【芝居】「すべての夜は朝へと向かう」競泳水着
2012.12.16 14:30 [CoRich]
競泳水着の新作は前回公演とはまた別の一夜のものがたり、という105分。24日までサンモールスタジオ。
生徒をつきあったけれど別れを一方的に告げられ、予備校を辞めてバーで働くようになった男。予備校の同僚達とはまだつきあいがあって、そのうちの一人といい雰囲気になっている。ある夜、彼らの飲み会の二次会で、辞めた男の家に夜中行こうということになる。その仲間、別れたけれど言い出せない二人や、若い彼氏のことが気になって仕方がない。その彼氏は気になってる人がいる。
すれ違いの増えた夫婦、妻は別の男と呑み友達になっている。男に温泉に行こうと誘われる。
最近ちょっと少な目だった恋愛ガッツリな物語、濃密なのです。11人の登場人物はいずれもちゃんと物語があって、いわゆる端役がないのに、コンパクトで、さまざまな観客にフックする力があるということはもちろん折り紙付きな作家ですが、今までの作品を軽々と飛び越える伸びをこの期に及んで作り出すのです。
たとえば女と別れてから次の恋が始まりそうな時にはなぜか何人か気になって脈がありそうなという人が現れたり。あるいは年齢が進んでしまって、もうこのまま一人かもしれないという覚悟が決まりつつある女、脈がありそうだと思っていたとしても踏み出せないとか。別れた二人がまだ恋人だと思われていて喧嘩していたり。あるいは夫婦の間に秋風が立ちつつあるところへの若い男。さまざまな恋の姿をきっちり、濃密に。
全体の中ではほぼ一夜の物語がほとんどです。この凝縮感が嬉しい。 たとえば映画でも(下手な演出ではそうとう安っぽくなる危険もあるけれど)成立しそうな感じがします。これをドラマにするとまあ、男女七人、なんでしょうがが、2時間弱ぐらいの濃密さがぴったりあっている気がします。 たとえば妻の呑み友達と夫の関係が後半になってあかされる(この二人の人物の奥行きがぐんと深まるいいシーンです)中で夫婦のこれまでを描き込むのカットバックのような感じ、あるいは偶然二人のままでずっと一夜を過ごすことになる男女の時間の流れが平行する感じ。
それにしても、この登場人物たち、それぞれに物語をきちんと描き込むということのすごさには舌を巻きます。それに応える役者のちからも盤石です。予備校教師だった男を演じた武子太郎は正直いままでは軽さが印象的だったのですが、ある種の優柔不断さがありつつも奥行きを。村上誠基もまた軽さやコミカルが勝る印象だった役者ですが、腹立たしさ、喧嘩の凄みと優しさが見え隠れするいい仕上がり。川村紗也は少し大人の雰囲気になりましたが、それでも全力で男と喧嘩するという可愛らしさが印象的。ザンヨウコはどうしてもお母さんだったり、女優だったりという感じの印象が強い役者ですが、きちんと恋愛する可愛らしい女性の姿もまた新しい魅力です。倉田大輔は意を決しての繊細な想いがしっかり。 別れを告げられた女の「どこでも恋は始まってしまう」は実にいい台詞で、演じた大川翔子の裏表と、自ら持つ恐怖な気持の振り幅。妻を演じた細野今日子もコミカルを封印して、しっとりとした大人の雰囲気が実にいいのです。
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