速報→「Goodnight」競泳水着
2012.6.23 14:30 [CoRich]
王子小劇場の、佐藤左吉演劇祭2012のオープニング企画。キャッシュバックマラソンはすべての演目の有料観劇が条件ですが、まずはこれを観ることから始まる100分。7月2日まで。
個人経営のレストラン。開店直後こそ繁盛したものの、5年が経って客足は遠のいており、銀行からの借金の返済も厳しい状態になっている。開店当時はオーナーシェフの弟がホールを取り仕切っていたことも人気の原因だったが、店の方針の意見が食い違い、弟は店を辞めて別の店のオーナーになっている。
ある日、アルバイト店員の一人が勤め先の転勤で北海道に行くことになった。送別会を貸し切りで開くことになり、店のスタッフのほか、彼女の友人たち、店に寄りつかなかった弟や久しぶりの妹も集まることになる。そろそろスタートの時間だが...
瀧川英次の出演ゆえか、どことなく、P.E.C.T後半の名作「最初の晩餐」の風味。口数少ないが、店に想いのあるオーナー、喧嘩の絶えない兄弟、元の恋人、スタッフたちのそれぞれを交えて群像劇っぽい仕上がり。セットは美しく、今風のお洒落なレストランなのに、調理も食事も酒を飲むシーンすらない、という作り方はちょっとおもしろい。閉店後というよくあるシチュエーションではなくて、レストランに集まってるのに飲み食いしないというシチュエーションを少々強引にでも作り出すのもまた楽しい。
同じ系統の仕事である飲食業を選んだ兄弟、それゆえに喧嘩もするし、別の道を歩むことになる二人、久しぶりの再会のぎこちなさ、しかし心配する気持ち、口を出したくなる気持ちの絶妙の距離感。あるいは元カレ元カノだったり想いを寄せた男女たち。あのとき、こうしてくれていたら/こうしていたらまた違うようになっていたかもしれないのに、ということの取り返しのつかない感じの終幕の余韻が実にいいのです。
正直に云えば、コメディなのかドラマなのかという点で語り口が定まらない感じは残ります。 全体の物語はひたすらに優しくて、食い足りなさを感じる向きもあるかもしれません。作家が病気を経験した、ということと関係するかはわかりませんが、兄弟だって、スタッフだって、場違いな友人たちだって、空気を読めないということはあっても、悪意は微塵もありません。けれど、各々が自分の生き様をどうしていくか考えること、その真摯で真剣に向き合う気持ちが、この店の中を満たすのです。
無口な兄を演じた竹井亮介、商売ができる弟を演じた瀧川英次、妹を演じた岡田あがさ、という豪華なキャストが安心感。シェフを演じた黒木絵美花は美しく凛として目が離せません。あるいは去っていくスタッフを演じた川村紗也が実に可愛らしくしかし芯の強さも印象的です。
いっぽうで、物語に直接絡むというよりは、コメディパートという感のある役も楽しく。たとえば距離感の妙な友人を演じた阿久澤菜々、銀行員を演じた大川翔子(足の細さにビックリする)、あるいは博士と呼ばれる男を演じる菅野貴夫も広い意味ではそうなのだけれど、少々やりすぎなぐらいにデフォルメしても物語が壊れないという意味で、見かけや雰囲気に反して物語はなかなかの強度があるのです。
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