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2012.01.30

速報→「カップルズ」鵺的(ぬえてき)

2012.1.29 19:00 [CoRich]

アタシは劇団の公演としては初めてです。刺激的な四組のカップルたちのチラシ(実際には役者の写らないチラシが別にありますが)が印象に残る90分。31日まで「劇」小劇場。

新興のベンチャーの社長、震災のあとに「勃つ」ようになったのをきっかけに、高層マンションの上層の部屋を借り、親しい友人たちだけを呼んだり、買った女を招いたりしている秘密の場所。会社の秘書はこれも仕事と割り切り、その場所のあれこれに気を配る。

ネタバレになるのを避けて書くのはちょっと難しい気はしますが、捻れた関係をさまざまに作り出すように「カップル」を描きます。それは四種類のチラシのそれぞれのカップル、ということではなく、三角だったり、見守る二人だったり、ハメられた女だったり、夫婦のことだったり、昔からの馴染みだったり。タイトルこそカップルだけれど、それはどうしようもなく、そうなってしまった人々の哀しさが浮き上がるのです。

性癖というか、なにを好きだと思い、何に欲情し、何を大切だと思い、何を見下すのか、というのは本当に千差万別。セックスを扱う扇情的で眼福なシーンも多いけれど、それが続けば続くほど、その向こうに哀しさが見えてしまうのは、アタシのある種の性癖に引っかかるところがあるのか、それともアタシが歳をとったから俯瞰して見えちゃうからなのか。あるいは仕事ということ、会社に対する思いなどさまざま含めて、自分への対話をしながら観ていた気がします。そういう意味で、後から反芻して、どっぷり浸り込むという感じの芝居なのかもしれません。

杉木隆幸は何かを隠すように突っ張り続ける「男」をきっちりと。宮嶋美子を舞台で拝見するのは久しぶりな気がしますが、ビッチっぷりをたっぷりと、しかしその奥で包み込むような広さが出る役が印象的です。橋本恵一郎は私たちの視座(会社員)からは一番近い言動で、この物語世界の基点を支えます。同じような立場を演じる宍戸香那恵はクールに見栄えを声が更に印象的にして、今作の中ではもっとも印象に残ります。もっとも、彼女を突き動かすものが「新しい会社に引き抜かれなかった」ということだけには見えない、というアタシの友人の指摘はその通りだと思いますが、これは作家の責任なのか、演じ方ゆえなのかは、よくわかりません。外山弥生は美人なのに(本当に申し訳ないけれど)ひとめ見て不幸に見えてしまうという女優に希有なルックスを存分に、ゆえに本人が幸福を感じ続けているという役柄は理解するも、コミカルな「鼻血」が必要だったのかは、アタシとしては今一つ解せませんが。

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速報→「太陽は僕の敵」シベリア少女鉄道スピリッツ

2012.1.29 15:30 [CoRich]

我慢して我慢して、最後に花開く、という感じはシベ少の真骨頂なれど、元ネタというか構造がわからないのがアタシには残念な100分、座・高円寺1。

王亡き後、女王が継いだ国、姫の嫁入りの少し前に不安を訴え、果たして逃げ出す。盗賊とランプを腰に下げた男の子に救われ、冒険に踏み出す。

なんせ、シベリア少女鉄道です。追い込んで最後に構造を提示することを期待してハードルを目一杯上げて見に行くのです。学芸会のようで大げさな芝居も演出なのでしょう。 もちろん、前半部分を我慢して我慢して、最後に構造がわっと見えて圧巻のおもしろさ、というのが得意技なのだけれど、今作、アタシには今一つおもしろさが理解できずに居ます。ジブリもしくはディズニーっぽい、寓話というか童話っぽい世界を紡ぎ続けて、そこに見え隠れする暗黒面、その舞台が支えているのがなんか発電する設備で、役者の大げさな動きが発電につながり、静かになってしまうと電気が消えるという屋台骨。北斗の拳的な戦いと、もともとの童話の世界を音楽に乗せてシンクロさせようとしていることはわかるのだけれど、元ネタの台詞や歌詞が二つの世界を強く繋いでいるかというと、元ネタを知らないからか、じっさいのところ、よくわからないのです。二つを並立させる構造こそがここの強みなのだから、そこを知らない、というのは観る側にとってはハードルが高いのです。

が、少なくとも後半は客席は沸いていた千秋楽、幕切れのあっけなさには客席からぽかん、という感じはありますが、ちゃんと面白かった、という感想を話す声も聞こえるってことは、たぶんリテラシーなのか、知識なのかが、アタシに足りなかったんだよな、と思うのです。シベリア少女鉄道の評価はそれ次第ですから、そういえば過去のやつだって、まったくわからないものもあったよなぁ、と思い出したりもするのです。

篠塚茜、染谷景子という新旧の看板女優の競演というのが実にうれしい。石井舞や羽鳥名美子がわざわざ大げさな芝居、というのは滅多に観られませんから、これもまた楽しく。小村裕次郎と対決する篠原正明の役名がナカゴーってのはまあ、楽しいけれど、それでいいのか、アタシは楽しいけれど。

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2012.01.29

速報→「ヌード・マウス」Théâtre des Annales(テアトル・ド・アナール)

2012.1.28 18:00 [CoRich]

谷賢一の新作。120分。29日までRED/THEATER。

近い未来。古いホテルを買い取り、田舎に引きこもり研究に没頭する脳科学の研究者。離婚した妻との間に娘と息子があり離婚以来一度も会っていなかったが、妻の死去に伴い、遺品を渡すために初めてこの「研究所」を訪れる。用事が済んだらすぐに帰る予定だったが、父親と会ったことのない息子はここに残りたいといい、同居が始まる。一人戻った娘だったが、数ヶ月後、婚約者をつれて挨拶にやってくるが、そのときに息子の運転する車の事故で脳の一部を失い、「恐怖」という感情のストッパーを失ってしまう。

こういう、病気などに起因する何かの欠陥と、まわりの人々の感情のという材料立ては作家が得意とするところ、という気がします。扁桃体(wikipedia)の欠損が恐怖という感情を失わせ、好奇心のままに振る舞い、性的にも奔放になる、というのが知見として正しいかどうかはよくわかりませんが、感情の「たが」となる恐怖という感情を失う、というのは確かに物語の題材としては(不謹慎ながら)魅力的です。

父親は娘の向こうに妻の影を見て奔放に言い寄ってくる娘との葛藤に悩み、婚約者は論文を読みこの場所で起こっているかもしれないことに苦悩し、息子(弟)は初めて逢う父親に興奮し、ずっと二人だった姉を事故にあわせたことに自らを責めます。一人の女性を巡り三人の男たちが苦悩し、感情を露わにしていきますが、それぞれの感情のベクトルというか根本がそれぞれにバラバラで(小競り合いはあるものの)一人の女性というだけの共通点なのは物語としてのシンプルさ、というよりは物足りなさを感じたりもしてしまうのは、この作演がこれまで発表してきた「小部屋のマリー」「モリー・スウィーニー」「プルーフ」といった作品群(翻訳したものも混じりますが)の何層にも重ねられた物語が生み出す重厚さ、が頭をよぎるからかもしれません。

婚約者という外部は居るものの、ほとんどの部分はこの家の中で起きる苦悩と過去の思い出される風景、よくなる見込みのないこの一人をどうしていくか、という苦悩がずっと渦巻いている、という感じ。ずっとその流れはリズムを刻むようにずっと続いているわけですが、これは飽きるか、そこにはまりこんでいくか静観しているかしかないのではないか、という気がします。

山本亨は偏屈に見えつつ、妻への残っていた愛情が思い出された瞬間、その記憶の強さゆえの苦悩のシーン。佐藤みゆきは、本作においては感情が解放され奔放であることと、それまでの感情を隠して生きてきた、という対比をこの物語の中でめいっぱいに。たとえばピンボール台にひょいと上る瞬間、じつに素敵なのです。じっさいのところ、弟との暮らし、というのがもう少しかいまみえれば、というのはたぶん物語の責任。増田俊樹という役者は初めて拝見しました。序盤こそ危うさはありましたが、その中に力強さ、大人になっていくということをしっかり。この役者、小劇場を観てる観客が何人もあっちの方にいってしまった(宝塚とかにもよくあるんですが)「テニミュ(テニスの王子様・ミュージカル)」の人気の役者なんでしょうか、なるほどいわゆる芝居をみる観客とは違う層をしっかりと劇場に、というのはさすが。だからラケットでウケるわけね、というのは後からググってわかるわけですが。 大原研二は陰鬱になりがちなこの物語の中で、要所を真面目ゆえのコミカルということで空気を緩める重要なポジション、しっかりと。

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速報→「ある女」ハイバイ

2012.1.28 14:00 [CoRich]

ハイバイの新作、90分。2月1日まで、こまばアゴラ劇場。そのあと名古屋・七ツ寺共同スタジオ、福岡・西鉄ホール。

会社の男と別れてしまい耐えられず別の会社に行った女だが、その会社の部長の男が絵を眺める姿をみて、いつしか惚れてしまう。後から知ったが、男には妻が居て、どちらかに決めて貰いたいとはいいながら、それからは体は許さなかったけれど、逢うたびに男は金を渡すようになる。このままではいけないと思った女だが、出会った男はセックスを教える、という仕事をしている。怪しんでいたが果たして、女ははっきりと開花する。女の部屋の隣には「定食屋」の親娘が住んでいて、その話しをしていて。

非常に凝った映像に語りをかぶせたものが、結構な時間。男との出会い、この女の男遍歴を語るのに使われます。コミカルで、なんかでも映像としてキャッチーだったり美しかったりはするのだけれど、少々長い感じだったりして、すこしもったいない感じは残ります。

ずるずると泥沼な恋と性愛と、なんてことを物語の中心に。大学生の時に惚れた男はなんか不器用で友達に笑われてるのと自分の前では静かなギャップ、前の男はなにをしゃべっているのかさっぱりわからない、もしかしたら私が居なくても同じようにしゃべっているかもしれない哲学的な男。今度の男はなにか美しい絵を見てため息のように美しい、という言葉に惚れてしまったり。一面では「都合のいい女」だけれども、好きになってしまった人のことを全力で考え、悩み抜いた行く末が少しずつずれていく感じ。これが女性の共感を得るのか反感を買うのかは、実のところよくわからないのですが(芝居見慣れた女性に聴いてみたい気はする)、でも、ありそうな風景の断片がきっちりと詰め込まれている感じはします。

じっさいのところ、アタシは作家の描きたいことはなんだろう、と感じるのです。 セクシャルなことを描く感じはちょっとあるけれど、ドライな感じ。あるいは惚れっぽい、悪くいえば少々あばずれな感じではあるけれど、不倫なのか、それともセックスがキライじゃないということとか、あるいは開発されてしまうということとか、チラシによれば、「不倫している人に話を聞かせて貰って~一人の女の話し」にしたこと。なんかそれぞれが笑っちゃうぐらいにマンガ的な造型で、ハイバイが得意なヒリヒリとするようなある種の痛みを自分のこととして描いているというよりは、ある種「イタい」女の、でもそうするしかないという女の姿、これを運命とか悲劇というのとは違うけれど、作家の興味がそこに向いた、ということはよくわかるのです。

ダブルキャストで圧倒的に人気なのは作演を兼ねる岩井秀人ですが、アタシの観た回の菅原永二もなかなか、女性に見えてきちゃう不思議。上田遙は不器用そうに語るけれども少し変わる表情が気持ちをしっかりと描く感じ。永井若葉は時に可愛らしく、ときに色っぽく変わる雰囲気が楽しい。

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【ライブ】「達人の(意外に早い) 帰還/吉川忠英のアコギ!な夜。2」

2012.1.25 19:30

松本で畳のあるバー「@ 洋酒店 醇/STRANGE BAR JUN)」での吉川忠英のライブ、二回目。90分。 前回とはレイアウトを変えて、小上がりも客席に、店を横に広く使って、どの客席からも最前列、という感じに。中途半端な時間に到着したアタシは、アーティストの目の前、それこそ膝つきあわせの距離で。

CD未収録の曲もたくさん。セットリストを初めから記録しておけばよかったんですが、途中から。東北に演奏に行った、という話から「三陸少年」、父を亡くしたという話から「Father's fand」、ちょっと切ない「ラブレター」、落語を絡めての「落とし噺」、組曲「ニューシネマパラダイス」、「風に吹かれて」 「流氷と満月」、ホーミーをからめた「草原の音」で構成。

少し語って少し演奏して。定期的に松本を訪れて何カ所かでこういうライブを開催。たぶん、そのなかでもここでのライブはダントツに小さなスペースで、それゆえのアットホーム感と、場所ゆえのアルコールも楽しいのです。

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2012.01.23

速報「乱雑天国のA·B·C」乱雑天国

2012.1.22 15:00 [CoRich]

エビス駅前バーでの短編上演。2編セット上演のCは休憩10分を挟み90分。31日まで。

お笑いがテレビにも出なくなった時代。この町には小さな「一発芸バー」があって、夜な夜な芸人たちが出演していて、この小さなバーがお笑いを支えている。そんなバーの10周年、常連の「師匠」や破門にした弟子が顔を合わせる「ユーモアのさじ加減」
同じバーのさらに数年後、演劇の稽古場になっているが、やはり演劇ももうシーンがなくなっている。この稽古場を借りている女は姉に借金を申し込もうとしていて、もう一つ伝えなければいけないことがあって「独特リズム」

ある場所をめぐる二つの時代の物語。すでに時代のシーンからは取り残されるどころか発表の場すらこの小さなバーしかないというような時代の設定。そういう衰退していくシーンの人々という設定のどこか哀愁とダメさが漂う雰囲気を作る構成。Bパートはわりと物語の中でAパートの「師匠」を参照していたりして、そういう意味では二本を組で観るように作られている感はあります。

師匠の妻に手を出した弟子、だったり10年連れ添った夫婦だったり、あるいは恋人を裏切って妹とデキてしまったりと、ほんとうにグッダグダで惚れた腫れたの繰り返しという人々を点描したという印象で、物語としては実にあっさりというよりは、作家にはいわゆるオチをつける気はないのだろうという感じがします。こういう人々が居る、ということの描写に興味あるというか。

「〜さじ加減」は伝説のギャグ芸人、この短い時間で物語によってその説得力を持つのはほぼ不可能ですし、ギャグそのもののおもしろさを説得力とるのも少々無理がある気はします。 「〜リズム」はまあよくある痴話喧嘩ではあるんだけど、その残された側の大泣きを執拗に描くこと、子供たちのこととの対比というのはちょっとおもしろいけれど、さすがに30分、物語というよりは、そういうシーンを描いた、という感じの仕上がりになっています。

マスターの妻を演じた辻沢綾香はしっかりと突っ込みとして機能。佐々木富貴子はなかなか珍しい色気にあふれた役をしっかり。両方に唯一出演する平島茜はAにおいては明らかに飛び道具、Bにおいては軸となる大切な役で印象に残ります。  

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速報→「イエスタデイ」ブラジル

2012.1.21 19:30 [CoRich]

ブラジルの新作、とてもパワフルな役者陣も魅力的な125分。22日まで座・高円寺1。

母親を亡くしたあと、地方の一軒家に一人で住む父親。長女は仕事が忙しく、次女は結婚して実家を出ていて寄りつかなかった。一緒に住んでいた三女も、犯罪を起こして服役していた。ある日、三人の娘たちは偶然、同じ日に実家に戻ってくる。一人は破産、一人は離婚、一人は出所で。実家には、若い女が住み込みの家政婦だと云って、その兄と名乗る男と同居している。

若い頃は寄りつかない実家、一息ついたというよりは、それぞれが行き詰まった先、最後の行き場として戻ってくる先としての実家という場所。そういうちょっとひねくれた感じのホームドラマ、という様相で始まる物語。

「三人姉妹」はそこに籠ったまま出て行かない(あるいは出て行きたいけれど出られない)姉妹のはなしだけれど、この三姉妹は出て行ったきり戻ってこなかったのが突然集まってくる、という感じ。その相手の男たちはたいていダメで(でも魅力的だったりもして)、女たちはしっかりと生きているけれど、なんかでもどこか抜けている感じなのはいわゆるだめんず的な描き方というか。

が、物語の根幹はそういうホームドラマなのに、奔放な、というよりは少々頭のおかしいのではないかという家政婦の存在が、コミカルなホラーという感じで疾走というか暴走していきます。それなのに、実家に収束するというよりは、新たな仕事だったり、更正の道だったり、あるいは就職だったりと、新たな道を娘たちが見つけていくという「旅立つ」ような着地点、なるほど、娘たちの成長の物語。暴走した家政婦は、愛情に包まれ、しかし新たな火種のまま、またどこかに現れそうなサスペンスホラーの終幕っぽい雰囲気も忘れません。この芝居、成長する人々のホームドラマと、サスペンスとちょっとコメディとがハイブリッドになっていて、あとから振り返って考えるとなんか不思議な仕上がりなのです。ウルトラQのコメディ風味、というとちょっと違うか。

近藤美月演じる家政婦、彼女が演じる気違いっぷりというのはもう芸の領域ですが、それをイタい感じから怪獣のように描くのはちょっと凄い。もはやオンステージ。長女を演じた柿丸美智恵の豪快さ、次女を演じた桑原裕子が次女らしい気配りと、その裏に隠れる陰の部分をしっかり。おそらく初めて拝見する肘井美佳は美しく、魅力的。中川智明演じる次女の夫のなんか優男と隠れた怖さのようなものの深さ、櫻井智也演じた男の深い深い愛情が実にかっこよく。

この劇場をけっこう高くかさあげしてお茶の間を作るというのは、実に見やすくていい感じ。座り芝居の多い畳の間をやる以上は、こういう配慮が嬉しい、と思ったのだけど、企みの作演、只では起きません。その舞台から飛び降り、まるで漫画のコマから飛び出すような雰囲気を作ったり、あるいは思いも寄らないところから登場させるドリフのような展開だったりと、効果的に使います。見やすくするための舞台に仕掛けを作ったのか、仕掛けを作ったら見やすくなっちゃったのか、はわかりませんが。

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速報→「渡り鳥の信号待ち」世田谷シルク

2012.1.21 14:00 [CoRich]

一昨年秋の上演作(1)を大幅にパワーアップ再演、というよりはかなり手を入れているようです。120分。22日までシアタートラム。札幌と京都での公演があります。

祭りの日、鍾乳洞を光で飾った父親だったが、具合を悪くして娘は配達されない牛乳を求めて出かける。が、気がつくと同級生と二人、列車の座席に座っていた。
この町、アリオリを訪ねてやってきた三人の女は管理人の導きで鍾乳洞を観に出かける。

銀河鉄道の夜をモチーフにしながらも、それは部分として取り出し、混ぜ合わされてまったく別の物語に。初演ともずいぶん変わった印象があります。ずいぶん手を入れたようで、物語というか芝居としての部分よりも、広い舞台にあわせて新たに導入された「オドリコ」たちを「渡り鳥」として、大きな舞台を狭しと配置しダンスをする、ということにより力を入れた印象があります。娘をなくした父親のこと、旅をする三人の女、新米パイロットの職場に弁当を届ける姉、鍾乳洞への路をみつけた管理人の男とその弟らしい牛乳配達、親戚を心配する女に、それに恋している仕事で訪れた男。さまざまな断片の物語。光速な銀河鉄道はその光速運転中だけ時間が逆行して若くなったり、前世の人々の会話、という感じになるけれど、それ以外は基本的には行き場のなくなった「渡り鳥」たちのいるところ。それぞれの人物たちが微妙につながり、重なり合いということはしているのですが、幹につながるというよりは、互いに点描されたものがゆるやかにつながります。

物語を流れでとらずらいかんじがあるので、すでに知っている「銀河鉄道の夜」にピースをはめていくという作業になるのですが、もとの物語はモチーフにすぎないところも多くて、「物語の流れ」としてはめ込んでいくのも少々難しくなってしまった感じはあるのです。

そんな中でいわば「小芝居(褒め言葉です)」としてはめ込まれた、 女三人たちの物語は寄り添いやすい。派手なリアクション芝居、というのは物語全体の雰囲気からはちょっと浮いてる感がしないでもないのですが、佐々木なふみ、帯金ゆかり、松山樹香の三人が演じるこのシーンがいとおしく好きです。あるいは、滑り芸的に挿入される高木健、その姉の切なさをしっかりと作る、こいけけいこ、巧くなったよなぁと心底思います。

映像にもダンスもきっちりと作り込む作家らしく、舞台いっぱいに広がる無数の文字は飛び交う星のようで、インスタレーションのよう、という印象は初演からも変わりません。その「文字のミルキーウェイ」の中にたたずむ青い(しかもおへそはでてるし、ミニスカートの脚線美だ)渡り鳥たち、という美しいダンスが組み合わさり、パワーアップしていますが、ワタシは初演の物語の強さの方がより好みだと感じます。 あるいは、序盤や終盤で疾走する子供のあと、粉塵のように巻き上がる椅子というような美しいシーンも印象に残ります。

2012.01.21

速報→「深呼吸する惑星」第三舞台

2012.1.15 13:00 [CoRich]

第三舞台の復活・最終公演 (1, 2)の千秋楽。古く見知った友人たちが大挙して福岡に押し寄せ、それ以外にもあちこちのパブリックビューイング(昔のクローズドサーキットやね)に、映画館に集う。お祭りとしてきっちり終わらせることが実にカッコいいのです。

自分の都合がよければもう、昼夜とも行くつもり満々だったのですが、どうしても休めない会議が設定されていて泣く泣く昼公演のみ。正直言うと安くあげようと早朝の飛行機に乗ったせいか、あるいは朝昼とどん欲に食べ過ぎたせいか、目をつぶって音だけを聞いている感じになってしまったのは、まあ自業自得。

でも、音だけを聴いてもしっかりと物語が、風景が思い浮かぶということの言葉の強さ、役者の個性、それぞれの役者のキャラクタに当てて描かれた(ように見える)登場人物たちは、実に生き生きとして。

正直に云えば、昼公演だとしてももうちょっとお祭りっぽい何かがあるんじゃないかと期待していたのだけど、そこはそうでもなく。夜はきっちりとお祭りだったと聴くとやっぱり残念すぎたりもするのです。(まあ、横浜千秋楽が観られたので、そこはよかったわけですが。)

第三舞台について、アタシは正直遅れてきた観客です。 初めて観た「パレード旅団」、「リレイヤーIII」あたりまではぴんと来なくて、「朝日のような夕日をつれて'97」は友人たちの熱狂に押されるよう4回みてその凄さにハマり、次の「ファントム・ペイン」だって会社を早引けしてでも何度も通いました。が、かつての熱狂を知る友人たちの語るように、紀伊国屋が超満員になり、前売りを求めてチケットブース前で徹夜したりなんてことを経験せずにきています。

それでも、アタシはこの舞台をきちんと観られたことが本当に嬉しいし、芝居を見る一つのベンチマークとして作り込まれた台詞、役者の凄さというのを目の当たりにしたのは彼らのおかげだと思うのです。

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2012.01.19

速報→「I」appleApple

2012.01.14 19:30 [CoRich]

アタシは初見です。95分。15日までルデコ5。

専門学校の先輩と洋服のブランドを立ち上げた男。伸び悩む売り上げを補うために最近立ち入りが制限された「K地区」への訪問による半額販売を行うことになった。訪れたある家の中に居たのは、少し物憂げな女だった。女は、男のかつての知り合いだった。

前半は元先輩の上司の軽口、閉口しながらもしぶしぶの営業、あるいは「シリコン」と呼ばれる(しかし、本人をそう呼ぶかね、とは思いつつ)女とのなんか軽い会話。軽快ですが、後半の流れを考えるともっともっと軽薄で大笑いしたいところ。台詞も役者もいい感じなのだけど、もっともっといけそう、という感じは残ります。

後半に至り、かつてあんなに明るかった同級生の女、感染の恐れのある地区にいるというだけで訪ねる人も絶え、じっと射るような目つきになってしまった感じ。そう至ってしまった何か。しばらくのあいだ、閉じこもるようだったけれど、そこにやってきたかつての同級生はもしかしたら、自分の過去から照らす一筋の光明だったのかもしれません。その過去、かつての「屋上のたばこ」となれば、「トランス」を思い出してしまうのはまあ、翌日に第三舞台を予定しているアタシだけのことかもしれませんが。

あるいは子宮の中、10ヶ月先の子供。理不尽なそとのこと。これも「僕の時間の深呼吸」が少しばかり思い起こされますが、隙あらば出て行こう、というちょっとしたシーンが可笑しい。

後半の部分が、作家の語りたい何かなのだろうかと思うのです。おそらく作家は愚直なほどまっすぐに、大きくいえば人生ってことを考え抜き、ぐるぐると同じところを回ったりもして、悩み続けているのだという真摯さを感じます。じっさいのところ、物語として決してわかりやすくないし、エンタテインメントとしては微妙なバランスだと云う気もしますが、この先にあるのはもしかしたら、昨今あまりないタイプの、たとえば「遊◎機械全自動シアター」のような、不思議なファンタジーの新しい息吹かもしれないなと思うのです。

仕切り、椅子、机はどれもキャスターがついて自在に動くようになっています。舞台はほぼこれだけのごくシンプルな構成。行き詰まるような狭い部屋やクルマ、かとおもえば静かでひろい部屋に一人いる女、みたいなさまざまな空間。さらには空間を飛び回るような楽しさも。かつての野田地図番外公演「し」でみせたようなダイナミックさを思い出します。このあたりはむしろ現代的でスタイリッシュです。

役者はみな魅力的で、いいバランスです。山ノ井史は、ある種の「嘘くさい笑顔」言い換えれば「内面を見せない」という役が巧くて、それにぴたりとはまります。恩田和恵、序盤のちょい役の可笑しさと、後半でも籠もるような内向きさ、終盤でほんの一瞬みせる笑顔のなんと素敵なことか。 本多巧は軽薄ともいえるようなコミカルさが実によくて、物語の序盤、リズムをしっかりと作り出します。萩原美智子の演じる「シリコン」は空回りとかわいらしさと、うざったさが同居する、しかし憎めない造型で、説得力を感じます。

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2012.01.12

速報→「吐くほどに眠る」ガレキの太鼓

2012.01.08 18:00 {CoRich]

去年夏の初演作を再演。105分。劇場は初演からは広くなって15日までアゴラ劇場。

中央に台となるような舞台、周りにたくさんの洋服、一人、語る女以外はすべて役者が入れ替わり立ち替わり、女の半生を追います。子供の頃の家族のこと、中学生、高校生となり、社会人となり、そして女がどうしてここでインタビューのようなことをされているのか、ということが明らかになる終盤。

物語の印象は変わりません。物語にとって重要な終盤よりも序盤の楽しげなシーンの数々の方がよく覚えていたりして、つくづく記憶力というものがアタシは薄いのだなと感じたりもします。トークショーによれば、初演に比べると終盤のところ、兄と女に関わる物語が変わっているようです。でも、やっぱり楽しげな序盤から青春時代、恋心なんていう流れのあたりの方が、好きだなぁと思うのです。物語が語りたいこと、というのとは少し違うと思うのですが。

兄に甘える一方だった幼い頃、優しい兄のちょっと弱いところを目の当たりにしてしまったことで、めいっぱい背伸びして、支えていかなければ、役に立たなくちゃと追い込まれていく感じの後半。それは息苦しく、しかし本人は至って肩肘はって前向きという「ポジティブな閉塞」。傍目で見ているほうが辛くなります。

劇場がかわったことのメリットもあります。 エレベータの上に個室を作ることができるのは新しいメリットだということが明確です。

高橋智子が実にいいのです。役者の中では背の高い役者ですから、父親、兄、同級生とくるくると変わる役ですが、それぞれに説得力、迫力、優しさ、あるいは弱さを描き出す確かなちからが圧巻。

トークショーによれば、作家は三歳年上の兄、というぐらいは作家の現実とのつながりなのだといいます。 大きな違いは、終盤での兄のありかた。今作では終盤には出てきません。あまりにそれだけのショックがあればおかしくもなるだろう、ということで観客から遠くなってしまうということを避け、観客に愛される人物を作ろうと腐心したのだといいます。その結果、日常起こり得る出来事からのフラッシュバック、という説得力のあるシーン。もうひとつ「吐くほどに」は、吐いてしまうほど、ぐっすりとめいっぱい眠りたい、ということ。

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2012.01.10

速報→「軽快にポンポコと君は」ぬいぐるみハンター

2012.01.08 14:30 [CoRich]

ぬいぐるみハンターの新作。狭いOFF OFFシアターだからこそ物語が濃密になった印象の110分。15日まで。

かつて日本のあちこちで人間と共生していた狸に似た「ポンポコ」は、人間社会の文明が進むにつれて共存が難しくなり、乱獲されるに至って地下に潜伏するようになった。頭脳に優れ文明の進んだ人間にいつか復讐しようと機会をうかがったまま数十年が過ぎた。東京近くに潜伏している「ポン吉」は革命を願い潜伏することを指導した伝説のひとだったが、今では妻も子供も居て一家で暮らしている。
ある日、ポンポコのよき理解者だった国会議員の訃報を知った全国のポンポコたちがいよいよ全面対決を決意する。ポン吉の長男は、ポンポコとは思えない知能の高さで対決するための最終兵器を作っていたこともあり、その戦いのリーダーに選ばれるが。

王子小劇場のような空間を縦横無尽に走り回り、スピード感、グルーヴ感めいっぱいという色合いの強い劇団です。が、なにせあの狭いOFF OFFシアターで、しかもそれなりの人数の役者です。ダンスこそ結構あるけれど、さすがに疾走するようなことは出来ません。が、その足かせのおかげで、ファンタジーとはいえ、物語に厚みがでて、濃くなったことがプラスに働いています。もっとも、空間を把握するという意味では、出捌けに苦労する芝居の多いOFF OFFの下手側に捌けたあと少し隠れて待避できる場所をつくり、中央から出てくる役者のあとに袖に上手側にしかない袖に引っ込むというちょっとした発明が実に効果的で、物語のテンポがまったく落ちないのがすごいと思うのです。

ネタバレかも

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2012.01.08

速報→「猿に恋〜進化ver〜」悪い芝居

2012.01,07 19:00 [CoRich]

「悪い芝居」の実験企画公演「本当に悪い芝居」として去年京都で上演したものを改訂上演とのこと。75分。9日まで駅前劇場。

頭と最後に現代の若者たちの街角をスケッチするような場面をいれ、その間は「せりふがなくてうなり声だけの」原始人たちの芝居として作り上げます。マンモスにおびえたり、歌って踊ったり、ナンパもどきがあったり、ラブラブになってみたり、おいしい果物を奪い合ったり、物々交換したり、ゲームや道具、農耕、信仰の始まりがあったり。

無言劇をやってみたかったのだ、という作演のことば。トークショー出演の藤原ちからによれば「蛮勇」だというのは、まったくそのとおりだよなぁとも思います。現代の私たちと変わらない何かと、原始時代の彼らの何かが透け見えるような感じになるときれいだよなあと思うけれど、そこに陥りたくないとも作家は語っていて、「言葉によらない」何かが役者と観客の間に作り出したいという作演の手法にこだわりたい気持ちはわかるものの、そこに伝えたい何かが今一つ見えない感じがするのがアタシには少々残念な感じ。

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速報→「全員彼女」TOKYO PLAYERS COLLECTION

2012.01.07 14:30 {CoRich]

上野友之の個人ユニット、トープレの新作は急遽公演が発表された65分。短編芝居が15分ほどついています。9日まで王子小劇場。

ある夜泊まりに来た彼女は翌朝、突然増えていた。

ネタバレっぽいので

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2012.01.05

速報→「新年工場見学会2012」五反田団

2012.1.3 14:00 [CoRich]

五反田団とハイバイによる新年企画。4日までアトリエヘリコプター。160分ほど(休憩15分込)。休憩中のホットワイン提供のほか、ロビーではカフェ提供もあり。暖房もわりときちんと効くようになり、トイレのリフォームも入り、環境はよくなっています。

小劇場界を抜け出して業界人になりたいが、まだなりきれていない人々の奮闘を描く「業界人のニセモノ『業界人間クロダ』」
メンバーの一人が拘置所に行る間に入った新メンバーたち、歌う歌もずいぶん様変わりして「ポリスキル」
ザ・プーチンズ、メンバーの一人、街角マチオさんをクビにして登場したのは『ロボット演劇のニセモノ』

子供が欲しいと望む獅子舞に。「紅竜会『七餅』」

去年退団を発表した役者と劇団の間にあったできごと「ハイバイ『金子の退団のニセモノ』」

全体としては年々見せ物としては作り込んでいる感じにはなってきています。持ち寄ったいろんな出し物という手作り感は少し弱くなっている感じがしないでもありませんが、三が日の暴飲暴食と寝不足を抱えながらのんびり観るのには向いている気楽な演目を揃えています。

「業界人間〜」は、いわゆる小劇場の役者がエキストラやちょい役という形で映画やテレビドラマの現場で遭遇するであろうあれこれをコミカルに。食べていくためにアルバイトなどではなく「業界」で生きていきたいと考える気持ち、その卑屈さだったり、格上の役者の弁当を間違って食べてしまうとか、つきあっている彼女との別れがあったり、芝居がどうにも映像向きじゃないと云われたり、というのはさんざん云われることではあるけれど、黒田大輔演じるクロダがともかく情けなくコミカルで楽しめます。内田慈演じるチカも妖怪人間ぽいメイクや衣装で魅力的。木引優子演じる別れる彼女も、可愛らしく。坊園初菜演じるマネージャはきっちり仕事するおばちゃん感が頼もしくかっこいい。

「ポリスキル」は二部構成。職務質問を受けてしまいがちでナイフなど持っていがちな役者の日常の叫びか。コーラスの色っぽさ、ポリスラブガールのナチュラルっぽさの二極を用意するあたり、なかなかお正月っぽくてよいのです。

「ロボット演劇〜」はワンアイディアの勝利。最初の登場、さすがにびっくりします。これだけで勝ったも同然といえます。

「七餅」は、結構おめでたい感じでこちらも「嘘トラディショナルな」お正月っぽさがいっぱいで楽しい。もっと練り歩いて頭をかじって欲しいよなぁとも思います。

「金子の退団の〜」は誰が何やっても俺のせいか、というイジメかと思うほどの理不尽な仕打ちを下しているのが今までならいじめられキャラな岩井秀人というのがちょっとおもしろい。

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2012.01.02

速報→「星の結び目」時間堂

2011.12.31 [CoRich]

青☆組の吉田小夏の新作を黒澤世莉演出で時間堂として上演。120分。2日までアゴラ劇場。

東京、広い屋敷と庭園のある古い氷屋、豪快でたたき上げた先代だったが、それを引き継いだ二代目は生真面目ではあったが、時代が徐々に戦時体制となり厳しくなることもあり、商売は厳しくなってきている。職人も女中も多く抱えている家の中を切り盛りしているのは、未亡人となり戻ってきている長女で、徐々に苦しくなっているが、家の格を守ることに腐心している。ある日、海外に出ていた次男が戻ってくる。

戦前戦中戦後、階層的に語られる先代の時代を重ね合わせて、上流の「家」の中で起きていたことを丁寧に描いていきます。今まで作家が描いてきたもう少し下った時代よりは、作家には実感のないはずのもっと前の時代を描いていきます。着物姿も多く、しかも戯曲には「登場人物が直接体を触れるものには、具体的な時代の色艶がある」というかなり強い質感に対する指定がしてあったりして、舞台として立ち上げるのはけっこう大変なことだろうと思うのです。

男たちもしっかりと質感をもっていますが、やはり女性たちの描かれ方の方により質感があります。未亡人の長女はキリリと美しく厳しく気負い、戦後も恥ずかしいとはいいながらも、しっかりと生きているという感じが物語の柱になります。商売のうまく行かないことは彼女のせいではないけれど、まずいとは内心思いながらも、家の格を守るということに執着してしまうということの、拘泥のよしあし。あるいは働いて生きていくことがおもしろいと思う次女と長女の考え方の差、嫁の居場所のなさ。女中たちが明るく笑う家の中、あるいは「女」の存在。

作家自身が演出すれば、もうすこし女の色気が全面に出そうな印象はあります。あるいは一代目の男の豪快さはもうすこしファンタジーのように感じてしまうような気がします。今作の演出は、女性たちは日常の切り盛りということによっていて色気という点では薄くつくる反面、一代目は豪快で色気たっぷりに描くという差を(勝手に)想像します。

長女を演じた木下祐子の背筋の伸びた引き締まる感じはまさに適役。年上の女中を演じたヒザイミズキは語り手も兼ねているし、序盤、終盤の造型の質感。特に終盤で一瞬見せる色気の凄さは席によっては見えないけれど、実にいいのです。次男と一代目を演じた荒井志郎は格好良さ、スマートさと、豪快さを役によってしっかりと描き分けるダイナミックレンジ。職人の頭を演じた猿田モンキーは実にかっこいいと思うのです。

大晦日終演後に設定されたカウントダウンイベントはおそらく東京の小劇場界隈では唯一だったようで、ふたを開けてみれば大盛況。酒、年越しそば、おみくじ、ちらし寿司を思い思いに楽しみながら、時間堂次回作のさわりのリーディングや、「人間すごろく」なる観客とのゲームイベントを設定したりして午前2時まで実に楽しいのです。

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速報→「深呼吸する惑星」第三舞台

2011.12.31 14:00 [CoRich]

東京公演[1]に続いて、後から追加設定された横浜公演。それぞれの千秋楽のお祭り感も楽しい。

繰り返して観てみると、三人の女優たちにそれぞれのキャラクタにあった雰囲気で明確に描き分けていることがわかります。看板たる長野里美は美しく凛として、時に可愛らしく、時にあふれる想い。ニュートラルで芯となるような。山下裕子はいっぱいになる想いを、でも伝えられずにいる引っ込み思案ともいえるようで可憐。筒井真理子は「キチガイ」と云われながらも、時に空回りする前のめり感と、少々過剰な感すらある色気。この痛い感すらあるような色気に当てられていると、なびいてしまう感じがするのはアタシの性格かのか年齢なのか、妙にドキドキしてしまうのです。

この回は勝村政信の乱入シーンありで客席おおもりあがりしつつも、出演者になにかをやらせようとしてグダグタに。まあ、これもお祭り感で楽しい。あるいは横浜千秋楽で劇中登場する「医学の力」にちなんでか「ウコンの力」入の大入り袋。配るとはいいながら、まあなげてキャッチというタイプ。残念ながら入手できず。あるいはカーテンコールでは役者紹介も。

おそらく今回のなかではもっともよい席の3列目なのだけれど、アタシはコンビニ発券を忘れて劇場に行くという失態で冒頭10分ほどを観られず。残念無念。

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