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2012.10.16

【芝居】「遭難、」劇団、本谷有希子

2012.10.13 19:00 [CoRich]

代表作の一本を再演。120分。23日まで東京芸術劇場のオープニング企画の一つ。シアターイースト。そのあと、松本、大阪、福岡。

舞台全体を窓ガラスで埋めた向こう側に、事件が起こって臨時で二年生の担任ばかり集めて体よく隔離した臨時の職員室。それだけがすべてではなくて、事件の責任の在処についてを巧妙に隠しながらも、時に正義を説いたりもしながらも、時に共生するような金魚鉢の雰囲気。

物語の核となるのは、たった一言に拘泥してしまっためにこうなった私。それはよくないというのは判っていても、それが理由なんだから仕方ないのだという論理の女教師。当初予定されていた黒沢あすかの降板を経て、これを引き受けたのは菅原永二。あまりにエキセントリックな役で、ほぼヒールなわけでこれを女優が引き受けるのは負荷が高すぎるのですが、これを男が演じるということで痛々しさが中和され、結果的に成功しています。これを考えると初演の松永玲子はよくぞこれを演じきったな、ということを今更ながら凄いと思うのです。

違和感は感じていても、どうして自分がそうなってしまったのか、という焦燥に「トラウマ」という言葉が与えられることで許されたと感じること。良くも悪くも何かを名付けるということの力の怖さすら感じさせるのです。

学年主任の男を演じた松井周、気持ち悪さよりはむしろ普通の人、という感じに。保護者を演じた片桐はいりの切実な色気感に説得力。回想シーンで演じる「先生」もいいバランスです。担任を演じた美波の可愛らしさ、反感を持つ教師を演じた佐津川愛美のきゃんきゃんとうるさい感じは、主人公のいらつく感じを加速していて説得力を増しています。

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