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2012.07.16

速報→「カナヅチ女、夜泳ぐ」悪い芝居

2012.7.15 14:00 [CoRich]

京都発の作家にしては(←アタシの偏見)エンタメに寄って見やすい125分。16日まで王子小劇場。

夜行バスに乗って、故郷に12年ぶりに戻るアタシは、実家が、潮臭い故郷が嫌で家出同然に飛び出して来たのだった。故郷のバス停で迎えてくれたのは親友で、ファミレスに寄って実家に戻ると、父も母も暖かく迎えてくれて。しかし、アタシは地元での記憶も東京での記憶も本当に曖昧で、いくつかのイベントを覚えているぐらいで、みんなぼやっとしている。

30になろうかという女の久々の帰省、地元のこと、親友のこと、恋人のことなどのこの12年をスピード感を持ちつつ、緩急をつけて走りきります。 リズムを刻みながら始まり、時に爆走し、時に飛翔するようにその物語に乗るのが実に気持ちいいのです。それがファンタジーのように着地する感じもアタシは好きなのです。 誕生の瞬間から逆行できない時間の流れを重力に引かれて落ち続けると描写します。 高揚すると身体が浮き上がるという不思議なSF風味の女、押さえてもらうために触れた男と恋をするような感覚も妙に生々しく迫ってきてどきどきしてしまうのです。時間の流れに逆らいたいと思う気持ちもまたSF風味ですが、この落ちていく感じと組み合わせ、浮き上がる瞬間をスピーディーに見せることが実に巧く効いていて、観ていてどきどきわくわくしてしまうのです。

なにも書いてない手帳、働くでもなく、真剣に打ち込むものがあるでもなく、真剣に考えない脳味噌だということが記憶を曖昧にしていくのだという中盤の何気ない台詞が、アタシ自分のことを云われているようでどきりとしてしまいます。 ファミレスで自分は何にでもなれると騒ぐバンドの若者たち、若さ固有の万能感が、28になろうというのに、何者にもなれないということの絶望に似た感覚。年齢の基準はさまざまあれど、何にでもなれると思うこと自体がが若さの特権なのだよなぁと感じて、物語の軸の一つをしっかりと感じ取れるのです。

ネタバレかも

12年目に戻ってきた女はその数年前に亡くなっている。何者にもなれなかった二人は飛び降りてしまう。あまりに軽い人生、しかし故郷を思い出し、帰れば迎えてくれる人々と土地があるということに涙するのです。

夜行高速バス新宿から、というのは小田急バスの高知線かなあと思いつつ。

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