速報→「I」appleApple
2012.01.14 19:30 [CoRich]
アタシは初見です。95分。15日までルデコ5。
専門学校の先輩と洋服のブランドを立ち上げた男。伸び悩む売り上げを補うために最近立ち入りが制限された「K地区」への訪問による半額販売を行うことになった。訪れたある家の中に居たのは、少し物憂げな女だった。女は、男のかつての知り合いだった。
前半は元先輩の上司の軽口、閉口しながらもしぶしぶの営業、あるいは「シリコン」と呼ばれる(しかし、本人をそう呼ぶかね、とは思いつつ)女とのなんか軽い会話。軽快ですが、後半の流れを考えるともっともっと軽薄で大笑いしたいところ。台詞も役者もいい感じなのだけど、もっともっといけそう、という感じは残ります。
後半に至り、かつてあんなに明るかった同級生の女、感染の恐れのある地区にいるというだけで訪ねる人も絶え、じっと射るような目つきになってしまった感じ。そう至ってしまった何か。しばらくのあいだ、閉じこもるようだったけれど、そこにやってきたかつての同級生はもしかしたら、自分の過去から照らす一筋の光明だったのかもしれません。その過去、かつての「屋上のたばこ」となれば、「トランス」を思い出してしまうのはまあ、翌日に第三舞台を予定しているアタシだけのことかもしれませんが。
あるいは子宮の中、10ヶ月先の子供。理不尽なそとのこと。これも「僕の時間の深呼吸」が少しばかり思い起こされますが、隙あらば出て行こう、というちょっとしたシーンが可笑しい。
後半の部分が、作家の語りたい何かなのだろうかと思うのです。おそらく作家は愚直なほどまっすぐに、大きくいえば人生ってことを考え抜き、ぐるぐると同じところを回ったりもして、悩み続けているのだという真摯さを感じます。じっさいのところ、物語として決してわかりやすくないし、エンタテインメントとしては微妙なバランスだと云う気もしますが、この先にあるのはもしかしたら、昨今あまりないタイプの、たとえば「遊◎機械全自動シアター」のような、不思議なファンタジーの新しい息吹かもしれないなと思うのです。
仕切り、椅子、机はどれもキャスターがついて自在に動くようになっています。舞台はほぼこれだけのごくシンプルな構成。行き詰まるような狭い部屋やクルマ、かとおもえば静かでひろい部屋に一人いる女、みたいなさまざまな空間。さらには空間を飛び回るような楽しさも。かつての野田地図番外公演「し」でみせたようなダイナミックさを思い出します。このあたりはむしろ現代的でスタイリッシュです。
役者はみな魅力的で、いいバランスです。山ノ井史は、ある種の「嘘くさい笑顔」言い換えれば「内面を見せない」という役が巧くて、それにぴたりとはまります。恩田和恵、序盤のちょい役の可笑しさと、後半でも籠もるような内向きさ、終盤でほんの一瞬みせる笑顔のなんと素敵なことか。 本多巧は軽薄ともいえるようなコミカルさが実によくて、物語の序盤、リズムをしっかりと作り出します。萩原美智子の演じる「シリコン」は空回りとかわいらしさと、うざったさが同居する、しかし憎めない造型で、説得力を感じます。
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コメント
コメント失礼致します。
『I』観に行けず…
トランスも、僕の時間の…も、懐かしい…
どちらも好きな舞台です。
観たかったなぁ…
投稿: 大倉みなみ | 2012.01.20 00:14