【芝居】「マボロシ兄妹・ふたりマクベス」俺とあがさと彬と酒と(DULL-COLORED POP番外公演)
2012.12.31 18:00 [CoRich]
DULL-COLORED POPの谷賢一と悪い芝居の山崎彬、女優・岡田あがさの三人で、二人芝居を50分ずつ二本の構成。12月31日までアトリエ春風舎。観バラシ(観て、そのあとバラシ手伝って)公演だったけれど、その次に予定を入れてしまったので、ゴミ一つひろって次へ、なアタシです。
その男のもとに妹と名乗る女優が走ってくる。男は、妹はいるがそんなには美しくはないという。その部屋の向こうには階段があって南京錠がかかっている。男は患者らしい。子供の頃の遊びのように、椅子は馬と成り、あるいはプロレスの相手になる。他人には見えないモノがみえてしまうのだ。馬の幻想はどんどん広がっていく。やっとできた友人は判ったふりをしないので話しやすく、その人に見えているモノは否定しないのだという。訊ねてきた女に、妹を紹介する「マボロシ兄妹」。
マクベス夫妻の寝室。戦に勝ち、どんどん偉くなっていく夫を嬉しくは思うけれど、また長い時間この部屋で一人の夜が続くと思うと切ない。女の元に予言が届く「ふたりマクベス」。
「マボロシ〜」は演劇の可能性が存分に。妹と名乗る女優は、妹になる、から始まって、兄は妹になり、妹は先生になり、という具合に役がどんどん変わってくのも演劇的で楽しいし、動かない椅子が馬になり、という演劇とかお話というのものの原点のさまざま。妄想の中で馬は牧場にいて、そこに済む老夫婦などこ会話がくるくると。あるいは女を口説く男。このあたりに至って、妹が椅子で見立てられていたりして、普通に跳んだりはねたり走ったりは出来ないんじゃないかと、いうことに気づくのです。それは台詞としては殆ど語られません。他には椅子を人間に見立てては居ませんから、これが物語としての特異点なのだと思うのです。その切なさ。濃密で食い入るように見てしまうのです。
「ふたり〜」は寝室という一室だけ、ベッドの上での会話を中心にして作り上げられたエンタメ。下着姿で現れた妻の色っぽさ、ちょっとやり過ぎなぐらいの吐息←アタシは喜んでますが。
マクベス夫人は夫を通して権力を手に入れたいと考える、というのが普通の解釈だと思っていたのだけれど、本作では「一人で寂しい」ことを解決したいがために、さらなる権力を手に入れて、王となれば二人きりで過ごせる夜も増えると考えて、という流れ。500円で読み応えたっぷりの当日パンフで作家はマクベス夫婦の夜の生活、という妄想を展開していて、「この二人の、権力への執着には、ちょっと異常なものがある」ということを、「クソみたいな妄想」で説明して見せるというのも、また芝居を楽しむ一つの形だよなぁと思うのです。
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