【芝居】「雷鳴」青年座
2012.9.23 13:30 [CoRich]
梁石日の原作を舞台化。休憩15分を含み180分。コの字型に設えられた客席、できれば正面をねらいたいところ。30日まで青年座劇場。
朝鮮全土が日本の統治下に置かれた1910年代、済州島。上流階級の娘は18歳で名家に嫁ぐが、夫はまだ10歳だった。姑には召使い同然に虐げられ、幼いまま粗暴な夫のなか従属することはなく暮らしていく。日本軍と国策会社が島に乗り込んできて土地収奪のための事業が進められ、土地を増やしたりのし上がったり、あるいは土地を失い飢餓に苦しむ。農民の怒りは頂点に達し暴動が起きる中、逃げ延びた首謀者の一人が姿を現す。
コの字型に設えられた客席、客席中央部分を出捌けに使い、客席をその家の「外側」と意識した配置の芝居。サイドだから見えないということはないのだけれど、全体に正面を想定した芝居が多いように想います。 当日パンフによれば、韓国や中国との関係が揺れる今に合わせた上演ではないといいます。このご時世ですから、意識しないわけにはいかないのですが、時代に翻弄され、社会にもまれながら懸命に生きる一人の女性の見応えのある物語であって、イデオロギーとか主張とかというこことは違うことを描こうとしています。物語の舞台となるこの時代の描き方、統治下に置いていた日本軍はもちろん恐怖と、この悲劇的な状況の原因として描かれますが、物語のフォーカスがあたるのは、そういう状況の中での韓国人同士。富める者、貧しいものあるいは地主階級同士ですらも、変化していく力関係が生まれてしまう時代をダイナミックに描くことにあるように感じられます。
嫁いだ娘を演じた椿真由美はほぼ出ずっぱり。けなげに、しかし強く生きる女の姿、終盤での愛する心の解放される一瞬が魅力にあふれます。下女を演じた佐野美幸、下男を演じた小豆畑雅一が時にコミカルに庶民をきっちりと描き出し印象を残します。巡査を演じた田中耕二は日本になびく現地の巡査を演じ、かなりヒールな役ですが、その奥行き。
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