」ゴーチ・ブラザーズ

2013.1.27 16:30 [CoRich]

つかこうへいの「飛龍伝」を中屋敷法仁の演出、玉置玲央・黒木華主演で、千秋楽は150分。27日まで本多劇場。割引の情報を目にしたりしてなめてかかっていたら、本多では珍しい立ち見までめいっぱい。

よく考えたら、飛龍伝をちゃんと観たのは初めてな気がします。これが元々に対してどういう位置づけで描かれているかはわからないけれど、 中屋敷演出につか芝居の手法を感じ続けていた( 1, 2, )アタシにとっては、戯曲の印象もフラットなまま、この組み合わせで観ることができたというのも何かの巡り合わせなのだと思いうれしくなるのです。

現代から、そこにあった物語と導入し、一気に学生運動華やかなりしあの頃(iPhoneだのペットボトルだの細かい辻褄は気にしないのが吉)へ。ポップな音楽もがんがんかけて運ぶ物語、学生運動という時代はアタシにはリアルではないし、そこに身を置いた人々だって指導的なのは実は金持ちの子息で、現場を支えるのは機動隊も学生たちも「ふつうの」というある種の格差、そこに現れた神林美智子というヒロインの圧巻。

「薄っぺらい言葉をミルフィーユのように数多く重ねて厚みをつくる手法が圧巻だけれど、語られる物語の中に切実さは薄い」と感じる中屋敷法仁もまた、アタシにとってみれば、(本当のことは判らないけれど、雰囲気として)カツラギ(彼もまた切実さがあるのだけれど)の側という気がしてなりません。つかこうへいの物語を演出するのを目にして、その想いはかわりません。それほどに、物語そのものが持つ切実さが圧巻の「分厚さ」を持つのです。が、それは実によく解け合い、グルーヴを巻き起こすのです。

歌謡曲が溢れるつか芝居だけれど、マイクを持ち役者が歌うシーンはたった一カ所というのは、このフォーマットへの敬意を払いつつ演出が通した意地、という気がします。平均25歳弱、決して歌えそうな役者ばかりでないということもあるけれど、結果として成功している気がします。

アタシだってリアルに感じない、学生運動と機動隊、あるいは「総括」「安保」という言葉にしても客席を埋める若い観客(それにアタシよりも年上の観客が混じるという程良い混じり具合もまたうれしい)にとっては、リアルでないどころか、言葉すらわからない気がするのです。シェイクスピアを観るあたしたちがそうであるように、観客が物語の時代に生きていなくても、その中でしっかりと溢れ、強い気持ちに突き動かされ、あるいは流されてしまうという男女の濃ゆい物語は観客の気持ちを強く揺らすのだな、と思うのです。

アタシは観てないけれど、飛龍伝の山崎といえば、筧利夫という印象が勝手にあります。今作で演じた玉置玲央は軽くて女好き、バカっぽくて愛らしくてというこの役をきっちりと隅々まで演じきります。今までの神林美智子といえば、広末涼子や内田有紀という感じのようなんですが(未見)、演じた黒木華は小さい身体でしかし男たちを奔放させるという物語の中心にしっかりと居続けます。メガネをかけてすら序盤で「ブス」に見えないのはご愛敬、ドレスがあるでもない、というのは残念だけれど、おかげで彼女のフラットな魅力がめいっぱいとも感じるのです。

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