速報→「insalata matta」
2012.5.12 19:00 [CoRich]
土谷朋子・徳元直子・中野架奈の女優三人で立ち上げたユニット、tarassaco(タラッサーコ)の旗揚げ公演。13日まで新生館シアター。75分。
大木の地下で同居している女四人。妻だった女と、愛人だったらしい女たち。一年前にここに集まった女たちはその男が死んでいて、その犯人がここに来ると聞いてきて「うめる」(作・澤唯(サマカト))
子供たちが遊んでいる。じゃんけん列車、は衝突してじゃんけんして負けたら後につく。でも、一人で遊んでいる女の子はルールも名前も知ってるのに、それに正面から向き合わない。ほかの友達は「種類が違うのでつきあうのやめよう」という。予言めいた彼女に興味があって。年齢が進んでも、彼女は一人で、私もなぜかずっと一人で。「ガリバー」(作・ヤベメグミ(ex. カブ))
「うめる」は、現在と一年前の話を織り交ぜながらこの四人が暮らすに至った経緯と、いま新たに起きた「事件」を対比しながらみせていきます。緊張感とも違うし、クラフトっぽいというか生成りというかな不思議な同居生活の今と、一年前のなんかちょっとすごい「OUT」のような事件との落差こそが楽しいのだけれど、正直に云えばもうすこし落差、特に一年前、初対面ゆえの緊迫感がもうすこし欲しいところ。でないと1年前と現在の時間の差が感じづらいかんじがします。
終演直後はなんか難解だったりチェーホフか、と思ってしまったのはなぜだろうとも思うのです。作家がこういう話を書くのはちょっと意外な感じはありますが、女性ばかりの芝居、という制約ゆえという気がしないでもありません。
妻を演じた徳本直子のゆるい感じ、夫が殺されても憎くないのだ、というのはなんかロハスに見えてしまうのだけれど説得力があります。田辺麻美を芝居で拝見するのは実に久しぶりなのだけれど、可愛らしく、勝ち気な感じがそのままで嬉しい。
それにしても一年前は人間を埋めたのに、現在は地面に落ちていた(というか埋めてあった)巨大な魚をということがオチというか、え、これは不条理劇かと思って、腑に落ちるのにしばらくかかるのです。ずっと続けてきた思い出を語る女たちというのはちょっと怖いようでも。
「ガリバー」は、作家がもと主宰していた劇団・カブな風味、つまり童話の中の真実のような味わいが久々に。子供の頃はすべてメスなのに、ペアになれれば片方がオス(ヒゲが生えるらしい)になるという世界の設定(そういう生物が居た気もするけれど)、それがものを考え、先を見通す誰かとの会話ができて、それゆえにペアになれないことが実に。誰かのママでないおばさん、という言葉の無邪気な残酷さ。誰かにハグすることの久しぶりの嬉しさ、でも、アタシはひとりきりでということがむしろアタシの気持ちに近いのです。居場所のない私は戦士になることを選ぶことしかない、というのも近いのです。一人で生き続けている人は未来がないという母親の言葉が、身に沁みるのです。そのあとに再びの予言が、ちょっと怖くてちょっと悲しくて、もしかしたらアタシがそうなりそうな。
冴えた台詞がいくつも。序盤の「不満をお団子にして、親切の振りをして出す」とか「なりたくない大人が居ることの絶望」なんて言葉の切っ先の鋭さが印象に残ります。
「種類の違う」オラクルを演じた土谷朋子、不思議でもあって一人で居ても意に介さないという、私たちとは違うものゆえの神々しさすら、その説得力が。ペアになりたいのに恐らくなれなかったラリーを演じた古川直美も、望んではいない人生だけれど、きちんと向かい合うという力強さに説得力があります。それにしてもエルザを演じた中野架奈が可愛らしい。
当日パンフの演出は、この団体の成り立ちに対して少しばかり厳しい書き方をしているけれど、役者に対しても戯曲にたいしてもきちんと向き合っていることがよくわかります。なるほど、役者や作家たちとのつながりゆえの信頼感。正直に云ってわかりやすくはありませんし心底面白かったのかといわれると少々怪しいところではあるのですが、絵本と雑誌が組み合わさったような不思議な空間なのです。
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