速報→「オーラルメソッド」シンクロ少女
2012.4.21 15:00 [CoRich]
銀座の小さなギャラリーで、過去二作の再演企画。21日まで若山美術館。70分。
私の話。友達の彼に出会って奪うように結婚して、お金には困らなくて、演劇も続けられて、でもやっぱり私は淋しくて「極私的エロス」(リーディング)
官能小説の大御所。下品でそんな小説は大嫌いだという妻。妻は家を出るといい出すが、それは男が居るようだと直感的に感じ取り。「性的人間」(原案・団鬼六「不貞の季節」)
作演・名嘉友美の結婚から離婚に至る、夫婦の日々という体裁。これがリアルなことなのか、フィクションなのかはアタシは知る由もありません。無口で一人で居ることが好きな夫と、一人で寝ることが淋しくて、セックスからどうしても離れられないという妻。イキオイで結婚したし、経済的に困ることなんかなかったけれど、やっぱり違和感が拭えず、離婚に至るはなし。正直に云うと一本調子といえば一本調子な話で、結婚の直後が頂点で、あとは単調に下っていく日々という物語そのものに驚きがあったりするわけではないのです。
略奪婚にしても、浮気にしても実は悪いと思ってない女、彼は確かに優しかったし、演劇ができるというのはとても理想的だけれど、離れてしまう気持ち。自分を責めるでもなく、相手の気持ちに思いを寄せるでもなく、事実と、私はこういう人間なのだということと、私はこう思われているのだということをただひたすら描き続けます。このスタイルは、物語と云うよりは、一人語りをしているようだし、観客の好みははっきり別れそうに思います。
ぐるぐると同じところを回る感じ、愛情とは別のところにある、肌に触れてもらえること、一緒に誰かと一晩を伴にせずにはいられない、やむにやまれない気持ちを、表面上はごく静かに、しかしその奥底に燃えたぎ渦巻くきもち、の温度がじんわりと感じ取れるのです。
「性的人間」の方は、団鬼六を思わせる和装の男、妻はその小説が下品だといって、もう我慢がならないというけれど、それを寝取った男、その男の前で妻が見せたであろう仕草や表情、ことばにいたるまでを想像し、妄想し身悶える作家。こちらも愛情とは別のところにある、妻の中で燃えさかるものを描く点では同じですが、こちらは妻の視点ではなく、妻を寝取られた作家の姿を描くというちょっとねじれた描き方がおもしろい。わりとコミカルに演出されていて、爆笑編になっているのもちょっと意外な感じがします。正直に云えば、作家を演じた俳優(どちらかわからず)は官能小説の大御所としては少々若すぎる感はあって、序盤は不安な感じなのですが、この爆笑編という作られ方にはずいぶんあっているのです。セックスというものから離れがたいことということに観客のすべてが共感するかどうかはよくわからないのだけれど、愛情とは別の何かだ、という描き方は一本目と同様で、アタシには腑に落ちる感じ。だけれど、これは人には言いづらいよなぁ、こういう性癖というか嗜好とというか、考えかたというか。
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