【芝居】「箱庭迷宮」幻想劇場◎経帷子
2012.10.28 14:00 [CoRich]
まつもと演劇祭皆勤、演劇実験室を名乗っていた劇団が昨年改名。60分。28日まで四柱神社。
確かにここで彼と暮らしていた。両親と会おうと誘う女に男はつれない。女が一人で家の中に居ると、どこから入ってきたのか、音楽隊やイタコ、果ては浪人まで現れて煩くてかなわない。
テラヤマっぽさがふんだんに。それでも、祝祭感やギャグだったり、あるいは現在の私たちに身近な登場人物(まったくキャラクタ勝負みたいな役もあるのですが。)がいることで、圧倒的にみやすくなっています。テラヤマに根元があっても、時代の流れというのはあって、いくらでも芝居の観客が居るという東京とは違う規模の街で観客に向かい合うという覚悟。テラヤマに拘泥するばかりの芝居が数ある中、そのエッセンスを残しながらも、それを知らない若い観客に対しても見やすく、コントのようではあっても、丁寧に作り込んでいるのはきちんとリーチするのです。
結婚を望む女、それから逃げ続ける男。他人の幸せを見て不安になる女の心のなかを写すように、騒がしく楽しい感じになりたかったり、神にもすがりたい気持ちだったり、あるいはこの気持ちを解決してくれるヒーローが居てはくれないかという風に感じ取りました。こういう風だったらいいのにな、ということを箱庭としてつくること、そこに閉塞していく気持ち、私の安らぎの場所、という使い方が効果的です。
終幕、男と女の風景。開幕の時とおなじような会話だけれど、男は両親と会ってくれる、という。女の望むような結末にみえるけれども、これは決してハッピーエンドではないと感じさせるのです。最後のシーンで、女のニヤリとした表情がぞっとするほど。これは現実ではなく、もっともっと閉塞してしまった彼女の中のできごとだと感じられてならないのです。
女を演じた、きむらまさみの豊かな表情が印象的。ある意味賑やかしポジションだけれど、音楽隊を演じた廣田謙一(作演を兼ねる)、新谷聡は絶妙のテンションと間合いが楽しい。
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