速報→「ブスサーカス」タカハ劇団
2012.2.25 19:30 [CoRich]
女優ばかり6人、サスペンスのような不思議な味わいで小さな空間をがっつり埋める90分。3月4日までギャラリールデコ5。これからごらんになるなら、入り口入って舞台の向こう側にある柱の横、2、3列目あたりかと思うけれど、最前列に座っているひと次第かもしれません。
どこか人里離れたところ、女だけの奇妙な共同生活。どうやら何か事件を起こした女たち。愛する一人の男を待っている。その愛憎は入り乱れるが、ともかく男を待つということでこの場を離れられず、微妙なバランスの日々を暮らしている。しかし男への想いのあまり、誰か一人だけが男と抜け駆けしていると疑心暗鬼になる。
「ブス」というタイトルだけれど、実際のところ女優たち(つか女優だけあって、当日パンフでそう云ってる作家だって)それほど酷い面相というわけではないのはご愛敬。むしろ男を愛するという気持ちをベースに、この中では勝てないだろうという劣等感という、「ブス根性」を描くことこそが物語を駆動するちから。そこを始点として閉塞した空間で暮らしている人々の間で醸されるのは、そのなかの「抜け駆けしているひとり」を探し血祭りに上げるベクトル。まったく違うのだけれど、学生運動のさなかで起きた山荘の事件、あるいは学校や職場でくりひろげられる「いじめ」と同じ構図が繰り広げられるのです。
きっちりコメディなのに、その「犯人探し」はまるでサスペンスのようでもあり、終幕はしっかりと、哀しい愛の物語。あとから思い出してみれば、序盤から、こうなることをの伏線だってしっかりと書き込まれていて、
もてている男の理不尽な求めを許してしまうのはもちろんだめんずなのだけど、ほんの少し貰えた愛情を大事に大事に想い続けて生きていける、ということ。男の罪深さ、と云ってしまえば身も蓋もありませんが、そういう生き方をしている女たちを描く会話の深さ。
中盤、誰一人ルールのわからない麻雀卓を囲む女たちが勝手に始めるゲーム、何が地雷かわからないバランスオブパワー、「どうやったら勝ちかわからない」ことを延々と続けるこれもまた閉塞感で実に巧く描きます。そうなんだよな、ゲームから抜けちゃうことの怖さをこんなにも的確に。ゲームから抜けちゃうと、こう(自分のように)なっちゃうんだよな、と自省したりすることしきりなアタシです(笑)。
正直に言うと、全体に椅子が低めの客席で、いつもの癖で最前列に座ってみれば、役者やの影で見えないシーンがいくつもあるのはちょっと残念な感じではあります。
異儀田夏葉、twitterのアイコンみてれば、こりゃブスってことはないよなぁ、という説得力のなさだけど、それまで怯えていたのに、鬼の形相が圧巻で、女優って怖い(笑)。「ブス根性」を圧巻で突っ走るのは内山奈々で、こういう劣等感を目一杯に演じると実に巧くて引き込まれます、一段落 したあとに 安心して静かに語る狂い具合がすごい。一番若い、と突っ込まれる二宮未来、化粧っけのなさが説得感、綾瀬はるかとか小雪に似てる、という見立てがすごい(だって、綾瀬・小雪は似てないのに)。なんか納得しちゃう。
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