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2012.10.27

【芝居】「暗礁に乗り上げろ!」肯定座

2012.10.26 15:00 [CoRich]

奈賀毬子が立ち上げた劇団の旗揚げ公演。太田善也の作演で110分。29日まで明石スタジオ。

目覚めると人々は手錠をかけられ閉じこめられていた。閉じこめられている理由がわからない人々の前に、仮面をつけた暴力的な男は、各々が犯した罪を思い出すように伝える。彼らをつなぐのは、一年前の歌舞伎町、非番の警官が殺された事件。

前半は閉鎖された空間、それぞれの人物の背景を描きながら脱出を目指しながらも疑心暗鬼、謎解きをするサスペンス風味。このターンでの着地点は当日パンフのヒントもあって早々に割れる感じではありますが、そこから思いも寄らぬ方向に物語が文字通りジャンプする感じがちょっと楽しい。そこに居たことを認めるわけはいかないというのは、この物語のフレームの中では十分に説得力があります。

作家の普段の語り口に比べれば笑いは少なく、ある意味、狂った人間を相手にしなければならないという深刻な話。その中で滲み出るのは、それぞれの人間の本当の姿。ひたすらいらつきながら最短経路の解決を図ろうとしたり、その時々の空気にながされたり、いい人だけれど踏み出せなかったり、徹底して優しかったり。そういう人々を描くことで人間の嫌な面も救われる面も描き出します。決して後味のいい感じではないと思うのだけれど。

逃げ場がなく閉じこめられた一般人が、その場を恐怖によって支配する力によって、一歩間違えば殺し合う、というのは普段ならば絵空事なのですが、本当にそんなことをしてしまう事件が世を騒がしている昨今では、むしろ現実の救いのなさに絶望的な気持ちになってしまうのもまた事実。物語や構成としてそう似ているわけではないのが救いと云えば救い。

安東桂吾は無口から始まり、優しかったり格好良かったりと無茶苦茶な振り幅をしっかりと。ちゅうりはタキシード姿の蘊蓄たれで風見鶏という情けないキャラクタの造型が人間くさくて印象に残ります。

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