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2012.10.17

【芝居】「傘月(サンゲツ)」乞局

2012.10.14 15:00 [CoRich]

110分。17日まで雑遊。劇団サイトにある、スピンオフ小説もぜひ。 男は思いたって妻を一人の残したまま家を出る「失踪編ーとある夫婦」
外は砂嵐吹きすさぶ。水も食料も乏しいなか地下室に居る姉妹。食料を調達に出ていた男が戻ってくる。男を怖いと思う妹、あくまでこき使う姉「咳が止まらない地下室編」
災害があったらしい場所、時間が経ち世間の関心も薄れ始めている中、ボランティアの男女がやってくる。浮かれてはいけないと思いつつも、ちょっと浮かれたり、あくまでもまっすぐまじめだったり。「ボランティア編」
夫が居なくなってしばらく経つが、弟にメールをして夫を捜してくれと頼む妻。必死で探しても見つからないまま日々はすぎていく「失踪編ーとある姉弟」
ボランティアがやってきた被災地。地元の人々の心の傷は深く、何かをやろうという気力すら殺がれていて「残された地元民編」

災害があったらしいとき。砂嵐が吹き荒れ水も食料もなく孤立している人々だったり、ボランティアに被災地に入ってる人だったり、受け入れる地元民だったり。あるいは夫が居なくなった妻たちだったり。それぞれの人々は物語の後半につれて緩やかにつながり、同じ時間帯を生きている人々なのだと示されます。生きるのもやっとから、生活の再建に悩む人、夫のことを悩む人という、災害があっても場所が違えばグラデーションのようにそれぞれの暮らしが違っているのだ、という事実。極限状態だって普段の延長だって、悩みも性欲もあるし、水も食料もやっぱり必要だというごくあたりまえのこと。

久しぶりだという下西啓正演じる、自転車に乗ったサラリーマンがファンタジーでおもしろい。物語を横糸のようにつなぎつつ、困っている人に助けるための物資を運びながらも、あからさまに自動車購入を勧めるという造型。それは電力会社かもしれないけれど、これもまた企業が生き延びていくために必要なことだともいえるとも思ってしまうアタシは会社員。 あるいは 頼まれて兄を捜している弟を演じた河西裕介、斜に構えたような感じではない役を拝見したのは初めてな気がしますが、ちょっといい。

物語としておもろかったのは、被災地のボランティアたちと地元民たち。少しはしゃぐ気持ちだったり、珍しい状況を写真に納めたいという非日常なボランティアと、気力を完全に殺がれた地元民たち。ボランティアたちに「絡んで説教する」地元民だったり、そうされても意に介さない自分大好きなボランティアだったり。ボランティアで入る側も受ける側も遠慮していて、不満があっても言い出せない、という状況をコンパクトに描いています。

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