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2012.07.31

速報→組曲『回廊』」空想組曲

2012.7,28 19:00 [CoRich]

17本を120分弱に構成した芝居は、緩やかにつながったりして見応えたっぷりです。29日までOFF OFFシアター。

書けすぎちゃう作家、編集部からは10ページなのに、130ページも書いてしまう「物語のはじまり。」
子供はその人に初めて逢って知った。その次にあえるのは随分経ってからなのだ「組曲「回廊」#1(-#4)」
エロ雑誌を立ち読みする少年に、もっと物語を読んだほうがいいと勧める男「物語のすすめ。」
留守番していた女の子、今日も帰ってきた兄もまだ子供。妹にパンを、自分はお腹が空かない宇宙人なのだと云い「カミングスーン!」
(組曲「回廊」#2)
告白に対して受諾するのだという女だが、男は腑に落ちない感じで「1%ラブレター」
その暗闇に手を伸ばそうとは思うが、その先には何もないのではないかと怖い気持ちが先に立ってしまう女だが勇気を出して「暗闇に手をのばせ」
取り調べられる男、図書館司書だった男が見つけた本に書かれていたことは、その言葉が人を突き動かすのだということで「滅びの呪文」
大きな家に住む女、若い男を家政婦として雇うが「グレイス婦人の晩餐」(ゲスト・葛木英)
ファミレスの客とウエイトレス、出会わない筈の二人が出会ってしまう大活劇「ファミレス・リベンジ」
ファミレスで、勝ったら半額キャンペーン、次々と客が押し寄せて「ファミレス・ジェノサイド」
(組曲「回廊」#3)
買った「ロミオとジュリエット」を読む男、物語は早回し、しかしここで別れるのはあまりにつらいジュリエットは「ロミジュリ・オーバードライブ」
結婚してからは夫とばかり訪れていたバー、久しぶりに一人で訪れた妻。結婚する前から馴染みの店。久しぶりにあのころのゲームをしようと提案する。カクテルを一口、声が聞こえる「バーテンダー」
(組曲「回廊」#4)
作家は物語を書いている、久々に声をかけてきたのは元妻だった「物語のてほどき。」
時間軸をすれ違って来たふたり、女は子供になり、男は老いていて。しかし、そこから「物語のおわり。からのはじまり。」

書けない作家の話は数あれど、短編とはいえ、バラエティあふれる物語をアソートする感じはお得感(笑)。それはともかく、コアとなる「回廊」を背骨にしつつ、それとは直接は関係しない物語が盛りだくさんなのは、なるほど作家が圧巻のスピードで書いてるんだろうな、と思ってしまうのです。

「回廊」はいわゆるSFの風味。たとえばキャラメルボックスの「銀河旋律」や「クロノス」につながるような物語の強度があります。互いに逆行する二人、時々出会うが、またしばらく会えない想い。「回廊」は軌道のように互いに逆行しながら周回する二人の出会う瞬間ということなのでしょう。女を演じた武藤晃子が子供から初老(じゃないか、中年ぐらいか...)までを違和感なく演じられるのが圧巻だけれど、よく考えたらいくつもそういう役をやってきているわけで、それをぎゅっと圧縮するのが新鮮な感じに見せるのだろうと思うのです。「回廊」というタイトルは軌道を逆回りに周回しているということなのでしょうが、ほんの数回しか会わない、ということはどういう動きをしてるんだろう、と思ったり。(四、五回回ったら人生終了、ということか、もしかして。それは切ない(アタシにとって)。)

エロ雑誌を読みたがる少年と作家の心温まるすれ違いを描く「〜すすめ」はコミカルで気楽。貧しい兄妹の二人暮らしを童話のように描く「カミング〜」は終幕の救いが突飛だけれど、ちゃんとおもしろく。

「1%〜」は、まあ一言でいってしまえば勘違い女の迷惑な(告白されたと思いこんでるので)返事。その論理の組み立て方がむちゃくちゃでおもしろく。「暗闇に〜」は小玉久仁子のネタ的にいつものの得意技で「そろそろ若くない女の将来への不安」を描くのかと思わせて、そこから実に可愛らしくハッピーエンドにつながるオチが実に素敵。この役者でなければ出来ないということがハッピーなのは実に嬉しいのです。

「滅びの呪文」は一本だけ語り手を離れた中田顕史郎が圧巻。5行の呪いは口にしないけれど、この長い会話(語り)が呪いに着地するという物語のおもしろさと相まって、「授業」以来に凄みを。

ゲストを迎えての日替わり短編は戯曲を買えば全部ついてきたらしいのですが、一つの何かを軸にしているようです。アタシの観た28日夜の葛木英の色気のすごさ、そこに飲み込まれる若い男、という構図が実に素敵でゴシックホラーのよう。

ファミレスの二本はアクション大作の様相。「〜リベンジ」はなるほど敵討ちの斬り合いのアクション、「〜ジェノサイド」は時折ファミレスなどでイベントにされる「(ジャンケンで)勝ったら半額」という日常的な風景かと思いきや、闘って勝ったら、に着地するジャンプ力のすごさ、コミカルさも含めて楽しい。川田希と小玉久仁子のアクションが実にカッコよく。

「ロミジュリ〜」は時々みかける名作を早送りで見せる風だと思いきや、なかなかたいしたものでその枠組みから飛び出したいという感じがおもしろくて「ブリザードミュージック」(これもキャラメルだ..)を少し思い出したり。「バーテンダー」は二人の決して口にしない言葉が、彼(彼女)のカクテルを口にすれば聞こえてくるというワンアイディアがきっちりと作り込まれています。

「〜手ほどき」「〜からのはじまり」は日常に戻る風景の点描だったり、あるいはもしかしたら永遠に続く物語を紡ぐことだったりという余韻を。

この盛りだくさん感は、お得な感じなのです。時間はともかくバラエティあふれる物語を、アクションも込みできっちり仕上げているわけで、作演も含めて次ぎも観ようという気にさせるのです。

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