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2012.05.07

速報→「八◯◯中心(ハチマルマルチュウシン)」studio salt

2012.5.5 19:00 [CoRich]

スタジオソルトの新作。前回に引き続き週末だけで4週間の公演。中華街の中、散歩がてらにも嬉しい感じの105分。27日まで八〇〇中心 (1, 2, facebook, )。完売の回もあるようです。開場時刻とされる20分前から芝居は少しずつはじまっています。アタシはどちらかというと奥の方の席が見やすかった気がします。

芸能事務所「ハチマルマル・エンタテインメント」の休憩室。あまり仕事がないような感じだけれど仲が良さそうな人々。7名が集められる。先代の社長が亡くなり引き継いだ息子。この事務所は人気のあった一人が移籍してしまい、収益が悪化している。彼らを神7(かみセブン)ならぬ「ゴミ7」な不良債権だといい、この人々をリストラしようかという勢い。そこに新社長が提示したのは、人気映画監督の新作映画のオーディションにこの事務所から「無名でポテンシャルもなさそうな役者」をたった一人、送り込めるという条件だった。

シニア部門だったり、若くはないモデルあがり、再現ドラマの女王、大道芸、一発だけの人気俳優、子役上がり、養成所から本科にあがれなかった新人。それぞれいちどは役者を志したにもかかわらず、それでは喰っていけていない人々。当日パンフのあいさつよろしく、もうだめだと思われた人々の頑張る姿を丁寧に描きます。成功しているとはいえない人々の腑に落ちる何かがソルトの持ち味だと思うのです。

タレント事務所の話ですから、会社員であるアタシの感覚に決して近いわけではありません。が、若い頃には仕事がうまくいっていたとか、子供の頃にうまくいっていたのを仕事にしたとか、年老いた母親のこととか、自分自身が若くなくなっていくことの恐怖、さいしょから躓いてしまった、もうこれはあきらめて別の収入の道(当日に挟み込まれたチラシはネタかとおもえばリアルなのだそうですが)を考えるなど、人気商売固有に見えて、なかなか普通の会社員にとっても引き寄せられるポイントがあります。それは、ほとんどの問題が「年齢を重ねていくこと、時間が過ぎていくこと」に恐怖する気持ちを物語の根幹に置いているからではないかと思うのです。作家も決して若くはなく、アタシの年齢に近いですから、男女の差はあれど、その感覚は腑に落ちる感じがします。

問題がないわけではありません。それぞれの人生を順番に一人語りするようなフォーマットなので、3人目ぐらいになるとこれが順番に7人続くのか、というように思ってしまうのはあんまり巧くない感じがします。それぞれが会話というよりは一人語りに近いので、どうしても全体に単調になってしまいがちです。背負うネタがアタシの腑に落ちない感じなものも混じるのは7人という人数が少し多いとも言えますが、老若男女とわずさまざまにフックするようなつくりにするために作家が必要と感じた人数、という気もします。

元モデルを演じる環ゆらの色っぽさに靡いてしまいそうなオヤジなアタシです。唯一それなりに稼いでいる女を演じた森由果は美しく、この二人、40歳とか38歳に見えないのが難点といえば難点(夜公演終演後に設定された劇場での呑み会(実費。誰でも参加可能)で聞いてみれば、それほど年齢が違うわけではないというのでまたびっくりしつつ。新社長を演じる東俊樹は、(書かれた)台詞があまりにきついけれど、それに負けない力強さは序盤からヒールを一身に背負う説得力があります。

ネタバレかも

実際のところ、作家の視線は実に優しい着地点です。これが彼らにとってほんとうにいいことなのかということには議論のあるところでしょうが、その年齢まっただなかなアタシには、ちょっと嬉しい感じ。中華街らしさも味付けとしていい感じなのです。

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