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2012.09.10

速報→「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」マームとジプシー

2012.9.8 14:00 [CoRich]

17日まで三鷹市芸術文化センター・星のホール。ともかく早めに行って、舞台を正面から見る席を確保が必須の110分。

8月20日の午前8時。100年経った古い家が取り壊される。長女は結婚して家をでていて、その弟は地元に居て最後まで住んでいた祖母の面倒もみていたりして。末っ子の次女も東京で友達と同居していて。取り壊されるその日の朝。
解体がはじまった電話で会話をする三人。壊される現場に居るのは長男だけだったけれど、それぞれに思い浮かべる風景は、古い家が嫌だったことを話す朝だったり、友達が遊びに来た晩ご飯だったり。子供居るしな、行くのもなと会話したり、そんな時だって同居の友人との話、取り壊している家の近所の人の会話、もう別れるであろう恋人との会話があったり。

古い家の取り壊し、それをめぐる三兄弟たちを中心、近所の人、恋人、同居人などを配して、ノスタルジーを細かな繰り返しで描き出します。

前後に長細い舞台、奥は家の骨組み、小さなステージのようになっています。その手前には古い家を象徴するようにテレビが置いてあるようですが、遅く着いてしまったあたしが座った下手側一番奥からは見えません。正面から見れば、いくつか重なっている配置が効果的になるように作られているのでしょう。たとえば近所のコンビニ的な近所の人が客席に最も近くて他人の視点、少し遠いところで起きているその家の後継と後半でのズーム感、その向こう側という奥行きを効果的に作っているのだと想像するのだろうけれど、アタシが座った場所からは、そういう感じには見えずに、四つの椅子をくるくる廻る兄弟+恋人のシーケンスのダンドリ感だけが強く印象に残ります。そういう悪条件で、しかもシーケンスの繰り返しという表現が大嫌いなあたしにとってだって、後半に向かって面白い感じには思えるのだから、きっと正面からみればずいぶん印象は違うのではないかと思うのです。もっとも、たとえば序盤での語りで左右奥に顔を向ける表情、あるいは長女の後半での表情といったこの席でしか、というシーンがないわけではないのですがおまけな感は免れません。まあ、きっと増席されたおかげで観ることができたアタシは(劇団に対して)元々そういう位置だったのだ、という気もしますが。

姉妹たちの風景の朝、次女が別れると決めている恋人を演じた尾野島慎太朗の暴走する感じや、その先の物語が実に楽しい。次女を演じた吉田聡子がちょっと振り回す感じなのも嬉しい。団地に住んでてこの家が楽しい女の子を演じた召田実子とか、コンビニ的な店の嫁を演じた荻原綾の心の中の毒づきもくすりとします。場所のせいもあって、一番印象的なのは涙声のような不思議な声色を駆使して長女を演じた成田亜佑美なのです(という人は多そうですが)。

じっさいのところ、父親が倒れてもうこの玄関に戻ってこなかったこと、一人で暮らしている祖母を引き取ること、など親や祖母たちはセリフの端々には登場するものの、物語の上では登場人物たちの思い出の風景のきっかけに過ぎない感じではあります。父親が亡くなったタイミングは長女が出る前なのか後なのか、ほんの一年前に長女が引き取ると云った祖母は同居している風でもなくという具合で、シーンを描くことは重要視しても、彼らがどうなってしまったのかは描かないことの違和感があります。もっとも「おばあちゃんは、今どこに居るんだろう」という近所の人の台詞を混ぜていたりするあたり、意図的なのでしょう。背景をぼかすが如くメリハリをつけて描くということ、なのかなぁ。 真ん中あたり、また朝の風景に戻るところで、そこまでの風景をぎゅっと圧縮してみせるシーンの音がちょっと凄い。これもまた背景をぼかすような効果。

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