【芝居】「ライ・トゥ・ミー」エビス駅前バープロデュース
2012.9.29 17:00 [CoRich]
この場所を知り尽くした作家と演出のタッグが安定の70分。10月13日までエビス駅前バー。
地方の「大川戎商店街」は近くにイオンのモールが出来てからほとんど客は来なくなっている。年に一度の夏祭りはこの商店街に活気が戻る瞬間で、起死回生を狙って地元出身の手品師を目玉として呼んだものの、姿を現した手品師は昼間から酒を呑み、手はふるえていた。
お洒落なバーの内装だからなんとなくオシャレな酒場での話しかできないと思えば、手慣れた作家はそれを軽々と飛び越えて、町おこしに困り果てる田舎の商店街の夏祭りという枠組みを、その控え室というやりかたで作り出します。
大型モールの影響にあえぐ小さな商店街の町おこし、いちどは売れたけれど落ちぶれて見る影の無い手品師の男が再起をかけ出演する故郷の商店街のイベント。今は売れっ子となった弟子が師匠に引退を迫り、妻でありマネージャーの女はそれでも復帰を切望していて。商店街の人々がこれを応援し、弟子が師匠に引退を迫り、その勝敗を判定する女の気持ちなど、シンプルな構図ではあっても少々無茶な設定を、なぜ彼らがそう行動するかについて、隅々まで気を配って描いています。わりと物語を詰め込んでいる気はするのですが、よどむことなく一気に観てしまうのです。
手品師を演じた岡見文克は、不器用さをしっかりと。支える妻を演じた外山弥生は不幸だったり変わってる雰囲気が多い役者ですがけなげに思い続ける一途さが存外に似合います(失礼)。あくまでヒールを演じる山崎雅志はキザで通す役の造型が功奏。田中千佳子は下町っぽい造型の酒屋、こういうキャラクタが実は似合う気がします。時につっこみ、時にこつこつ小商いという総菜屋を演じた菊池美里の安定したバイプレイヤーぶりに舌を巻きます。
エビス駅前バーという場所は、カウンターで芝居をすると、観客からはどうしても背中が多くなる、それを避けようとするとカウンターの中と外での会話を成立させづらいという弱点があるのですが、客席の中央にもうひとつカウンターを作るというのは、新鮮な発想。今回は必ずしも効果的ではないかもしれませんが、応用が効きそうな気がします。
ネタバレかも
手品師を出す以上は、少しでも手品がでてほしいもの。時々みせる手業を見せたりというのもうまく効いていますし、シンプルでちゃんと(まあ、良く考えればタネはわかりそうとはいえ)びっくりを作り出す鮮やかな終幕は実に気持ちがいいのです。
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