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2012.06.04

速報→「キツネの嫁入り」青☆組

2012.6.2 15:00 [CoRich]

作家・吉田小夏のテイスト溢れる110分。3日までアゴラ劇場。

過疎に悩む村。さらに女性がどんどん減って、ついに村長の妻が紅一点となる。妻の一周忌を迎えた男のもとに、縁談が持ち込まれる。山に住む狐を嫁として迎えないかというのだ。狐の嫁は尽くすのだといわれている。やってきたのは母にも妻にも雰囲気の似ている「椿」という狐だった。

昔話、という始まりだけれど、よく聞くと「むかしの、みらいの話」と台詞に混ぜてあるという序盤。 狐が嫁入り、という舞台を選んだがための、化けてみたりとちょっとしたSF仕立て、SFをそう読む世代じゃないと思うのだけれど、女性の作家がこういう物語を書き続けているのは嬉しいのです。 単にその設定に留まらず、作演は細部のリアリティと誇張を巧くつかった演出で物語に深みを与えます。近所に住む女たちの会話、想い、恨み、喧嘩の絶妙の距離感。あるいは恨んだ瞬間に化け物になるかという勢いや、色香に男が惑わされる感じ、彼女の真剣もしっかり。魔物に取り込まれないということは男の生き様なのだというある種の教訓も、昔話のテイストといえて、一貫しています。

ネタバレかも

狐を使うというのは巧い発想で、化けたりする感じ、キャストを巧く使い回せたり、ちょっとしたびっくり感やコミカルさもあって、わかりやすく、しかしそれが巧く物語の奥行きを作る感じもあって、面白いのです。 小舟にのった骸骨という、ホラーめいた描写も、ふるさとを思う気持ちはあっても、それでも男に言い寄るというような一種の醜悪さのようなものも含めてむき出しの女を描きます。そういう意味では、嫉妬でおかしくなる村長の妻というの一瞬の怖さもまた、むき出しの女の姿。

福寿奈央演じる狐の一途な可愛らしさ、高橋智子演じる儚い美しさの前妻、村長の妻を演じた大西玲子の淑やかさと秘めた嫉妬の気持ち、東澤有香演じる奔放な女の色気と醜悪さをあわせもつ迫力と、印象に残る女優陣。もちろん俳優たちもそうなんだけれど、やっぱ女優に目が行ってしまうオヤジなアタシです。

かつての工場跡、というのは、金属の、という台詞がありますから今の私たちに身近になってしまった原発を直接に扱うわけではないけれど、人間が扱いきれなくなったもの、それが何世代にも渡ってコミュニティも人間たちもじわじわと壊していくという感じ(みらいの、という序盤の台詞が効きます)。怖いと思うのは大切なことだ、という台詞も、何気ないけれど、印象的です。

さらにもう一歩引いて、「星」という視点、時間軸も視野もずっと広がって見える終幕の広大さ。この村の物語からズームアウトしていくような感じはとても印象と余韻を残します。

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