【芝居】「こんばんは、父さん」二兎社
2012.11.12 19:00 [CoRich]
埼玉、愛知、滋賀、東京、愛知を経て13日までまつもと市民芸術館・実験劇場。そのあと神奈川、茨城、新潟、岩手、大阪、三重、福岡。105分。
廃工場に忍び込む老人。つけてきた男はヤミ金融の取り立てだった。もう利子だけでもずいぶんになっていて、返すアテはない。取り立ては気立て優しく、ギリギリまで待っていたが、このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。成績が思わしくないと厳しい研修に送り込まれてしまうのだ。老人は、会社員で出世している息子は10年も会っていないが、きっと返してくれるだろうと漏らす。取り立ての男は電話をするが。
「書く女」からですから、ずいぶん拝見していませんでした。松本での公演も重ねてきたようですが、アタシは松本で拝見するのは初めて。月曜夜だというのに満員の客席。終演後のトークショーにも大勢残っています。
右肩上がりだった頃、ここで暮らしていた親子が再会した廃工場。工場を持って職人として一流だった父親と、その親会社に就職して早くに出世に乗ったはずだった息子。盛況だったころには、家族はバラバラで母親は強い孤独を感じていたけれど誰も問題だと思っていなくて。果たしてバブルははじけ、失われた10年はとうに過ぎ、定職は失い、短期の派遣労働で食いつなぐようになっている二人なのだという背景は物語がずいぶん進んでから判ります。戦後の日本が右肩上がりに成長し、子供たちは不自由なく育てたいという考える親心が積み重ねてきたもの、そこに置き去りにされたもの、あるいは成長を享受した世代なのに転落しているということ。あるいはバブルの後に生まれ、経済的に立ちゆかなくなりつつある日本しか知らない若者。たった三人で演じられる物語の中に、私たちが歩んできた戦後の日本の暮らしも経済も人の想いも無理なく、しかもぎゅっと濃い密度で詰め込んでしまう作家の圧巻の力量。
物語の背景は深刻だけれど、その一本調子にならないというのは圧倒的に見やすいのです。ときにロードムービー風に共通の敵に立ち向かおうとしてみたり、かつての繁栄したころの姿を少々コミカルに混ぜてみたりと、飽きないシーンも本当に多いのです。
いまは亡き母親(妻)は役としては出てこないのだけれど、工場の活気の中、あるいは一人家でテレビを観る寂しさなど、経済成長のころ(「エキスポ」にも似てる気がする) の家庭とか妻のありかたのようなものを通して、母親が見えるよう。
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