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2012.09.23

【芝居】「無差別」柿喰う客

2012.922 14:00 [CoRich]

中屋敷法仁の久しぶりの劇団新作。劇団員の出入りもあり、柿喰う客の新しい一ページとなる90分。24日まで東京芸術劇場・シアターイースト。

日本のある村、食用として珍重されている赤犬だが、捕まえ捌く人々は穢れたものとして人間として扱われなかった。生まれてきた妹を穢れさせまいと肉からは遠ざけた生活を送らせる兄。戦争が激化し国の為に働きたいと思う兄だが村人は認めず、それを受け入れさせるために山の神である大楠の神木から大枝を切り取ってくる。が、山の神は倒され、替わって手の無いカタワのモグラが山の神となっており、大楠は恨みを抱きながらもキノコに群生されるようになって...

文語っぽいしゃべり方に、山の神をまつる人々という日本古来を感じさせる舞台。食肉の屠殺に携わる人々、障碍をもつ人々、原爆による被爆者たちとさまざまに「差別されてきた」人々を濃密に組み合わせ編み上げて物語を運びます。赤犬を捌くだのと、アングラ的でもあって、いままでの柿喰う客が、薄っぺらい言葉を詰め込めるだけ詰め込むことで厚みを作ってきたのとは対照的に、一つ一つがわりとヘビーなセリフをゆっくりと語り、積み上げていくよう。

もっとも、「差別」にまつわるさまざまを取り上げ、それが現実にどこかリンクしていたとしても、それを主張はおろか問題として描くのではなく、あくまでもフィクションの世界を作る背景として使っている、という感じはします。そういう意味ではなにかのイデオロギーとは何の関係もなくて、ひたすらにフィクションを作るための道具立て。たとえば大昔の古典がたとえ現実に根ざして描かれたとしても私たちにはフィクションであるようなことだと思うのです。が、現実にリンクするとなると、なかなかそのフィクションという気持ちだけで観ることができないというのもまた観客の現実。それはなかなか難しいことだと思ったりもするのです。

重い現実を背景に据えながらも、舞台で起きることはひたすらにエンタテインメント。言葉のリズムや語感にこだわることうや身体能力に優れた役者をもっているというこれまでの特徴に加え、こういう物語を紡ぐことが、どこか野田秀樹っぽさを感じさせるという声もよくわかる気がするのです。

舞台中央に据えられた7本の柱とそれを繋ぐ横棒。ごくシンプルな装置ながら、身体能力に優れた役者たちがスピード感ではなく、どこかゆっくりとふくよかな厚みをもって時に鉄棒、時にジャングルジムといった感じで動き回り舞台の空間をきっちりと埋めていくのです。

犬殺しの兄を演じた玉置玲央、やってることの陰惨さと、妹への深い深い情愛の念が渾然となった姿きっちりと。その妹を演じた七味まゆ味の感情を感じさせない表情はどこか掘り続けている仏像を感じさせる不思議な奥行き。モグラの姫神を演じた深谷由梨香は甲高い圧倒的な声量が人ならぬ何かなのだけれど、その中の一抹の寂しがりな感じもまた魅力的に。全体に陰鬱に描かれた物語ですが、大村わたる演じるクスノキは、どこかコミカルに息を抜く緩急をつけます。

劇団員勢ぞろいとはいっても、いままで看板といってもいい役者だった役者が抜けたということの穴を感じないわけではありません。が、この役者でしかも、新しい雰囲気の新作で出発するのだという新たな船出となる一本の濃密さは相当なものだと思うのです。

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