速報→「都道府県パズル」北京蝶々
2012.9.1 19:30 [CoRich]
北京蝶々の新作。道州制の議論をする人々を通してこの国のありかたをコンパクトに描く80分。キリンバズウカの登米裕一の演出で 5日まで王子小劇場。
夏の一日、岐阜の公共施設の会議室に集められた人々。道州制に向けて一般にアピールするイベント、道州制フェスティバルのために各地から集められた人々。イベントで各地の名産を使った料理をアピールするということでこの会議はすぐに終わるはずだったのだが、そこにはデメリットはないのかという疑問や、このイベントへの想いはないのか、というコメントから早く終わるはずの会議は終わりが見えなくなってくる。
まとまらないダメな会議の典型のように始まる序盤、この場の位置づけのようなものを少々もったい付けるかんじで物語は進みます。道州制のメリットをアピールするイベント、そこには税金がつぎ込まれるけれど、その予算はまるまる広告代理店に渡ってしまうのだということ、そこには地方をどうしていくかという真剣な想いなど微塵もなくて、利権なのだということ。あるいはそういう制度の導入によって困る公務員の雇用、あるいはこれを起死回生と考えなにが何でも導入に結びつけたいのだと考える人々。地方で暮らすということ、コミュニティーのありかた、一人で暮らしていけるかということ、税金のこと、さまざまを紡いでいくのです。
一つ一つの要素はニュースだったり、時にネットや週刊誌のネタだったりということだけれど、全てではないにせよ、道州制にまつわるさまざまを、あるいは作家の思索を全てテーブルの上に出している感じです。そういう意味では見せ方も話題も地味だけれど、作家・大塩哲史が紡ぐ北京蝶々らしい感じの仕上がりなのです。
ネタバレかも
北海道が北東北に入っていたり、ちょっといびつな東北の分割を目にすれば、福島をめぐる何かが入ってくるということが想像できてしまうというのは訴えたいことはもちろんわかるけれど、エンタテインメントとして作り上げるためには脇が甘い感じがしないでもありません。かといって、もっと細分化するほどの役者の人数を支えきれる感じの物語でもありませんから、これがバランス点なのでしょう。 が、道州制に乗じるように、地名を無くしたい、と考える人がいるというのもまた真実の一つ。そういう意味では、今しか紡げない物語なわけで、これもまた北京蝶々らしいなぁと思うのです。
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