速報→「ゴミくずちゃん可愛い 」ぬいぐるみハンター
2012.8.26 14:30 [CoRich]
疾走感溢れる物語の運び、135分飽きさせません。途中入場が難しい客席配置なので時間厳守で(開演1分前にたどり着いたアタシは人のこといえませんが)27日まで王子小劇場。
ゴミ谷と呼ばれる、ゴミの山。ここで暮らしている人々。ここで生まれる赤ん坊、あるいはここにゴミと一緒に落ちてきた赤ん坊も居て、医者、ポルノ女優、ミュージシャンなど世間から逃げてきた人々人々が育ててる。
それから14年、二人の赤ん坊は少年と少女になり、ゴミを拾って「小銭」を稼いで暮らしている。少女は肺を患い年に一度人工臓器を取り替えなければならない。少年は勉強がしたくて、学校に行くのが夢だ。少女と少年は、将来どうしようかと話し合ったりしている。
ゴミは毎日降ってくる。時には人間が混じっていて、戦場カメラマン、兵士、恋人を探す旅人などもここにやってくる。
いっぽう、画期的な建築工法で大金持ちになった男は本社の前に一人座り込んでデモを続ける男を招き入れ、損得感情ではない友人になってほしいと頼む。男はゴミ谷のキングと呼ばれた男で、数ヶ月ぶりに戻ったところに、あの大金持ちの男と秘書、用心棒が訪ねてくる。会社を辞めて、デモに参加したいのだという。
ぬいハンでは定番となった、舞台奥に客席を作る舞台は数あれど、二つの扉を開け放ち、ロビーを袖のように使う舞台の作り。ロビーと舞台を回転するように走り回ったりということが効果的に機能します。舞台はほぼ何もありませんが、真ん中に小高く丘のように地球を模した球面。
子供を描くことが巧い作家ですが、今作ではそれはほんの少し(それでもアイスクリームを金持ちにねだるランドセル少女の圧巻の造型があったりしますが)。主役となる幼なじみの男女ふたり、どちらかというとジュブナイルな世代、14歳に設定されていますが、それを単にボーイミーツガールにしないで(ま、そもそも幼なじみなのだけど)恋に至らない、もっともっとずっと淡いところの二人として描きます。
ここから先、世界がどうなっていくのかということについて、空想にしたってSFにしたってそうそう無邪気に先のことを描きづらくなった昨今、ゴミの山で暮らす人々の対立項として、建築資材の大金持ちという設定はちょっと面白い感じがします。いわゆるケイタイだのネットだのというのが出てこないというのも、ちゃんとこの世界を徹底して作っていて、何ヶ月も帰ってこないキング、というようなのが成立しているのは、「ちゃんとしている」よなぁと思うのです。 ほぼ出突っ張りで、少女を演じた浅利ねこの可愛らしさ、時にやさぐれたり、時に怖がったりとさまざまな表情は、彼女にとっての代表作になったのではないかと思います。医者を演じた江幡朋子はクールビューティの中に時折可愛らしさ。パンクミュージシャンを演じた佐賀モトキ、見た目にもあっているし、その中にある情も含めてかっこよくて、(カラダで稼いだと無邪気に報告する少女を無言で殴るところのかっこよさは痺れるし、そのあとの仲直りの茶番ぽいやりとりも楽しい)。ポルノ女優を演じた富山恵理子は、もう一役のランドセル姿のからみっぷりもあわせて、パワフルと繊細さが同居するバランスが楽しい。キングを演じた石黒淳士は、その適当っぽさが実に合ってるけれど、その芯の強さが見え隠れする感じもあっています。秘書を演じた工藤史子は、ちょっとおもちゃのような造型で役を作るけれど、細々突っ込んだり、自由に暴走したりする感じは目が離せないのです。
たとえば「柿喰う客」がメキメキと観客を伸ばしていったときのような、イキオイとそれに味方する役者たちが集ってくること、そういう感じがするのです。芝居もパワ−、スピードという感じの下敷きという点で似ていなくもないけれど、語られる物語ははっきり違っていて、また別の魅力なのです。
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