速報→「ロゼット〜春を待つ草〜」ハイリンド
2012.2.5 14:00 [CoRich]
サスペンデッズの早船聡の描く女友達を核にした100分は見応えがあります。12日まで「劇」小劇場。
観葉植物のレンタル・販売を行う会社、中学生からの主婦の友達、職人だった男と、社長となって立ち上げた女。恋人と別れよりいっそう仕事に打ち込むようになっている。主婦は冷め切った夫との関係で離婚が頭をよぎるが、一人息子とだけは別れたくない。職人の男は社長に想いを寄せるが、言い出せないままでいる。その妹をアルバイトとして雇うことにするが、兄・妹の関係はこじれている。年末を控える中会社の業績は厳しい中よりいっそう仕事にのめり込む社長だが、彼女も悩みを周囲に相談できずにいる。
ずっと古くからの「ともだち」である二人。凛として周囲から浮こうとぶつかろうとも自分を信じて生きてきた女と、結婚し子供をもうけて仕事をするようになった女。強情だったり甘かったりとお互いの弱点だって知り尽くしているし、お互いをきちんと想いやっているけれど、互いの小さなズレがずっとずっと蓄積してきて、しかもそれぞれに年齢を重ねて学生の時のようにはいかない、ということも見えてきて。そのズレの暴発、その収束を丁寧に、ゆっくりと描くのです。
この二人の関係を核に、想いを寄せる人やその妹、あるいは羽振りのよい高校の同級生という三人を加えた100分。サイドストーリーではあっても、それぞれに濃密に描き出すそれぞれの物語もきちんとしていて、良質なドラマになっています。
社長を演じた岡内美喜子は意志の強い女を等身大に、「劇」小劇場という小さな空間をほどよく満たす造型。中に秘める思いが発露するかつての恋人との電話のシーンが好きです。主婦を演じた枝元萌は、悩みながらも力強く生きる、これもまた等身大。まさかのダンスで大受けの客席も楽しい。風俗の世界に身をおく男を演じた多根周作は、物語の主軸に絡まない分自由さが前にでていてコミカルで軽快で軽薄で楽しい。物語の上では「女の気持ちがわかってしまう」というちょっと魔法のような設定が特に前半の物語運びを軽快にします。職人を演じた伊原農は、実直さに説得力。その妹を演じた高安智実はメインの二人とは違う年齢軸であることが物語に深みを加えます。
役者集団であるハイリンド、突出した一人の役者というのに頼るでもなく、公演ごとに作も演出も変えていて、古典も現代劇もとさまざまなバリエーションを見せて魅力的で、今作の軽やかに語りしかしずしんとくる現代劇もまた新たな一面を見せてくれるのです。
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