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2012.12.17

【芝居】「15みうっちMade」Mrs.fictions

2012.12.15 14:00 [CoRich]

短編集の対バンという人気企画15MinutesMadeの構成をそのままに、主催団体Mrs.fictionsの作演だけの「みうち」企画120分。(終演後にトークと面会を目的として別時間で「おわりの会」が設定されています)。16日までシアターグリーンBASE THEATER。

引っ越しをして出て行く男とその引っ越しを手伝いに来た男たち。30歳過ぎてもまだジャンプを読んでるなんて思わなかったけれど。「とりあえず先は見えない」
男たちは毎年同じ日に誰と云うこともなく、この家に集まっている。なにをするでもないのだが、3年前に突然姿が消えた女を待っているのだ「秋にまたない」
人をナイフで刺そうとする男は妻の手によってナイフがゴム製の玩具にすり替えられて。心中しようとする女子高生と教師が怪しい外国人から買ったクスリはラムネ菓子で。七輪抱えて車で死のうとした男たちの炭は湿気ていてまったく火がつかず。首を吊ろうとした女は見事に失敗して「だらしない人生は確かに続く」
男は好きな娘に告白したいのだが、女の家は大変なことになっているというから告白できなくて、そうしたら分裂してしまって「うちの屋根がでかい鳥に持ってかれた。」
甲子園まで後少しという地方大会の試合前。ロッカールームに居る女子マネージャーが目隠しされている。この高校の伝統では、女性はベンチにも入れない禁を破ってロッカールームに居るところを見つかったのだ。選手の半分がカミングアウトしている。
『人と人は出会わなくてはならない』を標榜する劇団の公演の開場直前。その本当の姿は「ミセスフィクションズのメリークリスマス(仮)」

「~先は見えない」の物語本編は、年令を重ねても先が見えないままの失われた20年を生きてきた30歳台の人々の、積み重なるような、先が想像できないような、というちょっと散文詩のような感じ。が、この芝居は同じ芝居を「暗闇の中全裸で」繰り返すというところで演出の面白さをねらいます。台詞の端々が「全裸」にひっかかってたり、何気なく叩いた音が「ペチペチ」としてみたり、あるいはフラッシュ撮影の一瞬の面白さなどさまざまをちりばめています。ある種「シベリア少女鉄道」のような仕掛けで見せる構造なのだけど、正直にいえば、そのワンアイディアでは15分はクスクスとした笑いにしかならず、もっともっと大爆笑にもっていく破壊力がほしいところ。

「秋にまたない」は15MinutesMadeの第2回公演からの再演ですが、すっかり忘れていたアタシです。 一人の女でつながっていた男たち、女が突然消えていてもその「手紙」を信じて同じ日にゆるやかにつながり続けている姿。男たちそれぞれの女との関係が先輩だったり、ちょっといたずら心の風景があったりと関係を微妙にずらしています。

「だらしない~」は(ある種の)自殺すら人生はままならない、という人々を描きます。4つの場所で、そのうち3つまでは互いに関係がなく、同じ時刻というわけでもなく、どこかにある、ままならない人々の話を並べて見せているのだけれど、正直に言うと、物語としてなにを運んでいるのかが、いまひとつわからないのです。

「うちの屋根が~」、想っている娘に告白しようとしたら相手はもっと(突飛で)大変な事態なので言い出せない、というシチュエーションから、もしかしたら、ということを並べて見せていきます。3人の失敗の後に、再び巡ってきた男が選んだのは、(オチが無かったり、話の行き先がわからなかったりしても)彼女が話す話を聞く、ということだ、というのはたとえばMU(こちらN公園管理人事務所爆発前)にも通底するのだけれど、それでもいいのだ、自分はそれでも彼女のことが好きなのだという感覚。そこにつっこみまくるMUは爆笑編でしたが、この物語の要が見えてからはむしろ作家の優しさが見えてきます。

「男達だけで~」は今回の中でもっとも完成度が高くて、きっちり面白い一本。ある種のヤンキーコミュニティ(Mrs.fictionsが描くヤンキー( 1, 2, 3) は時々すごく面白いことがあります)、そこから逃げ出せない呪縛と、でも女子マネにはつらくあたっていても男達は彼女に一縷の光という物語の着地点もものすごくよくて。なにをしてもこの街の呪縛からは逃げられなくなっているのだということを半ば諦めていて、地方大会のここが人生のピークなのだということの諦観だけれど、その先にもう一歩あるかもしれないという希望を描く物語が実に素敵なのです。

「ミセスフィクションズの~」はMrs.fictionsだけの企画だから成立するセルフパロディーの一本。おそらくは働いていること、厳しいこともあるだろう彼らを、ブルジョアなドレスの女たちが「世間のことはわからない」けれど「(遊びではなく)芝居をすることに真剣」だという捻れまくった投影をしているワンアイディアが秀逸。時々(話はまったく関係ないけれど見た目に)三人姉妹っぽい感じが混じるのがちょっと楽しいのです。こんなに短いスパンで前川麻子を観ることになるとは思わず、しかしドレスがやけに似合うのです。石井舞も北川未来も若い役者ですが、きちんと対等に作られているのは作家が書いたホンゆえなのか、稽古の中で培われたものなのか。女性三人が毛布にくるまるというシーンのギュッと集まる感じはクリスマスっぽいって思うのはアタシだけかしらん。

正直に云うと、脚本の面白さで中嶋康太の二本が他に比べて圧巻なほどに差を付けてしまいます。「男達~」ではカミングアウトという薄皮の外側にこの街の姿をきっちり描いて、さらにその外側に想いというもう一皮を作る面白さ。「ミセス~」はセルフパロディーを、単に面白がらせるだけじゃなくて、次回公演の「春までおやすみ」という台詞を入れるのも面白くて。

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