【芝居】「天空への途」菅間馬鈴薯堂
2012.10.20 15:30 [CoRich]
北区とか隅田川という場所が似合う感じがする菅間馬鈴薯堂の新作。90分。22日まで王子小劇場。例によって、劇団サイトでは戯曲テキストが無償で公開されています。
隅田川近くの介護施設から老女六名が突然姿を消す。施設は皆目検討がつかず探偵を雇い探す。老女たちは、近くに建ったスカイツリーにこそ天の岩戸があると信じ、展望室に上り、歌会をはじめ、岩戸を開けようとする。 老女たちの想い、それを支えようとする男たちはどこか社会かあぶれていてという感じ。終盤に至り、天岩戸を開こうという彼女たちの想いの深さがぐっと引き締まり語られるのだけれど、そこまでは断片がとりとめなく。脱走したペンギンが演じる老いた母を背負って売りに行く話だったり、オリンピックの日本人選手が演じる「シダとの交合」だったりあるいは蛍男が演じる昔のウィスキーのCM(夜が来る、って若い観客はどれくらいわかるのやら。アタシは課長の背中編の「遠い日の花火」は今でも使うぐらい印象的だ)だったり、あるいは大騒ぎの歌会(夢の中には歯がある、とか観覧車での想いの句とか絶妙)といったぐあいに、とりとめがなく、玩具箱のよう。
ネタバレかも
天岩戸の前の大騒ぎだったり、その道中だったりしたそれらが、居ない人に対する老女たちの想い。 終盤、母の母のことから始まる稲川美代子の語りが圧巻。赤いランドセル、大きな船、平和だったはずのそこに降りかかった未曾有の試練。それを震災と明確に言葉にしなくても、海沿いの、三月のことだとわかるシーン。老女たちに明確に「乗り越えたい」と言わせながらも、なぜそんなことが、というその意味を天岩戸に尋ねる想い。
それはしかし、現実のそれではなくて、老女たちが記憶をなくし無銭飲食で、山形で保護されるということに帰着するのも、ファンタジーをファンタジーとしてではなく、きちんと現実に帰着させる作家の確かな力。
老女たちがスタンドバイミーに乗せて、ゆっくりと歩を進めるシーンが圧巻でカッコいい。どこがどう凄いのか、アタシは説明する言葉がなくて悔しい。
じっさいのところ、誰でも飽きずに観られるけれど、そこから受け取るものは年齢や暮らし向きでさまざまに変わりそうな気がします。今の日本の姿を間違いなく描いているけれど、明るいバカ騒ぎを楽しいと受け取るのも正しい姿だと思うのです。
アタシの観た土曜昼は超満員。作家や看板女優の近い年齢の観客が多いかと思いきや、若い観客もたくさん、ということがまたうれしいのです。
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