速報→「どうしても地味」箱庭円舞曲
2012.5.19 19:30 [CoRich]
箱庭円舞曲の新作。27日まで駅前劇場。そのあと大阪。125分。花火が名産だが過疎になった町、純国産を旗印に中国との国交断絶を商機に大幅に売り上げを伸ばした線香花火、その二年目。寺に隣接した集会所に「仲間」と呼ぶ寄り合いに集まる人々。花火職人は今年は別の何かを考えている、妻との距離。その妻の弟は東京から嫁を連れて戻ってきたが、奇行が近所の噂になっている。嫁は距離の縮め方がわからない。web担当の若者は夜ごと迫る妻から逃げることを考えてばかりいる。独身の運送担当は花火を続けて本気で考えている。寺には住職のほかに、居候の女が居る。ある日、その集会所に謎の女が訪れて。
箱庭円舞曲のラインナップは「仕事する男たち」ともいうシリーズと「家族の話」を主に据えたシリーズを交互に上演。今作は「家族」のシリーズです。
斜めにしつらえた集会所、六畳間。舞台の奥には玄関があって奥行きを感じさせるいい空間。六畳間には縁側と庭がついているけれど、客席上手側と下手側では、たとえば線香花火の場面でも縁側の外側から眺めるのと内側から(背中をみるように)眺めるという具合に印象が異なりそうです。引き戸・障子をうまくつかって間取りの割には玄関の見え方が場所によって大きく替わらないように工夫しているというのは、しっかりと空間が隅々まで演出が把握し作り込んでいるという印象を受けます。
タバコの違法化、中国との国交断絶という近未来っぽい舞台背景、当日パンフにあるように田舎の過疎地だとしても国が決めたことの影響とは無関係では居られないのです。
今作で物語の軸に据えられるのは、たとえば夫婦で居ること、小さなコミュニティの中で暮らしていくということ、あるいは夫婦の性も含めた生活のこと、その絶望的な溝や追すがろうという気持ち。兄弟の確執や心配する気持ち。
あるいはここで生計を立てるということのギャップ、それでも関係を切ることができないというコミュニティの狭さのさまざま。作家は何かを悟ったのではないかというぐらいに描かれることはほんとうに「地味」なのです。それはその土地のもつ味、しきたりのようなものということも含めた、土地のことを描くという意味にもつながります。
女三人の会話のシーンが好きだというのは、アタシの偏った好み。終盤にあるシーンは静かで他愛もない感じではあるけれど、何かを守るゆえの軋轢、バランス、という三人の会話ということのおもしろさが濃密なシーソーゲームのよう。
正直にいえば、「集会所」と「各家庭」といわれても、新興住宅地にあるような同じ間取りの家、という感じにみえてしまうというのはちょっともったいない感じ。もっとも、これだけ作り込んだセットゆえなわけで、この質感もまた捨てがたくて悩ましいところ。
迫る嫁を演じた神戸アキコはコミカルであんまりといえばあんまりな描かれ方だけれど、そうせずには居られないという気持ちはやがて切なさを感じます。 花火職人を演じた爺隠才蔵はニュートラルかと思わせつつも当日パンフにある「飽きる」ということについてブレずにしっかりと。妻を演じた木下祐子は時にヒール。時にピシャリと凛としてかっこいい。 菊池明明はすらりと美しく、なびいちゃう男の気持ちに説得力。住職を演じた小野哲史は静かで落ち着いていて印象に残りますが、そこかしこに出てくる飛んだ生臭坊主っぽさもまた「らしく」てちょっといいのです。笹野 鈴々音は正体不明な感じがちょっと妖しく、雰囲気を作ります
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