【芝居】「チェインソング」文月堂
2012.12.29 14:00 [CoRich]
文化系部活動の熱血学園ものというスタイルの110分。30日まで駅前劇場。
四年前他校との不良生徒同士の抗争がきっかけとなりイメージを一新した高校。希望に燃えた新入生が選んだ部活は文芸部だったが、その実は四年前の抗争の残党、最後の一人となり留年を続けている部長とその配下の二人だった。顧問も新任で事情を知らないまま引き受けてしまうが、一年生の文芸をやりたいのに諦めた気持ちに火を付けられ、戦うように奮起を促す。二年で転入してきた女子生徒は、お嬢様だったが前の高校でなにかあったらしく、不登校になっていた。母親は校長と古い知り合いだったこの学校に娘を転入させることにする。
文化祭の季節、文芸部も連歌をパフォーマンスとして上演することになり、不良生徒も巻き込み、一丸となって練習をする。文化部を一段低くみるラグビー部、文化祭常連のコーラス部と小競り合いがありながらも文化祭の当日、四年前の亡霊のように抗争していた他校の生徒が殴り込んでくる。無抵抗を通したが、その中心にいたとして、文芸部部長が退学処分になる。
スクールウォーズよろしく、ある種熱い熱血学園部活モノ、を文化部中心で描く趣向。当日パンフによれば、作家はずっと演劇部、学校での位置の微妙さを原資に書いたのではないかと想像します。 にぎやかな学園を作るべく、役者が21人という大所帯。おかげで、学校のあちらこちらで起きているという雰囲気を作り出します。運動部なりの次世代が育っていない感じの悩み、花形のコーラス部もまた演目から人間関係の悩み。教師は教師で鞘当て、頑張りもめいっぱい。文化部を一段低く見るような運動部の雰囲気だったり、まっすぐすぎる部長についていけない部員たちだったり、というのも高校の頃なら誰もが経験する感じがあります。
松尾芭蕉の「歌仙は三十六歩なり、一歩も後に帰る心なし」を体現するように、前を向いて、前に進むことこそが必要、重要ということ。失敗したって、それを受け入れて、前に一歩すすむのだという心意気をベースに、どこかで失敗した人、それを許すことができる、ある種のゆるさ。その思いを連歌(チェインソング)に託し、そして高校生たちも前に進むのです。
正直にいえば、確かに友人が指摘するとおり、物語に対して不要な役が多すぎる感じはあります。が、そのおかげで学園でいろいろ起きているという、大きめのコミュニティということを描き出せているということも同時に思うのです。
文芸部部長を演じた牧野耕治のどこか可愛らしい感じ、副部長を演じた霧島ロックの圧巻の迫力。編入生を演じた辻沢綾香は引きこもりの弱さと、終盤で人々の先頭に立つ力強さのコントラストが鮮やかで印象に残ります。コーラス部部長を演じた前有佳のキンキンする感じがありそうに。部員、山下真琴の可愛らしさ、新任教師を演じた竹原千恵の覚悟した力強さもまた、印象的。
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