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2013.01.28

【芝居】「ウェルズロード12番地」日本劇団協議会

2013.1.27 14:00 [CoRich]

文化庁が行う役者やスタッフの海外研修制度の成果公演。土田英夫の作・演出らしく、大上段に構えなくても、コメディの中に光る「海外での日本人」を描く95分は見応えがあります。2月3日まで青年座劇場。

ロンドンでも観光地からは少し外れて日本人観光客はほとんど訪れない町の日本食レストラン。イギリスと日本の国民感情が悪化し、ほとんど客は付近に住む日本人ばかりになっている。赴任してきていたり、日本よりもここの生活の方がいいという人々や、結婚して引っ越してきたりする人々。ある日、一人の日本人観光客が、パブでイギリス人に絡まれて逃げ込んでくる。

観光客ではなく、そこに暮らす日本人がいつもあつまるというレストラン。情報交換だったり安心の場だったり、というようなきっとどこの外国にもありそうなそんな店。日英感情の悪化とか観光地ではない場所という設定は絶妙で、店に集まる日本人たち、仕事もプライベートも込みでつるんでいるような人々。海外赴任経験はないけれど、長めの出張で連れて行かれたような、彼らにとっての普段使いの店(チョーク書きのメニューの日本酒に真澄(長野)が混じっててうれしかったりする)とか。

ネタバレかも

日本はもういやだといいながらここに住んでいて暮らしてはいて、日本は水があわないとか、ここに活躍の場があるとかいう自慢話や見栄を張り合いツルむ人々、狭い日本人コミュニティでまるで佃煮のよう。気持ち悪いほどの仲の良さだったり、それなのに話せないことがあったり根ほり葉ほりしてみたり、小さな小競り合いと、まるで子供の喧嘩のようだったり。

つるむのが日本人、という描き方ではあるけれど、きっと多かれ少なかれ外国に住むということはどこの国でもきっとそうなんだろうな、と思ったりするのです。外国人が訳してみせる(異質であることについての)フォークロアを「わかる」という一言が巧く効いています。こういう小さな一言が効いているという意味では、女子会に呼ばれたのが日本人ばかりに疑問を挟む女、それが「外人を区別しない」という終盤の台詞にとてもよく効いています。

心細さから相談しながらもまったくそんな気はない女だったり、下心いっぱいだけれど言い出せなかった男の中年男女の恋心とヤキモチのあれこれというのも実にいいのです。頼りがいのある男が言い出せなかったこと、抱えるコンプレックス(この場の花火の音だけがしょぼいのもいい)が実にいいのです。下世話にすぎると思われる向きもあるでしょうが、そういう格好良くない恋心、男と女の想いのすれ違いが実にコミカルで実に楽しい。一歩を踏み出してもすれ違ったりと、まるでファンタジーな気もするけれど、それはそれで確かに切実に効いてて、男女ともかなりネジれまくっていているけれど、作家のコミカルの巧さが効いていて実にアタシは好きなのです。演じた石田登星の格好悪さも、藤野節子の包むような感じもファンタジーで実に。

店長を演じた椿真由美は、この場所にしっかりと居続ける唯一の人、人が集まるという場所の説得力。留学生を演じた七味まゆ味は、オープンマインドで分け隔てのなさの若者が格好良く、素敵なのです。旅行者を演じた坂口修一は序盤で外来者として舞台を説明しつつも、英語ができなくてもフラットに人と関われるという人好きする感じが印象的。単身赴任している女を演じた広瀬彩はヤキモチに揺れる女だったり、時に(これもまたよくない趣味の)正義だったりと多くのロールを背負いますが、破綻なくきっちりと。

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