【芝居】「ぱっとみて鯖」演劇裁縫室 ミシン
2012.10.27 16:00 {CoRich]
岡谷の劇団で、公演は松本で5年ほど打っているようですが、アタシは初めて拝見します。28日まで ピカデリーホール。60分。
スーパーの青果部で働く三十代の女。廃棄の野菜や時には魚までこっそり持ち帰える日々。恋人なんかいないけれど、頭の中でいつでも現れる彼との会話と、SFが大好き。そんな不思議でちょっと危ない彼女に同じスーパーで働くロックミュージシャン志望のカップルの男が惚れてしまう。家に上がり込んできたカップルの前に、スーパーから持ち帰ったサバが、恋人だと名乗って現れる。生でかじったサバに含まれていた生命体が女の身体に入り込んでいるのを中和するためにやってきたのだという。
あらすじだけでも無茶苦茶さに、映画や音楽、SFといった30歳代以上の男子には大好物なテイストてんこもりのナンセンスコメディ。中盤でカットバックされる(私でもわかる)E.T.やらバック・トゥ・ザ・フューチャーだけではなくて、スターウォーズ(逆さに持ったライトセーバーで足を痛っとやるのが絶妙)やらから、名前を聞いてもよくわからないSF作家に至るまで目一杯。コントよろしくこれでもかと詰め込んだ爆笑シーンの連続でともかく面白い、という感じ。今のような重厚路線が強く出るようになる前の軽薄な(褒め言葉)ナイロン100℃や、後藤ひろひと時代の遊気舎のような軽やかさとイキオイで実に見やすくて、観たらともかく誰かに勧めたくなる感じという伝播力があります。
もちろん単なるコント集ではありません。妄想で一人話し、静かに暮らす女、かき回すように現れるロック野郎カップル、サバで「感染」する宇宙人と、突飛に見える材料を爆笑を混ぜながらするするときっちり物語にまとめ上げてみせるのは実に凄みすら。妄想の一人語りにみえている女がそうなってしまい、読めずに置いてある「最後の一冊」の本のいい話、と盛りだくさん。これはちょっと凄い。
オープニングでは役者の動きに合わせたプロジェションマッピングで役者クレジットも見せちゃうというのもまた格好良く、凄い。東京駅の復原完成披露で有名になったこれもナイロン100℃などに先例があるといえばあるのだけれど、きっと予算規模だってずいぶん違うのに、これをともかくやってしまうのも凄い。終盤で飛び込んでくる大量のサバというのも、広げまくった大風呂敷をさっさと収束させるということに実に上手く機能しています。あるいは浴びせると服だけになってしまう怪光線が次に浴びせると服だけが無くなるなんてのも単純なんだけど面白い。作演を兼ねる岩崎佳弘が文字通りカラダを張って、というもまあ、オイシイといえばそうだけど。
アタシの観た土曜昼の回は、すぐ隣で行われている工事の音が客席内にも聞こえていて、決していいコンディションではありませんでしたが、そんなことはたいした問題ではないぐらいに、圧倒的な印象を残すのです。
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