速報→「ニアニアフューチャ」あひるなんちゃら
2012.8.4 19:00 [CoRich]
あひるなんちゃらの新作。75分。アタシの観た土曜夜は、オリンピックサッカー中継の影響か街も飲み屋もがらがらな下北沢、観客も薄めらしく、客が椅子を好きな場所に置いて座っていいというホントの自由席という回。7日まで駅前劇場。常連出演者だった篠本美帆が劇団に加入し、主役としてフィーチャー。
2017年の近未来、人々は実はあんまり変わっていなかったりしている。友達どうし二人で住んでいる女たち。一人はほとんど働かずずっと家にいる。隣に住んでいる男がゴハンを食べに寄っていたり、同棲している上階のカップルが結婚をめぐるもめ事を持ち込んだりと、他人をどんどん招き入れている。実家は都内なのに、もう何年も帰っていないが、店を継いで欲しいと姉が訪ねたりしてきている。もう一人は、会社つとめはしているが、街でスカウトされて映画の主演が決まっている。同居人にはまだそれを伝えていない。
近未来になっても私たちの生活はあんまり変わらなかったり携帯にどうでもいい機能がついたりしてるけれど、この生活がずっと変わらなかったらいいのにと夢見る女の子、という感じが全編を包みます。震災にしたって経済にしたって、ずいぶん長いこと普通のことだと思っていた、「変わらない」ことがこんなにも愛おしく感じるようになったのだ、という読み方も出来ましょうが、登場人物の女の子はそういうことはおくびにもださずに、変わらないでいたい、ということをずっと思っているピュアな感じ。庭をスコップで掘って石油王(もしくは温泉)になるのだという荒唐無稽をホントに信じていそうにすら感じるというのは実はスゴいことなんじゃないかと思うのですが、篠本美帆が好演。彼女をこういう可愛らしさいっぱいの役で初めて拝見したのは、あひるなんちゃらだった気がしますので、劇団加入故かどうかフィーチャーされた今作では魅力がいっぱい。
物語に直接絡まず、舞台の外の存在として人を固定して置くのはいままでにない感じがします。観客のように突っ込む役(今作では三瓶大介)というのは数あれど、ナレータと思わせて実際のところ、そのつっこみに対する返答(つまりは作家から観客への返信)まで織り込んでいるというのはそうそうない気がします。看板・黒岩三佳を舞台上に固定し続け、いわば神の視点のようにつっこませるというのはこれはこれで冒険だと思うのですが、なんせ充実のキャストなので、実際のところこのぜいたくな布陣だってまったく問題がないのです。
ぼけ倒す役の多い物語の中で突っ込む、という役割の多くの担うのは異儀田夏葉で、時に可愛らしく、時に男らしくと魅力的。当日パンフの今後の予定のそこら中に名前があるのもうなづけるのです。カップル女を演じた松木美路子の間違ったマリッジブルーとか、混乱する感じも可愛らしく、それを受けてばかばかしいほどに真っ直ぐ向き合う根津茂尚もそれっぽい。初登場となる松本哲也、女性宅に日常のように上がり込むという怖さが目一杯。強面っぽさはあってもあくまで普通の人だからこそ怖く見えるという気もします。
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