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2012.07.31

速報→「僕と彼の彼女達」セロリの会

2012.7.29 17:00 [CoRich]

ヒロセエリのユニット、「セロリの会」の「愛と自意識の」と銘打つ新作。105分。29日まで「劇」小劇場。

土産物屋を営む家。父は亡くなり、母親は入院している。今の店主が作ったブサイクなぬいぐるみ風の人形がラッキーアイテムだとして、人気が出てきたので百貨店の担当者が扱わせて欲しいと云ってきている。あるいは店主のことが気に入ったのか、繰り返し店を訪れる客もいる。その店主の兄は連絡がとれなくなって随分経つが、いつもそういう感じなので、姉も妹も含めてだれも心配していない。
入院している母のことについて、家族会議を開くべく店主、姉、妹が集まるが、なぜか沢山の見知らぬ女が押し掛ける。みな兄の恋人だと云うが、誰も連絡が取れないので、家族会議を聞きつけて行方不明の兄が姿を現すのではないかと集まったのだ

ここに居ない男を巡る女たちの愛憎劇と、真っ直ぐに生きるその弟が彼女たちにもみくちゃにされる様子をコミカルに描きます。修羅場と云えば修羅場だけれど、肝心の本人が居ませんから、自ずと彼女たちの関係、もっといえば彼女たち自身それぞれを自問自答するような禅問答という様相を呈する気もします。迷惑な客にしても、お願いにあがる百貨店担当者にしても、元カノ、若い女、元妻などみな彼のことが好きでたまらず、ここに集うのです。

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速報→「MY SWEET BOOTLEG」MU

2012.7.29 14:00 [CoRich]

ソニーミュージックのすぐ隣で二次創作の物語というロケーションの妙が絶品な80分。開演前には役者や劇団のフリーマーケットも。バー(フード・ドリンクすべて500円。ゆで卵だけが唐突に100円で物語に繋がって楽しい)があるので観劇しながらの飲食も可能なCOREDO乃木坂で31日まで。

客の入らない喫茶店。常連客は硬派の時代物を連載している漫画家。バイトの女はBL指向のオタクで、友人と同人誌を出している。その妹はリア充だが、かわいいのに目を付けてコスプレさせてコミケで同人誌の売り上げを上げようと画策する。漫画家は同人作家に反感を持っているが、この店でたまたま出会ってしまう。反感を持ちながらも、妹のかわいさやマスターの薦めもあって許すことにする。
まだ超人気作となる前の原作だったが、同人誌の人気は急速に上がっていく。同人誌での描かれ方の暴走っぷりに不安を覚えた漫画家は物語を最初の予定とは異なる方向に変えていくが、それは物語を混乱させる。

ホンモノと二次創作の間のあれこれ。本作で取り上げられたプロの漫画と同人誌の関係は、ここでは語られないものの、サンプリングや動画サイトなどのあれこれに繋がりそうな広がりを持つ話題なのですが、今作での描き方は漫画・同人誌に特に顕著な微妙な関係を濃縮して見せて楽しませるのです。

取り上げてもらったら(同人誌のBLだとしても)嬉しいんじゃないかという見方もありましょうが、少なくとも本人(と編集などを含めた出版社)として振り絞るように作り出した作品を、ただ乗りというよりは、作品の世界を蹂躙されることの不安を物語の萌芽として描きます。クリエータは評判が気になるものだけれど、百歩譲って評判までは見ることにしたとしても、そこを踏み超えて物語世界を蹂躙されるようなことは、(クリエータ自身にとっても)「無視」するべきなのだ、という作家の云うことは腑に落ちるのです。今作では「無視」ですが、喧嘩をするでも取り込むでも、迷い無く関わり合う、ということの毅然をプロの側の矜恃(の反面教師)として描きます。

クリエータ自身よりは、むしろ編集や出版といった領域の人々にとって、クリエータの弱みと強みがどう見えるかはわかりません(アタシはどちらでもないし)。でも、クリエータが作品の世間での扱われ方をどう考え感じるのかという一種の教科書にはなる気がするのです。

ハセガワアユムという作家は、どうにも滅び行く方向に物語を持って行きたがる傾向があると思うのですが、これが今作にはプラスに働いているように思うのです。

全てのチケットにはA3両面2枚のシナリオ(戯曲)が付いてきます。作家に訊けば小規模だから成立するとはいいますが、芝居を観たあとにお土産として帰路で読むことを、という心意気が実に素敵なのです。もっとも、アタシの友人が云うように、鍵を預か った妹が不審者を店の中に置いたまま出て行ってしまうのか、というアラがあるのがわかっちゃうのはご愛敬。

漫画家を演じた古屋敷悠は硬派から軟派を見せつつも、思想がある(という当日パンフの説明)を臣事させる説得力。マスターを演じた吉岡そんれいは微妙で描き方の難しい人物をきちんと作り上げます。ヲタ女子(姉)を演じた大久保ちかの目の合わせなさの(二次元に閉じこもるような)絶妙、バイトのヲタ女子を演じた両角葉は三次元というもう一歩先に進んでいるのに、たぶん同じ雰囲気になっているという奥行き。妹を演じた鈴木由里のそれぞれの衣装だったり、様々の表情だったりを通して可愛らしいということの説得力があるのです。

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速報→組曲『回廊』」空想組曲

2012.7,28 19:00 [CoRich]

17本を120分弱に構成した芝居は、緩やかにつながったりして見応えたっぷりです。29日までOFF OFFシアター。

書けすぎちゃう作家、編集部からは10ページなのに、130ページも書いてしまう「物語のはじまり。」
子供はその人に初めて逢って知った。その次にあえるのは随分経ってからなのだ「組曲「回廊」#1(-#4)」
エロ雑誌を立ち読みする少年に、もっと物語を読んだほうがいいと勧める男「物語のすすめ。」
留守番していた女の子、今日も帰ってきた兄もまだ子供。妹にパンを、自分はお腹が空かない宇宙人なのだと云い「カミングスーン!」
(組曲「回廊」#2)
告白に対して受諾するのだという女だが、男は腑に落ちない感じで「1%ラブレター」
その暗闇に手を伸ばそうとは思うが、その先には何もないのではないかと怖い気持ちが先に立ってしまう女だが勇気を出して「暗闇に手をのばせ」
取り調べられる男、図書館司書だった男が見つけた本に書かれていたことは、その言葉が人を突き動かすのだということで「滅びの呪文」
大きな家に住む女、若い男を家政婦として雇うが「グレイス婦人の晩餐」(ゲスト・葛木英)
ファミレスの客とウエイトレス、出会わない筈の二人が出会ってしまう大活劇「ファミレス・リベンジ」
ファミレスで、勝ったら半額キャンペーン、次々と客が押し寄せて「ファミレス・ジェノサイド」
(組曲「回廊」#3)
買った「ロミオとジュリエット」を読む男、物語は早回し、しかしここで別れるのはあまりにつらいジュリエットは「ロミジュリ・オーバードライブ」
結婚してからは夫とばかり訪れていたバー、久しぶりに一人で訪れた妻。結婚する前から馴染みの店。久しぶりにあのころのゲームをしようと提案する。カクテルを一口、声が聞こえる「バーテンダー」
(組曲「回廊」#4)
作家は物語を書いている、久々に声をかけてきたのは元妻だった「物語のてほどき。」
時間軸をすれ違って来たふたり、女は子供になり、男は老いていて。しかし、そこから「物語のおわり。からのはじまり。」

書けない作家の話は数あれど、短編とはいえ、バラエティあふれる物語をアソートする感じはお得感(笑)。それはともかく、コアとなる「回廊」を背骨にしつつ、それとは直接は関係しない物語が盛りだくさんなのは、なるほど作家が圧巻のスピードで書いてるんだろうな、と思ってしまうのです。

「回廊」はいわゆるSFの風味。たとえばキャラメルボックスの「銀河旋律」や「クロノス」につながるような物語の強度があります。互いに逆行する二人、時々出会うが、またしばらく会えない想い。「回廊」は軌道のように互いに逆行しながら周回する二人の出会う瞬間ということなのでしょう。女を演じた武藤晃子が子供から初老(じゃないか、中年ぐらいか...)までを違和感なく演じられるのが圧巻だけれど、よく考えたらいくつもそういう役をやってきているわけで、それをぎゅっと圧縮するのが新鮮な感じに見せるのだろうと思うのです。「回廊」というタイトルは軌道を逆回りに周回しているということなのでしょうが、ほんの数回しか会わない、ということはどういう動きをしてるんだろう、と思ったり。(四、五回回ったら人生終了、ということか、もしかして。それは切ない(アタシにとって)。)

エロ雑誌を読みたがる少年と作家の心温まるすれ違いを描く「〜すすめ」はコミカルで気楽。貧しい兄妹の二人暮らしを童話のように描く「カミング〜」は終幕の救いが突飛だけれど、ちゃんとおもしろく。

「1%〜」は、まあ一言でいってしまえば勘違い女の迷惑な(告白されたと思いこんでるので)返事。その論理の組み立て方がむちゃくちゃでおもしろく。「暗闇に〜」は小玉久仁子のネタ的にいつものの得意技で「そろそろ若くない女の将来への不安」を描くのかと思わせて、そこから実に可愛らしくハッピーエンドにつながるオチが実に素敵。この役者でなければ出来ないということがハッピーなのは実に嬉しいのです。

「滅びの呪文」は一本だけ語り手を離れた中田顕史郎が圧巻。5行の呪いは口にしないけれど、この長い会話(語り)が呪いに着地するという物語のおもしろさと相まって、「授業」以来に凄みを。

ゲストを迎えての日替わり短編は戯曲を買えば全部ついてきたらしいのですが、一つの何かを軸にしているようです。アタシの観た28日夜の葛木英の色気のすごさ、そこに飲み込まれる若い男、という構図が実に素敵でゴシックホラーのよう。

ファミレスの二本はアクション大作の様相。「〜リベンジ」はなるほど敵討ちの斬り合いのアクション、「〜ジェノサイド」は時折ファミレスなどでイベントにされる「(ジャンケンで)勝ったら半額」という日常的な風景かと思いきや、闘って勝ったら、に着地するジャンプ力のすごさ、コミカルさも含めて楽しい。川田希と小玉久仁子のアクションが実にカッコよく。

「ロミジュリ〜」は時々みかける名作を早送りで見せる風だと思いきや、なかなかたいしたものでその枠組みから飛び出したいという感じがおもしろくて「ブリザードミュージック」(これもキャラメルだ..)を少し思い出したり。「バーテンダー」は二人の決して口にしない言葉が、彼(彼女)のカクテルを口にすれば聞こえてくるというワンアイディアがきっちりと作り込まれています。

「〜手ほどき」「〜からのはじまり」は日常に戻る風景の点描だったり、あるいはもしかしたら永遠に続く物語を紡ぐことだったりという余韻を。

この盛りだくさん感は、お得な感じなのです。時間はともかくバラエティあふれる物語を、アクションも込みできっちり仕上げているわけで、作演も含めて次ぎも観ようという気にさせるのです。

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速報→「黛(まゆずみ)さん、現る!」ナカゴー

2012.7.28 15:00 [CoRich]

ナカゴーの新作。30日まで王子小劇場。100分。

高校の同級生・カツミショウコが心配だからと、久々に待ち合わせて会いに行く女たち。あのころはずいぶん変わっていたけれど、久々にあってみれば、そう悪くはないみたい。知らなかったけれど、劇団で女優やっていたみたい。問題だと思っていたことは既に解決していて、安堵したところに、サプライズのもう一人の客が。びっくりして喜んだりもしたけれど、ふとしたきっかけで、カツミショウコは昔のことを思い出して。

物語は書き出してみれば、こういう感じなのだけれど、実際のところ、物語そのものは、そう大したものではありません。久しぶりの友達のこと、心配すること、近況の報告、びっくりすること、知らなかったこと。日常を切り取るように点描していきます。中盤で大笑わせな感じの最後の一人が登場すると、物語はわりとどうでもよくなって、わちゃわちゃした感じになります。終盤に至り、切っ掛けからの不安定、更に大立ち回りのように暴れ回ります。正直にいえば、病んだというか、ベクトルがなぜか一つになってしまった集団の中で、ひとり抗うことの怖さということを感じさせる展開なのだけれど、そこで物語がそれに対して何かを云うわけではないし、そのシーンがやけに長くリピートすることで、多数派がなぜそこに拘泥するのかが、(長さ故に)説得力を失う感がありあす。あるいは、作家自身が役者たちには興味があっても、物語に興味がないのではないか、とも感じてしまうのです。

甘粕阿紗子は可愛らしさ、露出の多さの眼福、所々で見せるフテ顔(最後の女の登場から、陰でずっとしている)や、ブサイクな表情など、あれこれ楽しく。墨井鯨子は終盤での圧巻、そこに至るまでにある種めんどくさい感じをきちんと作り上げるので、終盤で彼女の立ち位置が変わらない、自己を信用する強さの説得力を生みます。菊池明明は、はちゃめちゃで居続けなければいけないという意味では難しい役ですが、すらりとしてむしろ宝塚の男役のような雰囲気がこの嘘っぽい世界をそれでいいと思わせるのです。

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2012.07.23

速報→「マニマニ」ドリームダン

2012.7.21 19:30 [CoRich]

ドリームダンの新作は、多彩なキャストも魅力の105分。22日までシアターKASSAI。

妹が住んでいる家に姉が4回目のバツをつけて出戻った。結婚紹介所への登録はずいぶん妥協し、自分の情報はちょっと盛って、次を探している。妹も縁遠く、自分の頭の中の妄想で遊ぶのが好きで、ブラピ似の男が好みだったりする。データ入力のバイトをしているが、同僚たちも一癖、ふた癖。その同僚たち、44歳の軽口な独身男、腰の低い若者、なんか空気読めない感じのいい年の男。同僚の女は寂しくて男とゴハンしたり、家に連れ込んだりしているが、どうも長続きしていないようで寂しさのあまり犬を飼ったりしている。
ある日、若くてちょっとカッコいい男の子がバイトに入ってくる。実は元アイドルの息子で、母親の付き人の目が届いていたりする。ちょっといいな、と感じるけれど、何か踏み出したりはできない。

いい年した男女たちの、恋愛事情だったり、今更の独立心だったりと大人になりきれない人々のちょっとみっともないコミカル。が、ドリダンはきれいな着地などしません。急転直下のアクション活劇お色気つきにパワフルに突進していくのです。バカ芝居といえばそうなのだけど、一癖ふた癖な役者たちのめいっぱいというのは観ていても清々しい。しかし、そのはちゃめちゃな展開の中でも、芯にあるのは乙女な心ってのもちょっと心憎く。

45歳で初婚でアルバイトってどうなの、なんていう台詞、まあアルバイトではないけれど、いたたた、とアタシにも突き刺さります。あるいは空気読めない微妙な図々しさ、化粧バッチリな女の豹変、スーツ姿ならまだしもカジュアル服の容赦ないダメだしなど、少々底意地の悪い作家の観察眼がしっかり。

妹を演じた菊池美里は、妄想に内心ほくそ笑む、ちょっとぎこちない女の子、ナチュラルに本当に巧くてぴったりとはまりこみます。姉を演じた小林さやかは青年座じゃあり得ないがっつりコミカル、それにしても変わらず可愛らしく、バツ四との落差が楽しい。45歳アルバイトを演じた安東桂吾は飄々とした軽さがちょっとカッコいい。舘智子の役はあんまりといえばあんまりだけれど、痛々しくなりすぎないパワフル肉食女子っぽく清々しいほど。球乃のサービスショットな眼福。

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速報→「少女教育」シンクロ少女

2012.7.21 14:00 [CoRich]

23日まで王子小劇場。115分。

妊娠した女子高生、結婚して産みたいと意志を告げた男は、11年つきあった別の女と別れることができず、結局逃げ出してしまう。
女は教師となってから再会した妻子ある恩師に時折逢っている。愚痴を吐き出したり、慰めて貰うことに心地よさを感じている。女はわりと男と軽く寝たりするような女だったが、部屋を頻繁に訪れる男気溢れるまっすぐな男とはどうしてもつきあう気になれなかった。 同じ名前の女、小説家になりたいと思っているがまだ芽が出ない。同じサークルで最近頻繁に部屋を訪れる男もまた小説家志望で、兄と住んでいるがその束縛に嫌気がさしている。男は女に言い寄るが、まだ男とつきあったことがなくて、どうしていいか戸惑っている。

舞台に三カ所の場所を設定。タオ、という同じ名を持つ二人の女性の軸に進む物語。一人は男と縁がなく、ひとりは男と軽く寝てしまうという対照的な二人。どちらも「一番好きな人は居なくなってしまう」という母親の口癖で育ったのに、男との恋愛の関わり方を両極端に描くことで、「同じ育ち方」のはずなのに、些細な違いでどちらにもなってしまうのだ、ということをシンメトリに描きます。

兄弟、あるいは同性同士の憧れ、愚痴を言い合う関係、親子、年下の同性を守りたいと思う気持ち。メインのカップルたちだけではなくて、いろんな種類の「愛」を細かに織り込んでいくのは濃密で奥行きを感じます。結果的に、いままでのシンクロ少女より、刺激という点では抑えめなのだけれど、その分、作家のもつ愛情とか想いに対するシンプルで純粋な部分が見えるようになった気がします。

正直にいえば、左右に別れた二人のタオは、どちらかといえば内側に居て、舞台の両端を向いた芝居が多くて、表情が見える席が少ないのがちょっと残念といえば残念。

タオを演じた松本みゆきは、美しくしかしどこか達観したような感じ。とはいえ、アタシの席からは前述のように表情が見えづらく残念。もう一人のタオを演じた名嘉友美は、少々メンドクサく複雑に考えすぎて恋愛に踏み込まない女、一転恋の甘露に落ちたかわいらしさ。「弱くなった気がする」という台詞もとても気が利いていて印象に残ります。 少々荒っぽいけれどまっすぐな男を演じた中田麦平は、ありそうで意外に少ない今どきな造型が成功していて、魅力的です。11年連れ添ったという37歳を演じた木村キリコは、実年齢よりはずいぶん上じゃないかと思うのだけれど、寂しさと力強さをを併せ持つ奥行きの深さが感じられて魅力的。

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2012.07.18

速報→「涼~すずみ~水」BoroBon企画+あやめ十八番

2012.7.16 13:00 [CoRich]

水下きよしのユニット、BoroBon企画に、先日旗揚げのayame十八番。19日まで絵空箱。80分+休憩15分+55分で計160分ほど。

恋人に消費者金融のカードが見つかり責め立てられる男が話したのは、ちょっとややこしくて嫌な気分になる話だった。久しぶりに電話してきた元カノはやたらにポジティブに変わっていて妙だった。家に押し掛けてきて泊めてくれといい、一夜を伴にする。女は大学もやめてしまったが、資金を貯めて一年で映画を撮るのだと夢を語る「Love Portion #9」(あやめ十八番 作・演出 堀越涼)
列車に乗り旅をする夫婦がボックスシートに座っている。とりとめのない話、やがて若い女も席にやってきて「阿房列車」(BoroBon 作 平田オリザ 演出 水下きよし)

「Love〜」は堀越涼の一人語りの体裁で自分の過去の話だと語りつつ、久しぶりに電話してきた女から始まるのは現代のちょっと怖い世話物っぽい仕上がり。怖いほどポジティブな彼女の秘密は、「Love Portion #9」なる秘密めいた薬にまつわる「権利収入」の道への誘い。いわば友人との関係を金に変えるというネットワークビジネスと即効性のある謎の媚薬、あるいは美人の女ってものに対する男の脆さという怖い話をリアリティたっぷりに描くのにはぐいぐいと引き込まれて面白いのです。 あくまで現代劇なのだけれど、どこか世話物というか歌舞伎めいたものを感じるのがおもしろい。もうこのまま大学の入学オリエンテーションで上演したらいいんじゃないかと思うぐらいに、今どきの若者がハマりそうなさまざまが濃密に描き込まれているのです。

何度も上演されている「阿房列車」ですが、アタシは初めて拝見します。取り留めがないというか脈略がなくてとびまわる夫婦の会話。日常ではなく、かといって大イベントというわけでもない、ちょっと離れた娘の婚家に出かけるという、日常から少しだけ浮き上がったシチュエーションで、しかしずっと一緒にいるしかなくて、でも車窓がそう珍しいわけではないという飽きがきているシチュエーションに、新たに出会ったなぞめいた若い女との会話というのが実にいいのです。もっとも「写真の現像」なんて言葉にちょっと時代を感じなくはありませんが、それもまた味。じっさいのところ、何か物語が進んだかとか、登場人物たちに何か成長があるのかとかいう意味ではもう全く何もなくて、平田オリザの芝居によく挟まる何気ない会話で全編になったとでもいいましょうか。

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2012.07.16

速報→「リ・メンバー」ジェットラグ

2012.7.15 19:00 [CoRich]

去年3月ゲネ直前の震災によって上演延期となった公演が再集結。125分。17日までシアターサンモール。

プロゴルファーと女優の夫婦。妻の留守の隙に愛人を家に連れ込んだものの、妻は旅行に出かけず帰宅してしまう。妻の旅行相手は若い男で彼も家に来てしまう。家政婦の女が両方の嘘がばれないように立ち回るが、浮気相手の夫と名乗る男が現れ、スキャンダルを表沙汰にしてほしくなければ誓約書にサインをするように迫られ、サインをしてしまう。
これは一年がかりで仕込まれた詐欺グループの仕業だった。数年前に一度集まったものの失敗し、解散してしまったグループが、メンバーの女が結婚を機に引退するために、昔の仲間でもう一度成功させたいと考えて集結させたのだ。が、妻が夫を刺殺してしまうという予想外の事態に、詐欺で表沙汰にならないはずだった金は一転、殺人事件に絡んだ金になってしまい、動揺が広がる。

一度は解散したメンバーが再び集結するという意味では、座組の人々にとっても微妙に重なる想い。ちょっと特別な意味が出てしまった感もある一本。前半はシチュエーションコメディっぽく、入れ替わり立ち替わりの話。後半は一転して詐欺を主体にしたコン・ゲームっぽく物語が変化し、そこから更に友情や想いといったものに物語は着地します。

正直に云うとアタシは今一つノレなかった感があります。シチュエーションコメディとコンゲームと人々の想いというハイブリッドな構成の目指しているものは理解できるものの、この座組ならコメディーはもっと爆笑編を期待してしまうし、コンゲームを描くこの作演ならもっとキレを期待してしまうけれど、アタシにとっては今一つ不発な感があります。 たとえばコメディーでの移動するドアとクローゼットを扉一つの裏表というのは結果的にスピードを殺いでいてしまってもったいない(マネージャーの登場シーンで自ら押してくるってのはちょっとおもしろい)気もしますし、詐欺当日の前日譚と直後の話の前後関係が最初に見えづらいのも惜しい。 もっとも、日頃わりと手厳しい人も含めてアタシの友人たちはそれなりに楽しんだとも聞くので、まあ、アタシの虫の居所だけの問題かもしれません。

鈴木歩己演じるゴルファーの怪しく女好きな感じとその奥の実直さ、妻を演じた佐々木なふみの開き直った余裕しゃくしゃくな感じ、弁護士を演じた永山智啓もまた怪しさと妙な余裕が印象に残ります。須貝英演じたマネージャーの実直で用意周到な感じも説得力。清水那保を舞台で拝見するのはずいぶん久しぶりな感じもしますが、衣装も含めて(笑)、戻ってきたことを素直に喜びたいところ。浮気相手の女を演じた映美くららは確かになびいてしまいそうな説得力。

小劇場の人気のある役者で脇を固めつつも、ジャニーズ系、宝塚系、仮面ライダー系という若い役者たちを主に据えた商業演劇的なキャスティングを小劇場っぽい公演形態でというのが主催するジェットラグの一つの特徴ですし、こういうクロスオーバーが生み出す人の繋がりは結果的にはきっと意味のあることなのでしょう。が、たとえば土日夜に設定された役者全員のトークショーでことさらに特定の役者を持ち上げるように見えてしまったり、バラエティ番組の雛壇よろしく楽屋で話せばいいような話題を、これまた意味不明なMCを芸人(彼女には何の罪もないけれど)が勤めるというのは、まあマスコミっぽいといえばそうだけれど、主催者の目指すもののがなぁ。

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速報→「保母、処女」ホントに月刊 根本宗子

2012.7.15 17:00 [CoRich]

月刊、と銘打ちながらいままでは毎月公演になっていなかった根本宗子が、「ホントに〜」と打ち出して毎月の公演をする連続企画の第一弾。アタシが観たのはダブルキャストのうちAチームです。35分弱。飛び石で週末だけの公演で29日まで、「バー・夢」(四谷三丁目)。

保育園の保母たち。お遊戯会の演目を決める相談のために朝早く集まっているが、なかなか決まらない。いつものように遅刻してまだ現れていない同僚のことを嘘を平気でついて男といちゃついているのだろうと厳しく云っている保母自身はまだ男とつきあったことがない。それに同調しているもう一人、本当は。

バーといいながらテーブルがいくつかという不思議な空間。三人の女のバランスオブパワーというか、女の嘘の裏側のぐちゃぐちゃだったり面倒くささだったりということを楽しむのが吉。根本宗子は、なるほどこういうライトな面倒くささを描くと実に巧いのです。

嘘が平気、甘いものが切れると不安になる、職場の変化でのキャラ変など、それぞれの弱みというか歪んだ感じ、三竦みになるぐらいのバランスが欲しいところだけれど、この時間のなかでは難しいかもしれません。 厳しく当たる女を演じた片桐はづきはまじめな感じの説得力ゆえにいらつくことの違和感がなく。飴が手放せない女を演じた前園あかりは可愛らしく、しかし苛つく感じもしっかり。遅刻する女を演じた尾崎桃子は絵に描いたようにまわりを苛つかせる言動がすごいけれど、彼女側の理由が(またそれが今の雰囲気なのだけど)描き込まれているのが物語を一方的にせず奥行きを感じます。

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速報→「カナヅチ女、夜泳ぐ」悪い芝居

2012.7.15 14:00 [CoRich]

京都発の作家にしては(←アタシの偏見)エンタメに寄って見やすい125分。16日まで王子小劇場。

夜行バスに乗って、故郷に12年ぶりに戻るアタシは、実家が、潮臭い故郷が嫌で家出同然に飛び出して来たのだった。故郷のバス停で迎えてくれたのは親友で、ファミレスに寄って実家に戻ると、父も母も暖かく迎えてくれて。しかし、アタシは地元での記憶も東京での記憶も本当に曖昧で、いくつかのイベントを覚えているぐらいで、みんなぼやっとしている。

30になろうかという女の久々の帰省、地元のこと、親友のこと、恋人のことなどのこの12年をスピード感を持ちつつ、緩急をつけて走りきります。 リズムを刻みながら始まり、時に爆走し、時に飛翔するようにその物語に乗るのが実に気持ちいいのです。それがファンタジーのように着地する感じもアタシは好きなのです。 誕生の瞬間から逆行できない時間の流れを重力に引かれて落ち続けると描写します。 高揚すると身体が浮き上がるという不思議なSF風味の女、押さえてもらうために触れた男と恋をするような感覚も妙に生々しく迫ってきてどきどきしてしまうのです。時間の流れに逆らいたいと思う気持ちもまたSF風味ですが、この落ちていく感じと組み合わせ、浮き上がる瞬間をスピーディーに見せることが実に巧く効いていて、観ていてどきどきわくわくしてしまうのです。

なにも書いてない手帳、働くでもなく、真剣に打ち込むものがあるでもなく、真剣に考えない脳味噌だということが記憶を曖昧にしていくのだという中盤の何気ない台詞が、アタシ自分のことを云われているようでどきりとしてしまいます。 ファミレスで自分は何にでもなれると騒ぐバンドの若者たち、若さ固有の万能感が、28になろうというのに、何者にもなれないということの絶望に似た感覚。年齢の基準はさまざまあれど、何にでもなれると思うこと自体がが若さの特権なのだよなぁと感じて、物語の軸の一つをしっかりと感じ取れるのです。

ネタバレかも

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2012.07.15

速報→「ふすまとぐち」野の上

2012.7.14 19:30 [CoRich]

劇団旗揚げ作で青森、北海道、三重を経て東京まで四都市を回るツアー。初演からキャストを一部変えて上演。16日までプロトシアター。

初演の時の嫁をやっていたのは乗田夏子でした。パワフルで強烈な津軽弁が印象的でした。再演でも登場予定でしたが、降板により嫁を演じたのは三上晴佳(舞台でメガネかけてないのは初めて拝見した気がする)です。
あのパワフルさと比べてしまうと、体も細いし若い彼女には、初演の好評ということも含めて相当なプレッシャーだったと思うのですが、彼女の役者としての新しい側面を見せてくれたようにおもうのです。素早く動き回る、ちょっと可愛らしい感じという意味で別の役者が別の成立のさせ方ができるというのも(当たり前なのだけど)驚きなのです。

★ネタバレ★

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速報→「ともだちのそうしき」RONNIE ROCKET

2012.7.14 14:00 [CoRich]

芝居として上演( 1, 2)したものを、今年に入ってリーディングとしてさまざまな役者の組み合わせでワンステージという企画公演の三回目。アタシはリーディングになって初めて拝見します。16日まで大吉カフェ、85分。

葬式、離れの部屋で寝ている女を写真に納めるもう一人の女。互いに故人の親友だと話して、お互いの思い出をかたるけれども、どう考えても同一人物とは思えない。

男×男バージョンで初演されたものが、女×女、男×女というバリエーションに。全体の物語は変わらないはずです。となれば、役者を変えて観るということは、物語の流れは知った上で役者のキャラクタだったりテンションだったりを楽しむということなのでしょう。もっとも、記憶力がザルなアタシは、わりと何回観ても新鮮に物語を楽しんじゃうんですが(泣)。

リーディングらしく、役者の動きはほとんどなくて、場の説明やト書きがワイヤレスマイクによって語られます。純粋に二人の物語としてきちんと閉じるやり方で巧いと思います。

初日は、ザネリ(10代の親友)×渡辺詩子(20代からの親友)。声を張り上げ、暴れ回るように演じるザネリ、抑えていく詩子。決して役に固定された関係ではなくて、さまざまに演じられているようです。
前半で互いにとっての彼女の思い出を語るシーンがそれぞれに。話して、合いの手を入れてというリズムは、アタシが観た印象では漫才のようでもあります。ああ、こういうリズムの作り方もあるのだなというのはちょっと新鮮です。

物語としては、わりとうっちゃるオチではあります。でも、それが弱点にならないというのはギュッと濃縮されたライブ感ということなのかもしれません。

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速報→「天日坊」まつもと大歌舞伎

2012.7.12 18:00 [CoRich]

東京ではコクーン歌舞伎として演じられた演目を松竹制作として、まつもと市民芸術館・主ホールでの一週間の公演。210分。18日まで。ロビーまではチケットが無くても入れる縁日横町や大道芸のイベント。15日午前には松本の登城行列、ふれあい座という街中の練り歩きが予定されています。

帝の飼い猫に憑りついていた化け猫を退治した北条時貞は傾城・高窓太夫を身請けし、と修験者・観音院は三百両を褒美として受け取る。帰宅後の酒盛りの最中、飛び込んできた巡礼姿の娘と懇ろになろうと観音院は弟子・法策らを追い出すが、娘は女盗賊・人丸お六で三百両を目当てに殺されてしまう。追い出された法策は飯炊きのお三婆さんの家で、お三の娘が頼朝公の子を産んだもののすぐに母子ともに死んでしまったこと、その落胤の印があることを知る。同じ年であることも知る法策は、お三を殺して、頼朝公の落胤になりすますことにする。逃げる途中で法策の身代わりとして殺した旅人が高窓太夫の弟で、金の無心にやってきたことを知る。

歌舞伎を観るのはずいぶん久しぶりです。宮藤官九郎の台詞は現代の若者たちの言葉に。数少ないチャンスが来ればのし上がろうと考え、実行して、更に罪を重ねていくという感覚は一回りして今の私たちの感覚に近くなった気がします。

串田和美による演出は、シンプルに動き回る小さな舞台を縦横に組み合わせながら進みます。まつもとでは市民キャストを加え、トランペットを使う演出を少し変えているようです。

あたしが好きなのは、船の上でのあれこれの人情から海に飛び込み古寺のあたりのシーン。古寺で大声でガサツにやってみたり、おまえは誰だ、オレだというあたりのオカシさが楽しくて、少しばかり芝居の根幹を感じさせたりします。あるいは終幕近く、詮議の場での 台詞をあえてカブらせて、余地を残さないことの緊迫感。これ、タイミングがそうとう難しい気がしますが、オフビートになったり、リズムに乗ったり、崩したりという感じがまたちょっとカッコいいのです。

コクーン歌舞伎としては次世代の役者を主に据えているようです。 六代目の勘九郎は遠目にみれば声や発声が似ていることもあって、仙台かとみまごうばかり。しっかりきちんと演じきるのです。何者でもない男がどんどん豹変していくことの怖さやその気持ちを細やかに描くのです。
七之助はまあ、びっくりするぐらいに可愛らしく登場し、そこからびっくりの女盗賊への豹変の格好良さ、終幕での立ち回りが本当に美しくていつまでも観ていたいのです。現代の若者っぽい微妙なガサツさというのもまた落差で可愛らしく。
観音院を演じた真那胡敬二はその強欲さが人間らしくほほえましい。 久助を演じた白井晃、のんびりした感じの前半、終幕近くでの詮議の場の緊迫感をしっかり。中村獅童は地雷太郎のまっすぐで少しばかりガサツな感じが

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2012.07.10

速報→「錯惑の機序、或いはn質点系の自由度 The Slight Light Like Sleight of Hand.」まごころ18番勝負

2012.7.8 [CoRich]

アタシは初見です。本格ミステリを謳う110分。8日まで王子小劇場。

船でしか訪れられない離島。かつて脱出マジックの事故で表舞台から姿を消したマジシャンが復活をかけて招待客の前に現れ、脱出・移動のマジックを披露しようとするが、それは失敗し、首が落とされた死体が発見される。台風が近づく中、警察もやってこられない中、これは事故ではなく殺されたのではないかとということになる。アシスタントの一人はかつての事故で死亡したアシスタントの妹であるために疑われ、この部屋に一人軟禁されるが、翌朝死体で発見される。

二回の殺人、更に過去の事故で死んだ一人を加えて三人の死にまつわる物語。ミステリとしての出来がいいのかどうか、あまりこの分野明るくないのでわからないけれど、コミカルな部分はほとんどなくても、きっちり見せ続ける力があります。

もっとも、整形だの双子だのを持ち出して、最初に死んだのは誰で、それはどうして起こったのかということを終盤にいたってかき混ぜるような感じなのは、動機の複雑さを描く為に必要なのだとは思いつつも、じっさいのところ、文字を読み直すことの出来ない舞台では混乱するばかり。そのわりに物語に強い力を与えるわけでもなく、終幕に至って持ち出しても、すっきりした感じがしないのはもったいない感じがします。

劇中の舞台と客席、私たちからは劇中の客席が見えづらいのは、実際のところ台詞さえ聞こえれば大きな問題ではないのだけれど、見えないというだけでストレスを感じてしまうのが観客というものなので、ちょっとばかり残念。もっとも舞台に角度をつけて斜めから見せるようにしたりしないのは、舞台の上で起こるマジックを誠実に見せようとする作演の真面目さとも感じるのです。

千秋楽では役者の紹介がありました。この手の芝居で当日パンフに役名との対比で書けないのも誠実さと思いますが、まあ、観客は誰がどの役かは知りたい気もします。 ゲストのマジシャンを演じた大久保藍子は声の独特さと見惚れる美しさで人前にでる仕事という説得力。探偵を演じた川原元幸、医者を演じた榊原仁はしっかりと物語を転がす力。所長を演じたゆきをは、主宰ゆえのちょっとオイしすぎる役という感はあれども、飴を舐め続けながらユルい口調で鋭いことを云うというのは探偵らしくていい雰囲気です。

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2012.07.09

速報→「ワンダフル・ワールド」フライングステージ

2012.7.8 14:00 [CoRich]

フライングステージの新作。110分。8日まで駅前劇場。

東北の田舎で暮らす男。酒蔵の三人兄弟の長男だがゲイであることをカミングアウトして父親に勘当されている。勘当から10年の間、実家には一度も近づいていない。望んでいた映画の仕事にはつけず、震災後はボランティアで現地の子供たちの支援をしている。実家の酒蔵は津波に流され従業員の実家に避難しているが、祖母が住まわせて欲しいと訪れ、続けて結婚した次男の妻もやってくる。
大家の息子もゲイで、震災したセクシャルマイノリティを支えるためのパーティをこの家でやりたいといい、ゲイたちが集まるようになる。

カミングアウトによって実家と10年間ずっと切れていた長男、震災直後に無事であることは確かめたものの、津波で何もかも失った実家。母親も祖母も兄弟たちも、これを機会に戻ってきてほしい気持ち。 彼らが描きつづけるゲイの問題は扱いつつも、実家、跡取り、子供のこと、震災のことを交えつつ丁寧に丁寧に、王道を描いているという印象があります。

さすがに劇中の効果音であっても地震速報の警告音を聴くとやはり気持ちは揺れます。震災地でのセクシャルマイノリティー、何もかも失ってしまった人々、鉄道、避難所、ペット、被災地支援、放射線の被害、こどものこと、食べ物のことをとりまぜ、今の私たちの物語という背景を作ります。

とりわけ、次男と嫁と妊娠、この物語の中、跡取りなどの問題に震災後の気持ちの揺れている人々がいるという現実。悲しいけれどなかったことにしよう、と中絶の説得に対して、悲しいこと作ってどうするのだ、という台詞は重いのです。これ以外にも場面も意味合いも異なりつつ、「なかったことにする」という台詞が何カ所かあって、ここに作家のメッセージを感じるのです。

長男の住んでいるここで行われるゲイのパーティで、次男と三男が出会うというすれ違いのシチュエーションコメディ。そこですべてが明かされるというシーンだけれど、楽しい感じがここに挟まるのもいいリズムなのです。

東北の言葉がふんだんに。とりわけ祖母を演じた藤あゆみ、母を演じた石関準の(トーホグ者ではないアタシには)言葉の自然さは、東北に住む家族という物語の根幹に説得力を与えます。長男を演じた大地泰仁は意固地になる主人公をしっかりと演じきり、その恋人を演じた岸本啓孝の軽くオネエの入ったゲイっぽさが語り口を軽やかにします。作演を兼ねて大家を演じる関根信一はオバちゃんキャラで笑いもとったりしつつ。次男の妻を演じた木村佐都美は、女性として妊娠する女という役をしっかりと背負うのです。

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速報→「夏カフェ『夏いろいろ』」(Bパート)桃唄309+KUUM17

2012.7.7 19:30 [CoRich]

桃唄+KUUM17によるカフェ公演のBパートは賑やかで楽しさ一杯の60分。8日まで中野RAFT。

両親は出かけてしまった。兄妹は家で留守番、夜中までわくわくと騒ぐ予定。近所のおじさんも訪れたりする。家の外から様子を窺っているのは赤い袋をさげた髭の男だが「ヒゲの訪問者」
ドライブに出かけることにしたカップル。二人きりの筈だったけれど姪っ子が乗っている。それどころか途中からヒッチハイクや呼ばれるように乗ってくる女たち。しっくりこないといって、北へ北へと行くことになる。実家住まいで厳しい彼女はそろそろ帰れなくなる。「海へ」

「ヒゲの~」はあの狭い舞台にぎゅっと子供が嬉しい感じに詰め込んだ濃縮感。両親が居ない家で留守番する兄妹の盛り上がり具合、お菓子がたくさんあって、ゲームだっていつまでも出来て。そこにもう一人近所のおじさんは兄の誕生日を祝いに来ていてパーティ。もう一人の訪問者は泥棒だけど、見つかってついた言い訳は長男が忘れられない死んだ飼い犬に化けるという荒技に持ち込むのが素敵なのです。

「海へ」は彼女とドライブする男、気がつけば後ろの席に親戚の女、それからヒッチハイクなどいろいろな人々を乗せて北へひた走るドライブの距離が楽しいロードムービー風。その人々に見守られつつ、長い時間のドライブで親密になっていく、というデートムービー的でもあります。終演後のトークショーによれば東北を描きながら、震災とは何の関係もない物語を描く試みなのだといいます。 男の子を演じた佐藤達がちょっとカッコイイ。野中希の演じる彼女の可愛らしこと。姪っ子を演じたまりあも今っぽい感じ。

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速報→「夏カフェ『夏いろいろ』」(Cパート)桃唄309

2012.7.7 17:30 [CoRich]

桃唄309がコアとなるカフェ公演、夏バージョン。Cパートは二作とも桃唄の作家・長谷基弘による合計60分。8日まで中野RAFT。アルコール含めたドリンクの販売、東北への寄付にするというケーキなどの販売も。

男二人が三流旅館で相部屋になっている。布団も浴衣も二組あるのに、なぜか枕と帯はひとつしかない。その一つを手に入れようとする二人「相部屋」
家には父が居て、長男が居て、弟の嫁が居る。大量の砂、家を掃除しなければ大変なことになる。父は頑張らなければと思い長男にも弟の嫁にも厳しく接する。北から来た砂はこの街を飲み込もうとしている。それなのに北風には草木のにおいが混じるといって北へ旅立った人々は帰ってこない「夏の庭そうじ」。

前回と同様に、カフェ仕立てで飲みながら食べながら観られる気楽な作り。

「相部屋」は、ものすごく久し振りに役者をやったという作家と今や桃唄の看板役者のガチンコバトルを楽しむ芝居。他人との相部屋を頼まれるということも不条理ならば、布団も浴衣も二組あるのに枕と帯は一組しかなくてそれを他人と争うことになるという着想が面白いのです。じっさいのところ、プロットをもとにはしているものの、役者に任されている部分も多そうです。

「夏の~」は、滅び行く世界を舞台にしたSF風味。嫁と舅と義兄という家族かどうかの微妙な距離感だけれど同居しなくてはならなくなった設定が巧い。こういう時だから頑張らなければと思う舅、口うるささに嫌気がさしつつある嫁まではよくある構図ですが、そこに夫ではなくて義兄というのも面白い。愛情を介在させずに、どうするかという決断の流れ。

終演後には佐藤達による紙芝居。ずいぶん久しぶりに (1, 2, 3)拝見しましたが、まさかの展開、スペクタクルにびっくりするのです。

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2012.07.07

速報→「Heavenly Bento」post theater

2012.7.7 15:00 [CoRich]

ソニー創業者の二人の物語をベルリンで舞台化した90分を、英語字幕で日本初上演。8日まで青山円形劇場。( 動画あり )

井深大と盛田昭夫、天上で再会した旧友が振り返る過去は、戦時中に研究者として出会い、戦後の焼け野原から会社を興し、テープレコーダで初めて製品を世に出し、トランジスタラジオで世の中を席巻する。ラジオの販売にあたり社名を変え、しかし大きな商談を、自社ブランドで売れないことを理由に断る盛田昭夫、トランジスタ特許取得のために渡米し、その後ラジオの販売のためにアメリカに住むようになった盛田昭夫は、アメリカ市場に強く憧れを抱く。いっぽうの井深大はカラーテレビでほかの企業が使わない新方式に拘り、難産の末トリニトロンを生み出し世界を席巻する。

ソニーの社史 に乗るような「正史」っぽいようなエピソードをつなげて作り上げる物語。そういう意味で新鮮な解釈や物語がある、というわけではありません。スポンサーにはなっていても、会社自らが社史としてつくるならともかく、公演としてこの物語を作ろうとした原動力がどこにあるのだろうかというのが興味深いのです。

舞台の床面は大きなスクリーンに。ときに車座に座る人々だったり、時にテープを作るために紙をカミソリで細長く切って磁性体を塗ったり、時にテレビの画面だったり、トランジスタラジオの回路図(まあ、回路図自体は無茶苦茶なのはご愛敬)だったりとさまざまにインスタレーションのように使われるのがメディアアートっぽい雰囲気。最先端という感じでは無い気もしますがこの内容にはよく合っています。

正直にいえば、テープレコーダ、ラジオ、トリニトロンという彼らを象徴するテクノロジの華々しさは、現在となってはそれは確実に過去の技術だということゆえに、過去を感じさせるということは皮肉を感じさせずにはいられません。現在のライフスタイルにつながるウオークマンは単語としては登場しつつも物語として描かなかったこと(それは技術ゆえの商品ではなかったという背景にしても)は演出の妙で、過去のできごと、ということを強く意識させるのです。

舞台まわり、小さな椅子に座るソニーの 社服 をきた人々。彼らが観客なのか社員のボランティアなのかはわからないけれど、まあ、アタシとしてはちょっと気持ちは揺れるのです。その前にしつらえられた小さな白い箱、小さな箱にギュッと濃縮した製品を作るということの「成功体験」をコンパクトにあらわす「Bento」という言葉をタイトルに選ぶというのも日本人には思いつかない感じではあります。終幕に明かされる「弁当箱」の中身、公演紹介のサイトには「ココナッツミルクと寒天」との記載がありますが、日本公演ではまさしく「日の丸弁当」に。ここに特別な意図があるかどうかはわかりません。

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2012.07.05

速報→「サンタどん」ハムプロジェクト

2012.7.4 19:30 [CoRich]

全国47カ所をワゴン一台で(役者は交代しながら)廻る企画。北海道から仙台、新潟を経て松本(信濃ギャラリー)には初登場だと云います。翌日には名古屋で公演、そのあと名古屋、金沢、福井、富山、浜松、東京、千葉守男か、青森、北海道数カ所、鳥取、広島、福岡、長崎、熊本、鹿児島、宮崎、山口、北九州、香川、松山、兵庫、岡山、京都で最終地大阪は10月の予定。90分。芝居は二本用意されていますが、おそらく役者の入れ替えなどによってどちらか一本が上演されます。

2020年、公務員にはテレビカードが支給されているが、庶民には入手難という時代。
小2の少女、ノエルは警官の兄と二人暮らしだが、魔女になるのだと信じて呪文の練習をしている。このままの世界では幸せになれないから、大人は信用できないから、クワズイモを緑のモンスターに育てて、みんな破壊して、私の幸せを手に入れるのだと信じている。
学校にはアンドロイ子先生。ある日、町に紙芝居「大泥棒サンタどん」で巡業している姉弟がやってくる。弟ガジュマルは学校に勝手に入り込み、ノエルと出会う。平和なはずの町では、テレビカードの盗難事件が相次いでいて、大騒ぎになっている。

小さな蔵を改装した劇場、20人ほどの観客(建て込まれた舞台なのでこれでもほぼ満員)。いままで見たことないぐらいにパネル、パイプを使って建て込みます。もちろん、これもハイエースで運んできたのだといいます。音響操作卓(音楽はiPodから)も、照明卓(コンセントとスイッチが並ぶだけという手作り感満載が楽しい)も舞台上で役者が操作します。役者の収まる場所が作ってあって、そこにもそれぞれスイッチがあって、ONの状態とOFFの状態を作ります。

オープニングに役者を揃え、少々騒がしい感じで始まり、ハイエースで廻ってるとか、役者が何役もやるとか、説明をいれつつ、開演。終演後には演奏があって、ガソリン代のために物販や寄付が欲しいとちゃんと云って、きちんと締めて。観客全員に交流会(いわゆる小屋打ち上げ)を呼びかける。絵に描いたように旅廻りの公演形態で、きちんと観客を楽しませようという意識を感じます。きちんと祝祭感があって、旅廻りという雰囲気が満点なのも嬉しい。

芝居の作りは全体にガチャガチャしていて、決してスマートではありません。しかし、妄想気味少女と他からやってきた少年の出会い、恋心。あるいは町の駐在とアンドロイド先生(だんだんネジが外れてばらまく描写が面白い)の恋物語っぽいこと。終盤で大人になっての再会の場面と、見所はたくさん。徐々に物語に引き込まれます。子供の頃の自分は何でもできるのだという万能感が存分にちりばめられた主人公の少女の気持ち、なんかちょっと思い出したり。

少女を演じた大澤恵衣はコミュニケーション下手っぽいけれど、万能感をまとってる感じで役に説得力。少年を演じた木山正太は(交流会によれば)新人だといいますが、なかなかどうして、可愛らしく。この「まちめぐり企画」の隊長だという天野ジロ(この企画の前からいくつも旅公演をしているといいます)は前説から物語を支えるいくつもの役をしっかりと。兄を演じた彦素由幸も物語をきっちり支える確かな力(しかもドライバーも兼ねているようです)。アンドロイ子先生を演じた飛世早哉香も新人だといますが、もちろん遜色なく、美人なのも見ていて楽しく(いや、女優みんな魅力的なんですが)

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2012.07.04

速報→「浮游するへや」れんげでこはん

2012.7.1 16:00 [CoRich]

1日まで信濃ギャラリー(松本)。そのあと8.25に岡谷(CLUB THE MONKEY)、9.15-16に長野(ネオンホール)、10.13に飯田(CANVAS)という長野県横断ツアーが予定されています。会場の大きさに合わせてキャストを変更すると発表しています。

優秀らしいが研究が行き詰まり窮地に陥った研究者が呼び出したのは、高校の時の放送部の先輩だった。実験を受けて欲しいと頼む。実験は人の深層心理に入り込み、診断する人と心に浮かんだことを共有することができるという機器の実証だった。

インタビュー記事によれば、長野県内ツアー公演というのは松本でも珍しいのだといいます。信濃ギャラリーという小さな劇場で、ほぼ素舞台だけでというのも彼らにとっては初めての経験のようです。なるほどポータブルで名刺代わりという感じで何処にも持って行けるという雰囲気のコンパクトな仕上がり。

正直にいえば、物語の運びには少々荒削りな感じが残ります。60分という時間は、ワンアイディアで押し通すには少々長いし、バラエティ豊かにあれもこれも詰め込むには少々尺が足りません。 核となる高校の時に刺さった一本の骨、いまば彼女自身の想いのなのだという骨格の物語は広がりがありそうです。が、優秀な研究者がなぜ彼女を呼び出すに至ったか、このカップルのことを今更知りたいとと思ったのだということとか、あるいは単なる苦し紛れに思いついたことなのかということが今ひとつ腑に落ちない感じは残ります。

3回の実験の最初はほぼ物語とは関係ないのだけれど、馬渡理子が演じる猫ってのがまた実に秀逸に目が離せなくて、これをぼーっと観ていたい気もするのだけれど、まあ、このコンパクトな物語のなかでそれをすべきなのかどうかは痛し痒しなところ。

とはいえ、ミニマルな雰囲気で、月イチペースで、おそらくは雰囲気もキャパもずいぶん異なる公演を重ねていくことで、芝居の雰囲気がどんどん変わっていくという予感を感じさせます。

人間に興味があるとは思えない優秀な女と過去に囚われたままにこの歳になってしまった女の再会と、それにまつわる過去の出来事との対峙という物語の枠組み。優秀な研究者を演じた小澤鮎美は、人間に興味がないカウンセラーという無茶ぶりな役を凛としてしっかり。呼び出される先輩を演じた馬渡理子、地味で少しおっとりな雰囲気の可愛らしさの中に見える陰と力強さが圧巻に面白い。高校の時の先輩を演じた加藤吉はまっすぐさが前面に。新人だという市川しをりは、コミカルにかき回す雰囲気ですがなかなかどうして、堂々たるもの。

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速報→「記憶、或いは辺境」風琴工房

2012.6.30 19:00 [CoRich]

アタシは初見です。劇団として20周年、過去全作品掲載の記念パンフも嬉しいのです。決して楽しい物語ではないけれど、それを超えて純粋なラブストーリー、120分。8日までシアターKASSAI。

太平洋戦争、終戦間近の樺太。三人兄妹でやっている日本人の床屋。厳しい炭坑労働や売春宿に連れてこられた朝鮮人たちも何かの偶然でこの店を訪れるが、この店の長女は分け隔てなく接する。
終戦を迎え、殺伐とした混乱の中、この店を再び訪れる。日本人の引き上げは始まったが、連れてこられた朝鮮人たちは戻ることができないで居たのだ。

※作家が当日パンフで書いているとおり、この地域や人々をどう呼ぶかということについてアタシもこれでよい、ということばが見つかりません。本稿は作家と同様の「朝鮮」で統一して書くことにします、作家の判断に載っかるだけというのは少々心苦しいのですが。

扱いの難しい史実を借景しながらも、社会派と云われることの多い作家が描く物語は、実にピュアなラブストリーに着地します。思っていても言えないこと、云う決断、与えられた中でも懸命に生きる人々。 物腰柔らかに感じられる北海道弁、男に髪を触られるということの色気、床屋の椅子と鋏、櫛、タオルというシンプルさが全体として周到に作り込まれていることに後から気づきます。

終盤での朝鮮人の男と、床屋の家族の長女のシーンが圧巻です。恋する心、どきどきする心、近くにありたいということ、それが許されないという悲しさがぎゅっと濃密に作り込まれています。演じた津留崎夏子が圧巻。巧い役者ですが、いままでは軽やかさが身上で何かに抗うような強い意志を持たないのが持ち味という印象でした。前半こそその軽さが存分に発揮されますが、後半は一転、こんなにも豊かで情愛に溢れ、強い意思を持つ女を演じ切ったことに驚くのです。相手役になる朝鮮人の男、配役交代をものともせずに演じた金成均の低い落ち着いた声の格好良さったらないのです。

店主を演じた伊原農は、コミカルで前半のリズム、この場所が皆にとって心地いい場所ということの説得力。その中で遊ぶようにコロコロと笑い、まっすぐに演じる浅野千鶴、さすがにセーラー服という年齢ではないけれど、可愛らしくて納得してしまいます。その友達を演じた香西佳耶も可愛らしくいとおしい。警官を演じた岡本篤、まっすぐで時代に翻弄される役をしっかり。結果としてヒールですが、おそらくはこれがこの時代のニュートラルな感覚なのでしょう。

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速報→「恥知られたら恥ずかしい(嫁と姑と息子編)」ガレキの太鼓

2012.6.30 16:40 [CoRich]

嫁姑といえば深刻になりがちなのに、どこかほんわかした感じも漂う55分。7月3日まで都内某所(品川のマンション)。

夫を亡くし一年が経つ姑。近所に住む息子の共働き夫妻のマンションに日中やってきて、家事をあれこれして、晩ご飯を食べて帰る毎日。一人の家が寂しいのだろうと思って云わずにいたけれど、嫁にも姑にもそれぞれいいたいことがあって。

結婚してないアタシには、もうこの枠組み自体が実在の物とは思えないファンタジーなのですが、それにしても、きっとどこかにはありそうな感じの説得力。それぞれに遠慮して云いたいことを云えない感じがリアリティを持っています。これを嫁姑の戦争というよくある安っぽい物語に持って行かないのが、作家の一工夫を感じます。

寂しさなのだという思いやる気持ち、それは理解した上で不満に想う気持ち、あるいはこうしたいと思う気持ち。それを息子(夫)の少々強引なファシリテーションで「見える化」するというのはちょっとびっくりな展開です。もっとも、それが一発解決というすっきり感はなくて、ああ、そういう悩みだよねぇ、きっとという共感こそが今作の強みに思えます。

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速報→「恥知られたら恥ずかしい(ガールズパジャマパーティ編)」ガレキの太鼓

2012.6.30 15:30 [CoRich]

コミカルも満載で4本のなかで一番気楽に楽しめる一本。7月3日まで都内某所(品川のマンション)。55分。

父親となった男の部屋。実家に戻り子供を産んでいた妻が戻ってこようかという日、妻が勤めていた店のキャバ嬢たちも集まり、妻を待つ間にビールで乾杯している。

キャバクラで働いていた女とできちゃった結婚した男、そのキャバクラで働いていた女、今そこで働いている女。それぞれのキャラクタは明確です。結婚を決心した人(でもそれは男というのがちょっと面白い)、仕事に生きると決めている人、幸せになりたい出会いたいと望んでいる人。職業やそういうキャラクタを小出しに見せる作家の手腕や、自然な会話としてきっちり説得力を持って見せる役者のちからを楽しむのが吉。

実際のところ、会話は他愛もないものが脈略なく繋がります。奥さんが居ない間に浮気してないかとか、太ったかどうかとか、子供のDQNネームのこととか、男の自己中加減とか、結婚、仕事、女友達。物語としてこれらを観るよりは、そういうとりとめのない会話をのぞき見てる、という感覚こそがゾクゾクと面白い感じなのです。

男を演じた海老根理は、少々軽い感じはあっても、女性が話しやすくて実際には真面目な雰囲気をまとい、ガールズパジャマパーティ枠なのにちゃんとはみ出さずおさまる感じ。現役キャバ嬢を演じた小瀧万梨子はほんとうに美しく、キャバ嬢にはキツイ年齢という設定だとしても、ああきっちり稼いでるのだろうなぁという説得力。ある種の姉御肌っぽさもちょっと雰囲気にあっています。元キャバ嬢を演じる舘そらみ、座った席が失敗してほぼ評定が観られなかったのが残念。なんだろう、幸せになりたーい、という類いの台詞を云わせると圧巻の説得力を感じてしまうのです(ものすごく失礼な感想ですが)。

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速報→「恥知られたら恥ずかしい(バイオレンスラブ編)」ガレキの太鼓

2012.6.30 14:20 [CoRich]

のぞきみ公演の中の一本。コミカル要素皆無の55分は少々キツイ気もします。7月3日まで都内某所(品川のマンション)。

子供に手をあげて入院させてしまった母親は泣いて謝るばかり。父親は強く責め、しかし今からならまだやり直せると説得しようとするが。

今回のラインナップの中では唯一コミカル要素がまったくない一本。怒号と鳴き声という印象だけが強く残ります、なぜ我が子に手を上げてしまうのか、なぜ母親はそこまで追い込まれてしまったのかを丁寧になぞります。実際のところ、世間のニュースやドキュメンタリーで云われているような現在の夫婦のあり方をなぞるようではあって、物語として新しい見方や考えが示されるわけではないように思います

夫が拘っていること、妻が拘っていることの食い違い。なすすべのない絶望的な気持ちゆえか、責め立てる夫の序盤、なだめるように妹が冷静さを持つ中盤、終盤にいたって、拘泥していることからほんの一歩踏み出すことで、ほんのわずかな光明は見えた気もしますが、観客はかなりもやもやしたままで放り出される感があります。

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2012.07.03

速報→「恥知られたら恥ずかしい(さよならカップル編)」ガレキの太鼓

2012.6.30 13:10 [CoRich]

ガレキの太鼓が「覗き見公演」と銘打つ人気企画。7月3日まで都内某所(品川駅にほど近いマンション)。55分。今回観た4本の中で一本を選べと言われれば、アタシはこれを選びます。

別れを決めて引っ越しの準備をするカップルの小さなワンルーム。長いつきあいだけに、何をどちらに分けるかで迷うものも多々。女はきっぱりと二度と会わないと決心はしているのだが、どうにも気持ちは揺れている。

一緒に他人と暮らしたことのないアタシ(泣)にはこの枠組み自体がファンタジーだったりしますが、一緒に暮らした日々に寄り添っていたもの、そこに込められてしまった想いをカジュアルにしかし丁寧に描きます。テレビやベッドという共有していたものをどうするか。値が張るから欲しいもの、値が張ってもあんまり欲しくないものということを「魂の」ということで描き始める序盤はきっと別れたカップルあるあるなんでしょう。中盤では貰った服や下着はどうするか、という命題のあれこれ。貰ったことを大切に想う気持ち、特に女性の側は少女のようで可愛らしく描かれて、きゅんとなるのです。終盤に至りラスボス的に登場する、プリントした写真をどうするかということ、そこから明かされる別れの事実。

じっさいのところ、作家が描こうとしてるのは、別れるという前提の元で会話する男女の濃密な会話という気がします。きっぱりと別れようと決心したのは女の側だということが再三示されますが、それでも男への想い断ち切りがたく、グラグラと揺れ動き、いっぽ足を踏み外せば元サヤになりそうな圧巻のアドベンチャーが繰り広げられるワンルームに、手に汗握るパワーゲームを楽しむアタシなのです。

男を演じた萬洲通擴はどこまでもニュートラルと余裕。ある種暴れる女の側を、ことさらに押さえつけるでもなく、あるがままで向き合うのが格好いいのです。云ってみれば壁打ちをする側の女を演じた岩崎アイは、時に上から、時に可愛らしく、ダイナミックレンジの幅の広さが圧巻です。終盤のコスチュームもどきどきとして眼福なのです。

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