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2012.12.14

【芝居】「ボクのおばさん」自転キン演劇部

2012.12.9 17:00 [CoRich]

自転車キンクリートカンパニーの役者たちが、鈴木裕美も飯島早苗とも関係なく芝居を立ち上げるというユニットの第一回公演は、サスペンディッズの早船聡の作演によるコタツと和室一間の物語を95分。9日まで雑遊。

親から町工場を長男が継いだものの、業績はじり貧になっている。妹はコールセンターのクレーム担当の契約社員をしているが、化粧っ気もなく、男ができる気配は微塵もない。ある日長男が機械で手を怪我してしまい仕事が受けられなくなりいよいよ会社は厳しくなる。次男も駆けつけるが、前任者が犯罪で殺され後任として政情不安の地への海外赴任を控えている。その中学の同級生が通りかかるが、それは妹が中学生の頃からあこがれている男で、その再会に心ときめかせる。さらに叔母も心配して駆けつけるが、次男だけは、何時まで居座るつもりなのだと、つらく当たる。

親と子供の緊張感ある関係、その背景、それぞれの事情をないまぜにして、物語を紡ぎます。兄弟が叱ったり叱られたり、喧嘩したりみたいな家族の場所。「ボクのおばさん」というワンアイディアを核にしながらも、家業のこと、結婚のこと、恋心のことをさまざまに。

親のことを許せない男の物語、という点で 昼に観たキャラメルボックスと少し似たところがあります。こんさくだってもちろんきっちり作りこまれている感じはありますが、正直にいえば、昼の芝居の完成度、奥行きに比べてしまうと、少々物足りない感じは否めません。それでもたとえばアタシの隣に座ったおじさんが後半にかけて号泣モードになっているのを見ると、きちんと紡がれる物語を、実力のある俳優たちが作り上げた芝居は届くのだなと思うのです。

歌川椎子はお気楽にガハハと笑うようなオバサンキャラから、タイトな背景を背負う役をきっちりと作り上げます。この振り幅を深刻になりすぎずきちんと造型するちから。アタシは観てないけれどじてキンの旗揚げの頃は「躍進するお嬢様芸」というキャッチフレーズだったのだけれど、それがオバサンを演じるようになるとは感慨深いものがあります。 瀧川英次は少し影のある雰囲気は、まさに物語にコミットしています。自転車キンクリートの役者の層の厚さすら感じます。松坂早苗は、いわゆる「可愛くない妹」どころか「女じゃなくなってる」ところからトキめくのが可愛らしく。春日井静奈は家族というものを信じることができなくなっている婚約者のことがわからず苦悩する姿なのに実に美しく。

ネタバレかも

叔母さんということになっているけれど、次男にとっては実の母親で若い頃に育てられずに逃げてしまったというのが物語のキーポイントになります。母親だからこその理屈抜きに海外赴任を心配する気持ちなのにどうしても許してもらえないがゆえに伝えられない気持ちが後からジワジワとくるのです。

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