【芝居】「編集室の亡霊(Aキャスト)」信州大学劇団山脈
2012.10.27 17:30 [CoRich]
信州大学の劇団、山脈(やまなみ)の公演。50分。28日まで上土ふれあいホール。予告されていなかったけれど、男女を入れ替えてのA/Bキャストでの公演。アタシが拝見したのはAキャストでした。小さな編集プロダクションらしい編集室。作家や編集者が出入りしている。大出版社の新雑誌から特集企画で、ここに出入りしている作家を使いたいといい、盛り上がるが、〆切直前、作家の一人が行方不明になる。
しっかりだったりうっかりだったりな個性の編集者たちと、奔放な作家たち。優しく見守る編集長と、それをからかうような謎の女性。作家の失踪は編集者や作家たちが少し騒ぐけれど、編集長は悩み、見守り続けています。そう、失踪した作家が戻ってくるのは、たまたま出会った老人が自分の読者であったことを知り、「自分の作品を待っている人が居る」ということを初めて自覚して、ということなのです。そういう意味では自己完結しているだけともいえますし、周囲もそれを責めるでもなく、受け入れるといった具合で、ひたすらに優しい気持ちで包まれている物語なのです。
逃げ出したくなること、そこから逃げ出してしまうこと、自分(の作品)を受け入れてくれる人が居ると云うことが、コミュニティに復帰するということ。若い彼らが感じる挫折と復活は、物語にしてみると些細なさざ波にすぎないものになっているかもしれないけれど、身の丈にあった感覚で紡いでいるということだとも思うのです。
作家を力づける老女は客席の中から登場し、失踪中の作家に声をかけます。作家に対してこの老女が読者であるように、この舞台に向かい合う客席にいる私たちもまた、この舞台に対しての作家なのだということを明確に意識させて、ちょっとしゃれた感じもします。
正直に云えば、編集長を軽口でからかったりする「亡霊」がどういう存在なのか、ということが今ひとつぴんとこない感じはします。編集長のかつての本好きの仲間たちも挟まれるのだけれどこのあたりを幹となる物語にもっと寄り添わせることができたらな、と思ったりもするのです。
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