速報→「体育の時間」ラックシステム
2012.2.4 14:00 [CoRich]
ラックシステムの新作、「音楽」「国語」につづく「~時間」シリーズの三作めとなりますが、アタシは久しぶりに拝見します。わかぎゑふが描く昔の女性たちの物語はかなり強烈にコミカルですが、きちんとその人々の想いを。120分。5日までザ・スズナリ。優秀な成績を残しながらも、国の資金も注目も十分ではないどころか、太股も露わなブルマ姿は恥ずかしいと思われていた時代。人見絹枝という輝かしい成績があってもなお、まだ競技をする女性たちへの世間の目は厳しく、国をはじめとした資金も十分ではない。新しくもうけられた女子体育高等師範学校に入学した女性たちはオリンピックを目指し日々を過ごしている。
スポーツをする女性たちを男性の俳優たちが演じるという趣向。女性らしく見せるどころか、単なる髭面のおっさん俳優たちもほぼそのまま。強烈にコミカルに振っているけれど、「見せ物」としてすら扱われてしまうというこの時代を描くには、それをやわらげる(というよりは毒をもって毒を制す、という感もありますが)効果があるように思います。
昨今、資金を集めるのに大企業一社に頼れずに、広く人々から、時に広告塔、時に見せ物になりがらも資金を集めるということは、わりとふつうに起こります。たとえばかの「なでしこジャパン」のチームだっていままではずいぶん苦労して資金を集めていたというようなこと、今作はそこへのリンクを感じるのです。
それでも単なるノスタルジーにしないところはさすがに商人の気持ちが分かる関西人、というべきか。中盤でわかぎゑふが語る「旦那衆の前で見せてほしい、資金は出すから」というあたりの語りが圧巻。商売になるから金を出すというのだ、想いは想いで尊重するとしても、金を貰うということをもっと厳しく、ということばに対して、野田晋一演じる校長がかつての人見絹江(wikipedia)が資金を集めたにもかかわらず成績がふるわなかったことをスポンサーたちに頭を下げてまわった、という語りの応酬がすごい。
物語としての強みは、実際のところこの語りの一点突破という感はあります。伝聞として語られるだけで、それが物語の主軸になっていないということはすこしばかり「逃げた」感がなくはないのですが、こういう語り方もまた、ラックシステム的な軽やかさなのだよなあと思ったりもするのです。
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