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2012.11.17

【芝居】「エキスポ」ハイリンド

2012.11.11 14:00 [CoRich]

中島淳彦の描く人情喜劇を役者集団、ハイリンドの上演で。11日までd-倉庫。115分。アタシの観た千秋楽は満員の大盛況でした。アタシはこの戯曲は初見。

九州・宮崎の田舎町。昼は食堂、夜は連れ込み旅館で働くしっかり者だった母親を亡くした通夜。近所の人も見慣れない顔も集まっている。母親は働きづめで一家を支えていたが、そのせいか夫も息子も怠け癖がついていて頼りない。上の娘は出戻りだし、下の娘はどうにも愛想がないしこの土地の田舎臭さを嫌っている。結局息子の嫁が葬儀の手配も財布も仕切っている。
妻を寝取られた男が金を無心に訪れたり、元夫が出戻ってきている女のことを訪ねてきたり、どこの誰かわからない人が紛れ込んだりしている。親しい旅行代理店の男が、亡くなった母親が5人分の大阪万博のツアーを申し込んでいたのだと云いにくる。

大阪万博の年、まだ地域のしがらみが色濃くて東京という場所が今よりもずっとずっと遠い頃の宮崎の田舎町。そんな田舎の様子が嫌だという東京への憧れだったり、あるいはこの土地を離れたくない(あるいは離れられない)という強い想いだったり、嫁として居ることの取り仕切りだったり。そういう社会との関わりという意味では、その骨格を作るのは女性の登場人物たちに割り当てられているのが特徴的。男たちはどちらかというと、もっと脳天気なキャラクタで、よだきんぼ(めんどくさがりや)の、しかし愛すべき人々として描かれます。それを支えていたのは昼も夜も働きづめで、しかも誰も好かれていてという母親の姿。彼女自身が物語に登場することはありませんが、葬儀にどれだけの人が訪れるかが生前の生き様なのだということが描かれています。

終幕、全体を覆う鯨幕が一瞬にしてスクリーンになって万博の様子が写されます。亡くなった母親が代理店に申し込んでいた万博に、この家族が行き、インタビューを受けた父親の胸に妻の骨が、という終幕のシーン、舞台全体を覆う画像に埋もれるように見える家族たち、万博の会場に行った様子がありありと浮かぶようで、強い強い印象を残すのです。

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