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2012.10.24

【芝居】「K.ファウスト」まつもと市民芸術館

2012.10.19 19:00 [CoRich]

180分。21日まで。 錬金術師として知られたファウスト、ある日の実験で爆発を起こして姿を消す。それより前の出来事。
老い先の短さ儚さ、まだ知らないことが多すぎること想いふける夜。届いた魔術書から現れた悪魔の一人、メフィストは、あと40年の命とこの世の快楽の全てを体験し、全ての真実を自分のものとする契約を結んでしまう。果たして、ファウストは若返り、二人はヒッチハイクよろしく旅をしながらメフィストの助けで財政が破綻している国を立て直して大公の妻と懇ろになりかけたり、恋をしたおぼこ娘に入れあげるとその娘がみるみる着飾り、人と争うようになったりとさまざまを体験する。
いっぽう、弟子ワーグナーはその間に実直に研究を続けて名声を得て、ファウストが悪魔と契約した夜に雇われた下男カスペルはファウストを追いかけるも叶わず、ある街で新しい暮らしを始めている。
昼夜問わずの20年が経ち、メフィストはこれが契約の40年分だとファウストに迫り、ファウストは元の老人に戻ってしまう。カスペルとすり替わり悪魔の契約から逃れようとする試みも失敗に終わったとき、爆発のあの瞬間となる。

ちゃんと読んだことがなくてwikipediaを事前に読んでの観劇。「K(=串田).ファウスト」と銘打つぐらいに物語はずいぶん変わっているようです。神様だって出てこないし、救いがあるような感じでもなく。老いゆくこと、全てを手に入れてないということの後悔、手に入れたいという果てしない欲望といったことを物語の縦軸とし、体験する夢のような日々あるいは悪夢のような日々をサーカス仕立ての曲芸やジャグリングで祝祭感満載で作り上げるという構成になっています。

去年の「空中キャバレー」が物語と云うよりは小さな出し物をサーカス仕立てにしたのに比べると、おなじサーカスキャストを使いながらも、しっかりと物語を語るという構成。わりと深刻に暗く沈んだものがたりになりそうなところでも、サーカスと、軽やかに人物を造型するキャストたちによって、なぜか祝祭感に溢れる感じすら感じてしまうのは不思議な体験なのです。「自由劇場」はほとんど観ることが叶わなかった遅れてきた観客であるアタシなのだけれど、この祝祭感というのは、自由劇場の文脈に乗せて楽しさアップ、という感じなのもよくわかります。いっぽうで、単に楽しさだけというのでもなく、サーカスの祝祭感と物語の間にけっこうなギャップを感じるという感想をネットで見かけるのも理解出来ますが、これはこの祝祭感に「乗った者勝ち」という感じはします。

ファウスト演じた笹野高史、あとわずかな命に拘泥する老人から、白スーツにリーゼント姿という若返った姿まで時に重厚さ時に軽やかさ。串田和美は序盤の声に不安がないわけではないのだけれど、これもまた軽薄さを併せ持った悪魔・メフィストをきっちり。下男カスペルを演じた小日向文世が軽やかで実に楽しく、終盤での「成長した」カスペルの冷たさとのダイナミックレンジの広さ。弟子ワーグナーを演じた近藤隼はレジデントカンパニーTCアルプの公演の印象もさめやらぬなか、しっかりと。

最前列から3列ほどは「座椅子」を設定し、それより後は普通の客席という指定席のスタイル。調子に乗って最前列を購入したものの、休憩付きとはいえ3時間というのは少々厳しい感じも。初日では、休憩時間で男子トイレの行列すら捌ききれない(大劇場用のトイレを開放していなかった)のも、すこし厳しい感じ。去年の空中キャバレーではあった、「マルシェ」と名付けられた屋台がないのも、祝祭感という意味では少々寂しく。東京公演と合わせたということかもしれないけれど、松本なのだからこそ欲しかったという感じもするのです。

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