速報→「教文短編演劇祭 2012(予選Aブロック)」
2012.8.18 14:00 [CoRich]
札幌市教育文化会館が主催する教文演劇フェスティバルのトリを飾る企画。20分の短編作品を上演し、観客の投票によって一位を選出します。1日目は4団体ずつの予選。公演、投票、集計、発表、コメントを含めて120分。
女はずっとたった一人で待っていた。男が全速力で息急き切って現れ、自分は一番か、と訪ねる。女は面接をしようと言い出し、愛しているのか、と訪ねる。男は面白くない、これはうまくいかないと帰ろうとするが、女は引き留める「ストラーイクッ」(オパンポン創造社・大阪)
ラブホテル、トラブルがあるのでロビーで20分ほど待つように云われた男女、あとからもう一人、中年の男がやってくる。中年の男は女の父親で「ふつうに、愛」(劇団アトリエ・札幌)
真に猛き者を選ぶためにお触れが出る戦国の世。男女も身分も問わず、この場所で勝ち残ったもの一人に何でも好きな褒美を取らせるのだという。「真猛者(マコトタケキモノ)」(Bee Hive・札幌)
宝くじの当たった老夫婦、妻は老人ホームに入ることを決心し、認知症の夫を思い出の海に誘う。宝くじが当たってからというもの、娘もヘルパーたちもみんな手のひらを返したように。ゆっくりとボケながら、上手な終局の生き方は「最後の夏」(劇団 風蝕異人街・札幌)
客席360人の公共ホール、それでもほぼ満員。客席には子供も老人も混じります。公式MCなる人も登場し、システムの紹介、幕間には劇団の紹介などもしつつ盛り上げます。なるほど、一種のお祭りなのです。終演後にはすぐに投票用紙を回収、集計結果の発表まで120分の間に納めて、後日発表とかにしなスピード感がお祭りとしてまったく正しいのです。
「ストラーイクッ」は出落ちっぽく裸で走り込む男からの序盤、5分でランシ・セイシと名乗ってしまいますから構造はあっという間にわかります。そこからその本人たちの想い(のある、なしも含めて)語ったり、スーツ姿にダメだししたり、言い合ったり。一人で待ち続ける女(35歳・ネットアイドル)の寂しさが見えたり、男(26歳・フリーター)の何も考えてなさ加減があからさまになったり。巧いなと思わせるのは序盤でノリのいい男に喋るだけ喋らせておいて、女が反撃に出るタイミングのおもしろさ。そこからは攻守がぐるぐると入れ替わり終幕にもつれ込むのです。そこで希望が費えたかにみえて、再びの希望が嬉しい。
「ふつう〜」は、ラブホテルで娘と恋人と、父親と、母親じゃない女という、まあよくあるコントの体裁なのですがただではすみません。「超高級・ラブ・ホテル」を「I Love You」にはめ込んで「超高級がホテルを愛する」というくだらない会話をやや翻訳劇のようにまわりくどく話す序盤で持って行かれるアタシ。そこから父親、女と現れ細かく笑いを刻みながら今風のちょっと軽い男女たちの話をまわしながら、ちゃんと着地すべきところに落ち着くのがたいしたもの。ボケ倒す人々にオヤジが巻き込まれ翻弄されるドタバタ感が楽しいのです。
「真猛者」はアクションが特徴だという劇団、初めてのオリジナルだといいます。いわゆる天下一的な武闘会。リングのなかでという枠をはめつつ、沢山の見せ場スピーディに作り出します。迫力があったり美しかったり、あるいは小狡さがあったりという流れ。最後に笑うのは誰か、というオチは想像の範囲内といえばそうですが、ここまでの迫力がありますから、それがすとんと落とし込まれるように腑に落ちるのは、短編でのダイナミックレンジの広さをとることの重要さ。
「最後の夏」、普段はアングラ劇を上演するという彼らの初めてのオリジナルだといいます。水着姿の若い女性が至り、ちょっと豊満な女性が西瓜を丸かじりしたりビールを飲み干したりという海辺の風景。実際のところ、ものがたりとしては、終局近い老夫婦、惚けてしまった夫に対する妻の想いがめいっぱいに溢れる、というだけのことなのだけれど、時にペーソス、時にはちゃめちゃ、という振り幅が楽しい。終幕に至っては物語をうっちゃって、ダンスで逃げ去ってしまうという思い切りも短編っぽいのです。
短編演劇といえばたとえば15minutes madeが有名ですが、こちらは劇王的なトーナメントな対バン形式。そこで優劣を付けるというのは個人的にはどうかと思いながらも、劇団が動員を増やせば投票が増える(もちろん浮気もOK)というシステムは昨今の感じでちょっと楽しいし、スピーディに開票してその場で発表してしまうという後腐れの無さもまた楽しいのです。それぞれの劇団がちゃんと20分で楽しめるもの、という作戦を練っていますが、どうしても笑いをとる方向に行きがちなのは、短編で、しかも勝負で知らない観客も巻き込むのだということを考えれば至極当然ともいえます。わかりやすいエンタメが好きなアタシはその方向は結構好きだったりするわけですが。
アタシが丸をつけたのは劇団アトリエ。オパンポン創造社は40票、劇団アトリエは72票、Bee Hiveは65票、風蝕異人街は46票で、劇団アトリエが決勝に進みます。
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