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2012.04.16

速報→「俺以上の無駄はない」MCR

2012.4.14 15:00 [CoRich]

友人の言葉を借りれば、ペーソスな味わいすらにじむ新作90分。17日まで駅前劇場。

働いてない男、同居している姉は実家の近所ではキチガイと呼ばれたりしていて、二人でひっそりと暮らしているが、家の中では罵りあう。男が入っている不幸を語り合うサークルでは姉のネタばかりだと云われる。男には彼女が居るが別れる寸前で。男のところに幼馴染みの男友達が訪れる。姉には離婚した夫が居るが金目当てで通ってくる。ある日、姉の様子が変で。

大声の罵倒、不幸自慢な人々、大笑いな台詞という感じでコントっぽい感じの序盤、あんまり大笑いしていい感じの不幸じゃない気もするけれど、なんか笑っちゃう感じのコント感。

徐々にこの姉弟の離れがたい感じ、その想いの深さに分け入ります。あちこちに迷い、うろうろしながら、そうするしかないという意味でも進んでそうしてしまうという意味でも悲劇かもしれないけれど。そういう不幸を語ること、あるいは書き物にすることという点では、主役を演じる作家らしさが見え隠れします。これを編集が云う、見せ物にするチャンスだと思わなきゃということの残酷さ。

たとえば愛について一瞬かたる姉の台詞の冴え、かと思えば見てくれで手のひらを返す元ダンナのひどさという一面の真実、あるいは序盤の男友達の一種のホモソーシャル感。たった90分の芝居で、あちらこちらに、上下左右に飛び回る物語について行くという楽しさ、この奥行きを笑いベースで芝居にしてしまう作家の確かなちから。

病院で一人で居ることの心細さという繊細さ、親と一緒のことしやがって、という台詞にはここまでに至るこの姉弟の歴史がほんの数秒にぎゅっと圧縮される濃密さにはびっくりするのです。

主役を演じた櫻井智也は舞台にほぼ出ずっぱり、緩急がすごい。石澤美和との迫力のある応酬は見応えがあります。彼女を演じたザネリは存分に可愛らしさ。なんかとても気になるのが伊達香苗演じる大家の娘。確かに可愛らしいのだけれど、台詞でも浴びせられる薄幸な感じというのがほめ言葉になるかわからないけれど、印象に残るのです。

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