速報→「富裕」monophonic orchestra
2012.8.14 19:00 [CoRich]
須貝英の個人ユニット、monophonic orchestraのリーディング公演。来週の別公演の元となるリーディングと、いくつかの短編を日替わりで組み合わせて上演。15日まで新宿眼科画廊スペースO。各編の間に休憩を挟みつつ、150分。
同居している幼なじみで作家の女が姿を消したと相談してきた男。探偵の仕事として請け負った女とは以前恋人同士だった。ほどなくして作家はみつかった。探偵は依頼者への報告の前に作家と話すことにするが、作家はいったんは戻るが、やがて男との同居をやめるつもりであることを告げ、それまでは探偵の女と三人での同居生活をしたいと依頼し、探偵はそれを受けることにした。「浮遊」(90分)
長男の結婚式のスピーチに遅れてきた次男。義姉に最初に会ったときのことをコミカルに話しはじめる。遅れてきたのは式の数日前に長男がどうしても謝りたいことがあると言い出したことに始まって..「僕の兄の幸福な結婚」(永島敬三/西川康太郎)(20分)
同級生の女子高生二人。何の束縛も受けない自由落下に憧れるのだとすぐにいいだす友達に、それをしたら死ぬよ、と諭すのがお約束の毎日の二人だった。「フリーフォール」(20分)
来週に迫る公演に対して、上演回ごとに演出などいろいろ試しながら上演しているようすの「浮遊」。時折コミカルを挟みながらも、静かな語り口で、奇妙な三角関係(とはちょっと違うか)を描き出します。関係はないのに同居している男女、突然の失踪、同居をやめる意志とそれをどう伝えるかの迷い。登場人物たちはみな少々臆病な感じでもあって、自分の強い意志をそのまま伝えることに躊躇する感じが物語の静かな流れを生み出しているように思います。何でもかんでも言葉にすべきだとは思いませんが、たとえば後半で探偵の女の云うことが唐突に変わるようにみえる感じがあるのはちょっともったいない感じ。
あるいは失踪した姉を巡る妹の想い、居るべき人が居なくなる欠損感を和音のように重ねます。正直に云うと、そういう「重ねた音」に過ぎない感じはあって、やけに思わせぶりなわりに物語に直接からむ感じではないという肩すかしをくらった感じがないわけではないのですが、あとから思い出してみるとそれほど問題だというわけでもない気はします。
恋人が恋人だった時期、同居を始めるとき、現在などいくつかのシーンを行きつ戻りつ、セリフを共有してそこを軸にして切り替える感じで、スムーズなシーン転換に寄与しているものの、映像と違ってカットを割るわけにもいかず、少々わかりにくい感じがしないでもありません。 物語が静かにゆったりという語り口でもあるので、この違和感がなくせると、随分と手触りのいい物語になりそうな気がします。 安川まり、表情の伸びやかで豊かな感じ、独特の声質が気持ちをからめ取られるようでもあって印象に残ります。伊佐千明は大きな瞳、ちょっとクールな感じでもあるけれど、ちょっといたずらっぽい表情をするときのギャップ。大石憲はどこまでも女二人に翻弄されちゃう感じでちょっと可愛らしく。
「僕の兄〜」はコミカルを強く打ち出す感じ。次男一人の語りを俳優二人が演じ、その語りの中で長男になったりと役を分化するように演じるのは少々面食らいますが、ちょっとおもしろい。障がい者(劇中でのセリフに敬意を表してこの表記にしてみます)の周りの人々の想い、少々意地悪にとらえれば兄は自分を納得させたい一心で、相手のことなどお構いなし、という行動ということもできると思うのです。いい話っぽい着地だし、正直ちょっとうるっと来かけたりもするけれど、実はとても微妙なバランスの上に成立させようとしているという意味であやうい感じは残ります。
「フリー〜」はどちらかというと、佐賀モトキ演じる友人の視点で語られる、「ちょっと危うい友人について」の(作家が語る)詩のよう。自由落下について時に憧れうっとりするように喋る女を演じた安川まりはここでもその声質がプラスに働いた印象で。アタシの口の悪い友人は北京蝶々「オーシャンズカジノ」でのチャイナドレスの彼女に注目しなかった(名前は書いてるのに記憶してない..)のはどうなんだ、と云うけれど、そこ(=見た目の色っぽさや印象)とは別に、しっかりとした芝居、振り幅の豊かさが印象に残るのです。
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