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2012.10.10

【芝居】「Baggage Claim」年年有魚+海ガメのゴサン+ベイビーズ・ゲリラ

2012.10.8 14:00 [CoRich]

年年有魚の森下雄貴が関わる三つのユニットの合同公演、という企画。90分。9日までRAFT。

彼氏が最近忙しくて最近デートできず、今日も会社の人と野球観戦で会えず、女友達を呼びだしてお茶している。そこにやってきた同じ会社の女はデートの待ち合わせで、偶然野球観戦だというが「恋愛WINNER」
深夜のタクシー、オネエな男と水商売風の女が乗り込む。運転手の名前が沢田研二だといって盛り上がり、しかも運転手も割とノリがいい。男はジュリーのファンでもあって気持ちは盛り上がり、運転手にも心惹かれて。「寺田ノブエの人生劇場 vol.1~TAXI」
扉の中からノックする音に気づいてノックする通りがかりの男、中から水を流す音がしたりするが、出てきた男は何の用かと尋ねる。用はないので帰るという男は折角だからと引き留められ、定規で線を引いて見せられるがそれは見えない。「センビキ」
女四人で源氏物語を演じるのだといっていて懸命に練習しているけれど、作家はホンを書けずに「風のシーン」ばかりを稽古している。光源氏役が居ない演出のはずだったのに煮詰まった作家は男の俳優を呼んできて「劇団F」
テーブルの上にある伝説の銘酒を見つけた女、きっと家族の誰かが隠しもっていたか。帰宅した妹と三本の酒を呑んでいるうち、自分こそは酒の味が判るのだと喧嘩になる。そこに帰宅した上の姉は利き酒が巧いのだといい、注がれていた酒が唄っているという。「利き酒 on the Beat!」 劇場奥に客席を置き、入り口側に客席をしつらえるという体裁。扉や引き戸を使うこともできて、これはこれで奥行きのある感じ。

「恋愛~」は、野球観戦だったり、犬嫌いだったり、お互いの家に行くか彼氏と住んでいるか、身長、誕生日など徐々に共通点が見え隠れする三人。互いが気づいているかは明確には示されませんが、観客にはわりと早い段階でその背景が見えるように作られています。一人はあくまで気づかず最近ご無沙汰な女、一人はデートしている女で表情を見ていると徐々に気づく感じ。一人は同棲している女で表情が見えないけれど、後から思えばわりと早い段階で気づいている感じ。共通の男を巡る三人だけれど、三人の関係というか物語の上のでのバランスがあんまりよくなくて、むしろ二人芝居にしたほうが怖さが際だつ感じはあります。再演なのですが、登場人物を3人に絞り込んで、ずいぶん変えたようです。

「TAXI」は、少しお酒の入った深夜のタクシー、とりとめない会話。当日パンフには前回公演で好評だったキャラクタのスピンオフとあり、岡田昌也はさすがに安定を感じさせるキャラなのだけれど、今作ではそれに想いを寄せる朴訥な運転手を演じたそぎたにそぎ助が圧巻の破壊力をもっていて、この二つのキャラのぶつかり合い、それをつなぐ女を演じた小谷美裕のほどよいバランスもいい。想いを寄せて、夢やぶれて、でも未練たっぷりというまさに人生劇場をぎゅっと15分。四つの丸椅子を使って、車の向きを変えるというのは、カメラワークのようで楽しくて印象的です。

「センビキ」は、少々手強い感もある不条理劇。 呼ばれたのに何の用か訊かれる、引いている線は見えないけれど男は確かに引いているという、という具合に男二人が静かに進める不条理な会話。当日パンフでは「静かな演劇に近いスタイル」とありますが、もっともっと古典を感じさせるよう。かみ合っていなくても、相手と相手の言っていることを心の底から尊重するという会話がどれだけ豊かなことか。もっとも、芝居を見ている間は決しておもしろくて前のめりというわけではなく「後からじわじわ来る」という不思議な味わいではあるのですが。 「あなたに見えないものを説明するのは難しい」という台詞や、二人の間に引いた線が互いの間のちょうど中間で会話で二人の違いが見えてくれば線は二人に見えてくる(それが何かは語られない)という設定など、たくさんの演劇的な企みが緻密に作り込まれて濃密なのです。

「劇団F」は、劇団を巡る人々というかポジションを描きます。 俳優と作演の対立、ノリでのっかてる人、一人自己犠牲のようにつなげ続けることに優先順位がある人、恋人、泣く人、すいすいと先に行ってしまいそうになる人、お菓子とか。細かな女たちのリアリティ。いわゆる演劇のリアルかはアタシにはわからないけれど、どういう場所でもありそうな人々の関係。もうこの場所は破綻しているのに止め時を見つけられなかった人々、きっかけがせっかくあったのにこの場所を「続けていくことに落ち着いてしまう」人々という微妙な空気はある種怖いけれど、リアリティではあるのです。 ちょっと江戸っ子っぽくずれたりキメたりする松下知世がよくて、作家を演じた玉崎詩麻、役者の珠乃の対立の圧巻。

「利き酒」 女三人の兄弟、家庭の中の風景。ささいなきっかけの諍いだったり、嘘なのか自分を信じ切っているのかというほどに、ある意味くだらなくて、ある意味日々の暮らしという会話が楽しい。利き酒というわりに三つの猪口の模様が違っている(のに二人で酒を注ぐ)ことにつっこまなくていいのかとか、いくら姉妹二人だって、四合瓶からラッパ飲みというよりはコップか何か持ってくるんじゃないか、という感じなど、どこかユルユルな感じ。後者はアタシの女性に対する幻想かもしれませんが(笑)。

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