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2012.03.26

速報→「どっからが愛」第6ボタン

2012.3.25 19:30 [CoRich]

十条の居酒屋「うまいもんや」の一室での公演。ちゃんとした食べ物もドリンクもついて2000円というお値打ち90分。しかもそれをシステマチックにちゃんと楽しい時間。

ある女。バイトの面接に来てる店で忘れられて、いつのまにか店員出された酒を呑んでいる。もうけっこう酔いつぶれつつ、どこに居てもこんな扱いと云いながら、中学校の入学式の頃からの男遍歴をかがり出す。恋人、キス、初体験に同級生はずんずん進んでいるのに、自分はまだ。専門学校に行ってOLになって、それでもまだ一歩を踏み出していなかったが、同窓会で会った久しぶりの男とホテルに行き、そのままなし崩しに女の家に転がり込んでくる。

晩熟(おくて)でダメんずな女性の酔っ払いな自分語り。中学校に入ったときは人並みに男子も女子も友達が居たけれど、学年が進むにつれて徐々に乗り遅れていく感じ。友達は恋、キス、その先へと進んでいるのに、自分は、という焦る気持ち。同窓会の見栄を張った会話もちょっと楽しい前半。後半は、その焦りと幼なじみに許した気持ちからか、あっという間に初体験、同棲、金まで貸したりしてのダメんず一直線。終盤はまるでサスペンスドラマかという意表を突く着地点。荒唐無稽といえばそうだけれど、そうでもなきゃ断ち切れないほどのズブズブな感じなのだということかとも思います。

どこまでが作家にとってのリアルなのかはよくわかりません。もちろん作家にとってのリアルである必要はないのだけれど、なんか前半の焦る感じやら行き後れ感を笑い一杯に描きながらも、なんかその彼女は実に可愛らしい。見た目は悪くないのに幸薄い感じに惹かれてしまう物語と人物の造型は、アタシの感覚にも直球ど真ん中なので、出演もしている作家に勝手に重ねてしまうアタシなのです。いかんいかん。

部分部分は、実はステロタイプな「幸薄い女」像ともいえますが、見せるテンポが実によくて、場面の切り替わりも詰めに詰めていて、見やすく、大笑いして、しかもアタシにど真ん中で実に楽しい。「絶対浮気しているけれど必ず私のところに帰ってくる」とか「食べさしのチョコレートだけれど貰えたことが本当に嬉しい」のちょっとイタくて、でもまっすぐなところが結構好き。 好きといえば、女子三人の同窓会での会話のシーンがはもちろんアタシの好みの感じだけれど、それぞれに自分の人生とか、結婚したり、初体験のこととかの様々を並べ、それを聞いていても主人公はまだ体験していなくてという焦り気味な気持ちにきゅんときて。

主人公の女、さきを二人の女優に割り振ります。若い頃とかそういうのではなくて、入れ替わりながらさまざまにしながら、縫い上げる感じ。演じた青木裕美子はダメんずっぽく見えて素朴さもあって素敵(ほめ言葉)。もう一人の内山唯美はさらに終盤でトラック運転手という役でまったく違う感じになっていてびっくりします。作演を兼ねるながみねひとみ、怖い感じとかもリアルに。「女子」というざっくりした役を演じた河上泰子は、それだけの説得力を持つ可愛らしく、ガーリーでしかもかっこいい。

それにしても、 バイトの面接に合格する、というのが幸せというのは、若い彼女たちのリアルな感じなのか、そりゃそうかもしれないけれど、あんまりといえばあんまりだよな、という現実も感じたりして。

料金に含まれるドリンクは上演前に貰うこともできるけれど、同じく含まれる一品は、上演前に注文し終演後にあっという間に受け取れて、そのまま店で呑み会になだれ込みます。追加注文も大丈夫、主宰は一見で知り合いでもないアタシにも、というか客の総てに会話をしようとします。芝居の世界での繋がりはまだ浅いのだといいますが、劇場であることよりも、こういう場を作っていきたいという心意気にちょっと惚れ込むのです。戯曲だって500円、DVDだって徹底して手作りして500円という、きっと自分たちの地に足のついた経済感覚が実にいいな、信用できるなとおもってしまうのです。

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