【芝居】「ヒコクMen!」シアターTRIBE
2012.10.27 20:00 [CoRich]
60分。28日まで四柱神社。もう一回大きな地震があって、日本という国はあっさり、ずたずたになって壊れてしまう。水すら手に入れるのが難しく。居ても立ってもいられず先のことはあまり考えずに移動している男は、休憩するために入った公園で女子高生らしい女に出会う。男を陥れてまで水を手に入れようとする女の罠からやっとの思いで逃げた男は、自由のために新しい国を作るのだという男たちに連れられて「大日本第三帝国」に行くことにする。自由気ままな生活ができるというが、地主と名乗る女からは税金を巻き上げられたりしながらも、この国の人間となる。そこで高貴な女として祭り上げられていたのは、さっき公園で水を巻き上げた女子高生だった。
震災や近隣諸国との関係など、私たちが直面する現実の世界に着想を得ながらも、時にミリタリーっぽい格好良さだったり、時に中二っぽいというかなんというか愛おしい馬鹿馬鹿しさと不思議な手触りを持つ仕上がり。たとえば男と女子高生風のかみ合わない会話とか、国が無くなったらこれまでの税金ナシってことになるだろなとか、一つの物語にしながら、作家が感じたもしくは考えた何かの断片をぼやき漫才よろしく(いや、芝居の体裁はまったくそういうわけじゃないのだけど)紡いでいくように見えるのが、気楽に楽しめる仕上がりになっているという気もします。
襲われる叫んだり泣いたりとあの手この手で欲しい物を手に入れようとする女子高生風の若い故のワガママさと言いたい放題、それに巻き込まれ怪しまれるオジサン(とはいえ、彼だって十分若い)という感じの巻き込まれ型の会話。そういう目に遭ったわけでは無いけれど、女子高生目線に見えるオジサンってのはこうなんだろうなということが身につまされる感じが軽やかな序盤。巻き込まれる男を演じた山田和政の巻き込まれっぷりも、憎たらしいほど傍若無人なのに可愛らしさでしっかりとバランスする内河静夏の序盤の軽さが結構好きだったりします。
「大日本第三帝国」なる、あたらしい国で暮らす男たちは愛らしいほどにバカっぽくホモソーシャル感もしくは中二感の楽しさ。マドンナを囲んで盛り上がってしまう感じというか、隣国との争いにしたって銃をぶっ放してだったり、モテ期だったりさまざま。そうそう、こんな深刻な状態のはずなのに、男の子ってこういう感じ。若くはない、というよりは多分ほぼアタシの世代なのにこういうキャッキャした感じの楽しさもまた、作家の視線な感じ。
終幕は実にあっさりと、ホントに国が無くなってしまう感じ。これを物語の着地点としてとらえると、救われない感じではあるけれど、国というものを自覚するということの描き方なのかな、という気がします。
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