速報→「囁く夜と飴玉のいくつか」スミカ
2012.3.18 [CoRich]
2012.3.18 14:00 原田優理子のユニット、スミカの新作公演は小さな小さなギャラリーでの小さな二人芝居を四編で構成する65分。19日まで百想。
病に伏せり療養している女、ベッドの耳元で囁くのは、城を抜け出してきた姉だった。一緒にいよう、帰ろうとよびかけるが「音楽の聞こえない部屋」
朝ベッドで目覚める女、部屋に居る彼は、また毛糸をどこからか拾ってきていて「毛糸のある部屋」
暗く沈んだ男のところに現れた女の子は、亡くしてしまった娘だった「遠く春を待つ部屋」
久しぶりに放りっぱなしにしていた部屋を訪れた男、この部屋の主となっている祖父に、この部屋をどうするかについて告げる「番人を抱く部屋」
ベッドが一つ、生成りっぽい衣装、薄手のカーテン。物語それぞれはまったくつながりはありません。部屋と二人の人、ということぐらいが共通点。もちろんすべてが作家自身を投影しているということはないと思うのですが、女性の作家らしい、優しい視線とふんわりした気持ちが全体を包みます。
ネタバレかも
「音楽~」は城とかお姫様とかという感じで童話風味に見えるけれど、今の状況を妥当できないことに悔しさを滲ませる少し勝ち気な姉と、動くことはできないのだけれど、日々の些細な幸せを紡ぐことでも、自分は今幸せだと言い切れる妹の対比は、ある程度歳を重ねたからこそ感じることだよな、という大人の話でもあります。それは妹の自立への姉からの決別の原動力になっているのかもしれないと思ったり。
「毛糸~」は、女の一人暮らし、部屋に居る(おそらくは犬の)ペットとの話。実は犬だけが相手の言葉を理解していて、という一方通行の会話というベースだけれど、一瞬それがわかり会えたような感じになる、ということの奇跡、というか偶然。恋に悩み一人で生きていけるのかと悩む女の気持ちを安らかに保つペットの存在だけれど、それは勘違いの上に成り立っているということ、コミカルに振りすぎず、あくまでも平穏な日々の風景として描きます。
「遠く~」は娘を見ることなく亡くした父親のもとに訪れた、娘らしきものの姿。娘のたったひとつ、「予定日じゃなくて誕生日」の望みが健気。ふたり、ぎゅっと抱きしめあうだけのシーンが続くのだけれど、その近さとは裏腹に二人の間には絶対に行き来できない溝が存在するというのが哀しい。
「番人~」は、これもまた男にとっての決別の物語、という風にアタシは読みました。部屋を譲り、立て替えるということを決めることが男自身によるものか、を確かめるシーンがそう感じさせるのかもしれません。そもそもがギャラリーのこの場所で、まさに場所から発想したような物語は、作家の所属する「トリのマーク」な雰囲気も漂います。
村上直子は勝ち気な姉と、健気な子供の振り幅の広さがいいのです。サキヒナタは女の一人暮らし、というシーンのちょっとコミカルなところが好。菅野貴夫はやもめ暮らしな男の「くたびれ具合」が実によくて。園田裕樹は演じた二役がいずれも幼さのようなものを見せる役ですが、これも役にあっている感じがします。
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