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2012.06.11

速報→「42分堕ちたら地球の裏側です。」実体験オムニバス公演プロデュースユニット モロモロ

2012.6.9 14:00 [CoRich]

60分、とのアナウンスですが交通機関の遅れに対応して開演20分遅れの15:25終演。10日まで東中野レンタルスペース。信頼する友人にアタシは好きそうだ、と云われて(笑)

21歳、はじめてバイトを始めた女。仕事も意志疎通もいまひとつ、それななのに仕事がどんどん降ってくる「疫病神」(体験者/島口綾)
せっかく理学療法士、芝居の学校の卒業公演のために辞めることにしたけれど、フリーターになることを母親に報告しづらくて「事後報告」(体験者/吉田みずほ)
大学生の女友達4人で集まってあるDVDをみる会、他愛もない話の会なんだけど、ちょっと不穏な空気が流れるけれど「FLOWER & SNAKE」(体験者/安達可奈)
女の友情なんて薄っぺらくて嫌いだという主宰に、私の女友達を侮辱するようで許せない「がーるずとーく」(体験者/長菜々美)

主宰の野崎百合香を演出とし、それ以外の役者たちそれぞれのちょっとした体験をスケッチ。それぞれは他愛もない日常だし、突飛なことが起きたりもしないし、ある種類型的かもしれないけれど、彼女たち自身の感じる違和感というかひっかかりを感じたこと、きっと年齢や立場や世間が変わってしまえば、綺麗に忘れてしまいそうなほどに些細なことを描き出すのは瑞々しいというのとはちょっと違う気もするけれど、等身大を描いた今作は、まあ、アタシの好みなのです。

登場する役者たちは、正直、とりわけ美人というわけでも突出した強いキャラクタという感じでもなく、良くも悪くもごく普通の(もしかしたら冴えない、失礼..)女の子たちなのです。彼女たち自身の物語はそれぞれのキャラクタをバックに持つものだけれど、彼女たち自身の不器用さも含め愛おしいと思う気持ちにあふれた描き方、それが作によるのか、演出の力かはよくわからないんだけど、それこそが彼女たちの持ち味という気がします。

「疫病神」、不器用そうでほわんとした雰囲気の島口綾のバイトの風景、その不器用さゆえに面倒を呼び込んでしまいそうだということ、同僚も半ばあきれながらも合わせるけれど、やっぱどこか腹立たしく思ってたり。これを本当に彼女自身が書いたのだとすると恐るべき客観視なんだけど、彼女のいる空間は、まるで磁場かのように、こういう感じになってしまう想像されちゃうので、みんなで作り上げた感じなのかな、と勝手に想像。

「事後報告」、フリーターしている役者は数あれど、わりときっちりした技術職なのに、それを「(良くも悪くも)踏み外す」瞬間を描くという芝居はあまりみない気がします。芝居とはいっているけれど、仕事を辞めるということ、それを親に話すこと、親がそれを受け入れること。もちろん当人にとっては大きなことだけれど、それを芝居として成立させるのはなかなか大変なところ、単にいい話にしなくて、冷静につっこむ親の最後の一言が、いいバランスです。

残りの二本はいわゆるガールズトークっぽい風景の切り口。
「FLOWER & SNAKE」はその中で、一触即発になりそうな不穏な空気感が立ちこめるのに、それを意識的か無意識的かくるりと避けてスルーすることにする瞬間が不思議だと感じた「体験者」と、それを際だたせて描き出すのは巧い。この現象自体は実際のところそんなに珍しくないだけに、衝突の回避そのものの不思議よりも、それに違和感を感じたという感情を取り出してを描き出すことで、体験者自体のあまり器用ではない、女子力の弱そうなキャラクタが逆に浮かび上がるという巧さに唸ります。いや、ほんとうの彼女がどういう人かはわからないのだけれど。

「がーるずとーく」は、主宰自体は信じていない女の友情と、いや自分にはちゃんと女友達が居るんだ、普通なんだという体験者の対立の構図。体験者だって本当は気付いているはずの友情の薄っぺらさと、彼女のズレた真面目さみたいなものがどんどん露呈していくステップっは、彼女を丸裸にするようでこれを舞台に乗せるのは勇気あるよなぁと思うのです。もっとも、その外側にみえてくる彼女たち自身がちゃんと女友達になってるじゃないか、という描き方もちょっと巧い。
友達のはずだと信じて送る公演の案内メールはなしのつぶて、それをスルーしたまま入籍メールが届くなんてのは、まあ芝居の話に限らずよくある話だけれど、ちょっと面白い。

ほわんとした不器用さが際だつ島口綾、それとは全く違う雰囲気なのにこっちも実に不器用な真面目さが徐々に見えてくる長菜々美の二人が役者のキャラクタとしては印象的。理学療法士だったという吉田みずほ、鍋パーティを開催していた部屋主だった安達可奈は、一見ごく普通の女の子なのに、その内面に見え隠れする不器用さや違和感がうまく描き出されています。演出、となっている野崎百合香はその彼女たちから何かを引き出している、という感じが「がーるずとーく」を通して透け見えます。

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