速報→「12匹の由緒ある猫たち」猫の会
2012.4.29 15:00 [CoRich]
猫の会、というと勝手にゆるい空気だと思っていくとびっくりな濃密な会話劇。29日までスペース雑遊で95分。相馬杜宇の作、フライングステージの関根信一の演出。
猫に対して最大の功労をした「グッドキャット」を猫たちが選ぶ選考会の会場。自薦他薦問わず、全会一致が条件。政治家(っぽい)愛玩動物連盟会長、ペットフードのアドバイザー、猫カフェの女王、プロデューサーがそれぞれプレゼンテーションする。最後のひとり、ジャーナリストは(人間の)立ち入り禁止区域から避難してきた野良猫を推すというが、飼い猫ばかりのこの会の中では圧倒的に不利で。
猫の会、という劇団だけれど最近は猫じゃなくて河童が出てきたりと必ずしも猫という話でもありません。その中で飼い猫の存在と人間ということを真面目に真っ直ぐ描いている今作。正直に云えば、アタシは動物を飼うということには及び腰だけれど、猫が好きな人もそうでない人も嫌いな人もちゃんと物語に取り込めそうな気がします。
タイトルで気づくべきだったのだけれど「12人の怒れる男」なフォーマットの前半。最初から評決の対象が絞られている「12人~」に比べると、その論点にたどり着くまでに少々手間取る感はありますが、物語の柱である優れた猫という栄誉を避難区域から避難してきた「野良猫」に与えるべきなのかどうかという議論に収束していくプロセスは見応えがあります。 飼い猫・野良猫と人間たちの関係にまつわるさまざまな問題。地域猫やペットショップ、ペットフード、保健所、猫カフェ。登場するのをほぼ飼い猫だけに絞ることで、野良猫に対する微妙な差別意識を物語に盛り込み、加えて原発など、人間のありさまと無関係で居られないということで脇を支える骨格。
結論を導くことはなく、この会議自体が飼い主の人間の帰宅であっさりと終わってしまうこと、実は司会をしていた猫もまた、まもなく野良猫となる運命の予兆を示すものの、それを「自由」ととらえる前向きな終幕は訊ねてみれば、ミュージカル「キャッツ」の枠組みなのだといいます。なるほど、そういわれてみれば。
政治家っぽい猫1を演じた佐瀬弘幸はほぼ一人で最後までヒールをきっちり背負います。説得力と周囲に屈しない姿は政治家という役に説得力。ペットフードアドバイザーなる猫11を演じた宮本奈津美は軽快さと可愛らしさと鼻っ柱が強い割に時に妙に腰の低い感じの絶妙なバランス。猫カフェの女王の猫12を演じた高園陽子は色っぽさと気位の高さの説得力。世間知らずな血統書付きシャムな猫9を演じた北村耕治は役者で拝見するのはずいぶん久しぶりな気もしますが、気の抜けた軽さがあって楽しい。保健所職員が飼っている猫10を演じた澤唯は珍しく声を張る役だけれど、行政というものの役割に対する説得力と苦悩がしっかり見えて印象に残ります。文学界の大御所なる猫2を演じた浦壁詔一はそのゆるく飄々とした感じがなんか癖になる妙な魅力があります。
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