速報→「頑張ってるところ、涙もろいところ、あと全部。」ホントに、月刊根本宗子
2012.8.14 18:00 [CoRich]
「ホントに」と銘打ちながら、週末休日を中心に飛び石で毎月コンパクトな公演を打っていくという企画の2ヶ月目。40分弱。アタシの観たのは何回か設定されている根本宗子出演バージョン。26日までバー夢。これを元にしたほぼおなじ設定の動画が配信されています。
昼休みの公園、OLと待ち合わせる劇団員。二人はアイドルのライブで知り合い、話が合って、CDの発売日にお互いに買ってアイドルとのイベントに行ける抽選券を確かめるために待ち合わせている。が、OLは約束通り5枚のCDを買ったが、劇団員は1枚しか買えず。果たして一枚だけが当たる。
女性ふたリのごくごく短いコントのような物語。OLと(いわゆる)劇団員の繋がるようで繋がれない格差をコミカルに描きます。小劇場役者の貧乏と小劇場作家の書けないを描く芝居は飽きるほどあるわけですが、それをOL(というか社会人)との対比いっぽんやりで描ききる思い切りの良さがプラスに働いて楽しめる一本になっています。
テレビにでるくらいにはメジャーで、CD購入でイチゴ狩りツアーに同行できる程度にはマイナーというアイドルの追っかけという共通点を軸にしながら、片や麻布十番に勤めて阿佐ヶ谷と下北沢の区別もつかない(山手線の外側が生活圏じゃない)OLと、30過ぎてセリフも一つぐらい、スナックのバイトで生活するような小劇場女優、という、まあある種の格差。デフォルメが過ぎるという向きもあるでしょうが、この短編のこのワンアイディアで押し切ったおかげで、シンプルに。
芝居なんか観たことない、友達でもなきゃ絶対に行かないし面白かったとすら云わないという序盤のOLの切り込みがスピーディで楽しく。対してのいわゆる劇団員の方のダメさ加減は突出していて、せっかく紹介して貰ったバイトはデータ入力も、立ち仕事も受信専門のテレアポも条件は破格にいいのにことごとくできないといい、そのくせ当たり券がほしいと当然のように要求し、屈してあげるといってもまた絡む。昼休み時間でOL側には時間の制限があるのに対して、時間だけは無尽蔵にある劇団員というシチュエーションの設定もうまい。沢山買っても当たらないかもしれないCDなんかに頼るより金に物言わせて確実に入手できるオクの方が、とか20過ぎて何かを追っかけるなんてのはダメなんですよとか冴えるセリフも。
絶望的な格差だけれど、そういう生活を選んだのは彼女自身なのだ、ということがすっぽり抜け落ちているのは意図的なものなのでしょう。それを言い出したら双方切っ先が鈍って面白くなくなっちゃう気もします。
OLを演じた根本宗子は可愛らしいOLルック、巻き込まれる側のややアイドル追っかけながらも、普通の人だけれど果敢に対峙する感じがちょっとカッコイイ。対して巻き込む側の無茶ぶり劇団員を演じる梨木智香は、わがままし放題、引きずりし放題の無茶な役を高いテンションと、時空がゆがんだようにそれが正しいんじゃないかと一瞬思わせてしまう訳の分からない説得力できっちり。なんか凄い。
もっとも、OLと劇団員みたいな対比を枠にしながらも、実はなんかちょっと歪んでる人たちの罵り合いをコミカルに楽しむってことなのかもしれません。狭い世界の中で知り合うひとたち、みんなこんななのですか、みたいな感覚は多かれ少なかれあって、そこにズブズブと行くのもよし、違和感感じながらもやめられないのもよし、我慢ならないからやめるもよし、それが趣味ってものですからねぇ。
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