【芝居】「ヒッキー・ソトニデテミターノ」パルコ・プロデュース
2012.19.13 14:00 [CoRich]
ハイバイ・岩井秀人の代表作のひとつ( 1, 2)を改訂新作として。14日まで。パルコ劇場進出、それも舞台をきっちり埋める120分。
引きこもっている男。やがてご飯を食べるために降りてきたら暴れるようになり両親は解決のため専門家に相談に行く。その事務所は元引きこもりの男が仕事をしていて、それをコントロールする女性も居たりする。果たして、引きこもりから家をでて、事務所に併設されている寮で暮らすようになる。
ヒキコモリという社会現象自体は決して解決したわけではないのでしょうが、世間の話題としては一昔前のもの、という感じは否めません。それを題材にするハイバイのマスターピースである「ヒッキー・カンクーントルネード」を元にしながらも、物語を大幅増量していて、引きこもっているということが可能なのはそれを支える両親という経済力が国にあってこそ。逆ピラミッドになり、国の力が弱くなっていくとそもそも「ソトニデテ」みなければならないこと、「世界は両親でではない」というような台詞があったりもして深みが増しています。
あるいは社会への適応ができているわけではないのに、ネットで軽々と就職できてしまうこと、若くない人がスロースタートで社会に出て行こうとする困難さ。これも今の時代によりあっている感じです。もっとも後者に近いアタシは、その先の結末にそのほろ苦さを感じるのですが。
あるいは「人と比べること」の無意味さと、どうしても比べてしまうということ。アルバイトできることになって出て行く男の母親に、ネットで軽々と就職してしまった男の母親がはなす「就職できますから」ということの残酷をしてしまうことがひりひりとします。
もちろん、もともとの「ヒッキー」のあれこれもきっちり。たとえばプロレス好き、一緒に遊ぶ妹は、この家の中を支えていたのだなという雰囲気でこのほっこりするシーンが実に好きなのです。
吹越満が実に良くて、冴えない感じのチェックのシャツにデイパック、まるでアタシのよう(泣)。古舘寬治が演じる40男固有な感じの造型の深み。チャン・リーメイ演じる「出張お姉さん」は今までの上演からも引きつづき。この大舞台においても実に魅力的で可愛らしく。小河原康二演じる父親の少しとぼけた味も楽しく。妹を演じた岸井ゆきのの元気いっぱいも印象に残ります。
正直にいえば、有償の当日パンフ以外にはプリントされた紙すらもなくて、配役がわからないというのは、この規模の公演としてはあまりにケチくさい気がしてなりません。決して誰でもご存じ、という役者ばかりではありませんから、役者にとってもひどいことだと思うのです。もうひとつ、あたしの座ったZ列上手側では、人物が一直線にならんで見えづらいシーンがいくつか。それでも、パルコ劇場の広い舞台の上で、こんなにも狭い世界の物語で、きちんと空間を埋められるのは凄いと思うのです。
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