【芝居】「肉のラブレター」MCR
2012.12.23 15:00 [CoRich]
23日まで駅前劇場。90分。
難病で死を宣告された男。恋人に負担をかけたくなくて、別れを告げることにする。ずっと近くに居る別の女。
当日パンフによれば、作家の父親が病気になったのをキッカケにした物語だといいます。深刻な現実が迫った本人と周囲のあり方のギャップをベースにして描きます。本人、家族、本当に好きな人、それぞれの想いあれど、それぞれに悲しさもその中にも笑いが起こる瞬間もちゃんとあること、つまりは人が生きていくということだと思うのです。感情や想いが一色で塗りつぶされることはなくて、まだらになる、ということがリアルに感じられるのです。
その中心にあるのは、想う気持ち、それは一方通行だとしても相思相愛だと感じていたとしても、それぞれの中にある確かに信じたいこと。男と恋人の距離と、男と(いわゆる)幼なじみの近い女の距離、ある種の三角関係とも云えるけれど、自覚しているのにそうならないというものすごく歪んだ三角形が奥深さに。
「好きが嫌いだで生きていけるということが魅力」というのはすごくいい台詞なのです。好きなんだからもっとがんじがらめにしてほしいし、好きだから一緒に居たいということも、血のつながりではない二人での日々ということ。
実際のところ、生きていくこと、寄り添う誰かがいるかもしれないということの物語。軽く見せる演出でどこまで深さがあるかどうかというガイドがないというか、(作家の)思索が迷い込んだように感じられたりもするのはダイナミックレンジの広さ。正直に云うと、ところどころ置き去りにされる感じは否めません。
金沢涼恵の演じた幼なじみは、可愛らしく、魅力があるのに、恋人ではなく、しかも相手の想いを自覚していてもそういう関係になったことすらない、それでもずっと一緒に居たいのだという、あまりに捻れすぎていて造型するのはきっと難しいと思うのです。が、時に奔放に見えてもしっかりとブレない気持ちが見えるよう。
百花亜希は、好きとか嫌いとかで生きている人という設定はこの中ではヒールになりがちだけれど、「好きとか嫌いだけで決められる」という台詞、強く生きる感じが逞しく印象に残ります。
堀康明は、いわゆるキレキャラ、つっこみキャラなのに、実際のところ気持ちやら問題点やらの説明を背負っていて、観客の視座にもっとも近いところに寄り添います。恋になりそうになったのに、そうでもなかった、というのは深入りするとあまりに切ないけれど、そこを描いたりしないさっぱりとした造型もまた気持ちよく。
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